彼と初めて会ったのはちょうど五年前だったわ。一目見て彼に夢中になった。運命的なものを感じたの。でも、今考えると必然だったのかしらね。
彼は毎日の様に私に会いに来てくれたわ。三ヶ月ずっとね。しかも、必ずプレゼントまで持ってきてくれて。そんなに毎回いらないわ。って言っても、いや、せっかくだから受け取って欲しい。って。あんなに一生懸命言われたら断ったら可哀想だし失礼よね。それに、最初に書いた通り、初めて会ったときから、彼は特別なの。
一言目は会いたかった。二言目は話したいことがたくさんある。良くまぁ毎日話題が出るものねって、感心してたわ。だから、いつも新鮮な感じがしたの。 日に日に彼への想いが大きくなって、もっともっと好きになっていくのがわかったわ。
でも、別れって来てしまうものなのね。出会って三ヶ月過ぎにその日は来たわ。
あの日に私を訪ねてきた彼はいつもの彼じゃなかった。
年老いた男性。
私には誰だか直ぐにわかったわ。戸惑う私に、彼は全てを話してくれた。
彼は古代、魔法が本当に存在していた時、の魔法使いだった。彼は研究に研究を重ねて、禁を破り、時を越える魔法を会得したの。
この、車が平気で空を飛ぶ時代に、私には最初しんじられなかったし理解も出来なかったわ。
彼は、一年に一回、魔力が最大限に発揮できる日にしか会いに来ることが出来なかったの。それでも彼は会いに来てくれたわ。毎年毎日ね。涙が止まらなかった。
世界の魔力が弱まってきた。自分の魔力ではもうここにいる事は出来ない。お別れだ。こんなことになってすまなかった。 愛してる。
消えそうな彼はそう言っていた。私は力の限り叫んだの。
私も愛してる。今度は私が会いに行くわ。絶対に会いに行くから。きっと…、きっと…
そう、私は会いに行く。私には魔法なんて使えない。でも私は世紀の科学者。不可能を可能にしてきた女。タイムマシーンなんて一年で…二年、まぁ三年で開発出来たわ。時空を越えるのに耐えられる義体も開発した。
やっと、あの人に会いに行ける。私達が出会う可能性が消えないように、一年に一日しか会えなくたって構わない。彼は100年間も毎日会いに来てくれたわ。 私もあの人がしてくれたように、毎年毎日会いに行くつもり。【私を知らないあの人】に。本当は【私を知っているあの人】に会いたいのだけど、それでは【彼を知らない私】に、彼は会いに来れなくなってしまう。私がそうであったように、彼もまたそうであっただろうから。
それにしても、楽しみだなー。
会ったら何を話そうかしら?
話したいことが、たくさんあるよのね。
(空馬)
最終更新:2010年04月25日 16:28