あてもなく広い屋敷を散歩していれば、
何度となく目にする、
かいがいしく立ち働く後ろ姿。
そんなとき私は決まって
忍び足で近づき、
あの手この手を尽くして
ささやかな悪巧みを実行する。
すると三度に一度は、
きらびやかなカップの積まれた
トレイを落としそうになり、
そのうち五回に一回は
屋敷中に轟音を響き渡らせ、
本当に落っことしてしまう。
そして私は、こっぴどく叱られる。
正直、あまり反省はしていない。
我ながら、
ひどく子供じみてるな、と思う。
でも、そうすれば。
そうしていれば。
多分、ずっと。
誰も、傷つかずに生きてゆける。
それだけは、確信していた。