08 嘘と慟哭



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語る者さえもはや
途絶えるほどには
(はる)か遠くに掻き消えた
記憶は()なりて幾星霜(いくせいそう)

並んで寄り添う人と鬼の姿
疑うことを知らぬほど小さな小さなその姿

信頼のその証
ゆびきりげんまんひとつ

誓ったは嘘を吐かぬこと
ずっと傍にいるよと
幼稚な約束ひとつ


御伽(おとぎ)の国の恋物語
並び立つ影二つ異形象る

まだ見ぬ行く末
語るが如く

何処と行く先わからぬ
風が()


語る者さえもはや
途絶えたほどには
(はる)か遠くそこにあった
密なる絆は変わらずに

並んで寄り添う人と鬼の姿
信ずることに飽かぬほど愛しい愛しいその姿

約束を交し合う
対する人の望みは

けして涙は見せぬこと
鬼の泣き顔なんぞは
見たくはないのだと


御伽(おとぎ)の国の恋物語
幾夜の果てに二人は契りを交わす

ならば笑おうと
未来を語る

それはどこまでも
幸せな姿


幾年が過ぎ去って
はたと帰らない彼は

行方を探されるまま
変わり果てたその姿
哀れな鬼に晒した


御伽(おとぎ)の国の悲恋(こい)物語
夜盗かそれともはては妖怪(あやかし)の仕業か

二度と動かぬ
その姿から

もはや約束など
破られたのだと知った


咆哮(ほうこう) 慟哭(どうこく) 大地揺らす
もはや物言わぬ骸の前で

「嘘吐きめ!! 裏切り者め!
約束一つ守れぬ軟弱者め…!」

糾弾(きゅうだん)の声も遂には虚しく響くのみ


叫びはて、

 疲れはて、

  立ち尽くす、

   鬼の目には、

    ―涙。
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最終更新:2023年06月07日 20:25
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