得体の知れぬゆえ
開かずの箱となる
永久の暗闇へと
哀悼の意を示して
贈られ尽された
全ての物語
顧みられもせず
ただそこに【死せる幻想】
めでたきうた 歌ってみせよ
わらえばよい 幸せでよい
そうして最後の言葉を抱いて眠れよ!
開けて悔しき"玉手箱"
その裏側
裏切られた物語たちの悲鳴
――どうしてこうも「希望」だけを残して
ほかの全ての咎事
摘み取ってしまわれたのでしょう?
《つまらないお話の一例》
むかしむかしみこがいて
そらとぶかめにのせられて
げんそうきょうをとんだとさ
えにもかけないそのけしき
そしてそしてだれかさん
よせばいいのにむちゃをして
げんそうきょうのきまりごと
やぶってみこにわらわれた
はいはい 目出度し目出度し
そして 封を施し御終い
そう そこにはもう なにも
怖がるものなどないでしょう
さあさあ 目出度し目出度し
それが 二度と破れぬ魔法
そう 最後に遺された 贈り物を
手放さぬように
あらそいなく 手を取り合えば
大団円 美しきこと
そうして最後の言葉を蔓延らせよう!
開けて悔しき"玉手箱"
その裏側
閉じ込められて忘れられた侭に
――どうしてこうも「希望」だけを残して
葬り去ってしまうのでしょう…?
そうして後生大事にしまい込んだ
それがために確かめられもしない
その箱に眠るもの
それが何であったとしても……
開けて悔しき"玉手箱"
その裏側
澱/澱のそのすべて引き受けて
――けれどもいつか「希望」さえも忘れて
箱の中には何もかも
"災厄"も何処かへと
それはきっと、つまらないお話でしょう……?