ゆらめく空
ふるえる指
それで却って――帰って来られなくてもいいって――どうでもいいって
それならいっそ あなたみたいになれたら、ね？
ほら、綺麗だよ、星が。
無理して 生きていかずに
あんたの歩幅でいいじゃん？
笑って 泣いて それで
明日も生きればいいじゃん？
それに こんなことしたって
誰も あんたの周りは
喜びもしないよね
それこそ 誰一人だって
――ああ、綺麗だね、星が
ほらね こういうのは
「美味しい」話なんだけど
それはそれ ちょっとね
夢見がよくないから
そう、水蜜桃のように甘く。
色彩もまた限りなく。
けれど夢を歩くは叶わず。
なら、永久を見ることは無く。
夜がけして続かぬよう。
それでもこうしてあなたを見上げ――。
黝く空
夜の透間
空行く影――その一つへと渡ってしまって――――どうにでもなって
それでもいっそ あなたみたいになれたら、ね？
ほら、綺麗だよ、月が、嗚呼。
なによりもただ綺麗だよ――。
ね ほら そこでそうやって
ただ何かを待つなんてさ
それじゃ まるでどっちが
妖怪か知れたもんじゃない
それで まだ そこでそうやって
自分を棄てるつもりでも
それが誰も彼も
動かすわけじゃないんだよ
――ああ、綺麗だね、月が
それで この私に
何を求めてたにせよ
そういうわけだからね
他を当たってよね
そう、むかしむかしのお話に。
いつか憧れたような気で。
けれど現はかくも厳しく。
なら、永久を見ることも無く。
夜がけして続かぬよう。
それでもこうしてあなたを見上げ――。
傾く空
星の随
誰も知らない――こんな世界に渡ってしまって――どこへでもいって
それでもいっそ あなたみたいになれたら、ね？
ほら、綺麗だよ、空が、嗚呼。
なによりもただ綺麗だよ――。
『そこの親切な妖怪さん』
私をどうにかしてしまってよ。
それか或いは、
私に翼をください。
それのどちらも、
出来ない役立たずは、もう。
お呼びでない
私を独りにしてよね。
ゆらめく空
ふるえる指
それで却って――帰って来られなくてもいいって――それでいいって
それでいっそ あなたみたいになれたら、ね……
――よかったのに。
嗚呼、綺麗だよ、あなたの姿。
なによりもただ綺麗だよ、嗚呼――。
