花好きおばさんの復讐・前編

7 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 19:31:27.76 ID:FXzvQF+hO

野良アライちゃん3「ぴいぃーーー!ひとしゃん!たしゅけてぇええーーーっ!」シッポブンブン

植木鉢の前に大量に仕掛けられたアライホイホイ…
粘着テープの罠。

そのうち1つだけに、野良アライちゃんが一匹くっついている。

花好きおばさん「あああああああ!!クソ!!!あたしのチューリップがぁ!」

花好きおばさんは、荒らされ、ほじくり返されたチューリップの植木鉢の前で激昂している。

チューリップは球根をほじくり返され、食われていた。

…以前も、ダリアの球根を野良アライちゃんに食われたことがあった。

その対策として、アライホイホイを仕掛けたのだが…

野良アライちゃん3「うゆうぅ~~!ひとしゃん!とってくれたらあらいしゃんのせなかなでなでしていいぞぉ!ほっぺなめなめちてやゆぞぉ!」ヒグッグスッ

罠にかかったのは、大泣きして涙と鼻水を垂らしている野良アライちゃん3…一匹のみ。

おそらく、他にも何匹か来たのであろう。

だが、罠にかかった野良アライちゃん3の様子を見て、アライホイホイを罠だと学習し、植木鉢を荒らして帰っていったようだ。

花好きおばさん「ハァー…ハァー…くそ…」ピポパ

花好きおばさんは、最近このあたりにできた『野良アライ回収センター』へ電話をかけた。


9 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 19:39:50.77 ID:FXzvQF+hO
間もなく、軽トラに乗った回収業者が来た。

荷台には大きな箱が積まれており、中からはアライちゃんと思われるくそやかましい声が絶えず響き、助けを求める叫び声、泣き声がいくつも重なっている。

アライ回収業者「どうも…野良アライちゃん一匹ですね。50円で引き取ります」ガシィ

野良アライちゃん3「ひとしゃん!とってぇ!とってぇ!うゆぅ、うみゅみゅぅぅ~~~っ!」ジタバタシッポブンブン

野良アライちゃん3は、アライホイホイにくっついたまま、懸命に身をよじっているが…

アライ回収業者「ほいっと」ポイッ

野良アライちゃん3「ぴいぃい!」ヒュー

野良アライちゃん3は、箱の上から投入された。

大きな箱『だぢでえええええ!せまいのやなのりゃああああっ!おうぢがえゆうぅう!おながしゅいだあああ!』ガタガタ

花好きおばさん「ども」スッ

花好きおばさんは、50円玉をひとつ受け取った。

アライ回収業者「ご利用ありがとうございました」

軽トラ「」ブゥーン…

アライ回収業。
最近、この近くの大学で始まった産学官連携のベンチャー企業だ。

アライちゃんは害獣でありながら、その肉体は有用な資源として注目を浴びている。

ペットフードに加工すれば、ペットの様々な健康促進作用がもたらされ、

ドライフリーズして畑に撒けば、大変いい肥料になるのである。


11 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 19:45:49.16 ID:FXzvQF+hO
花好きおばさん「あーーーもう!どうしたらあのアライどもを殲滅できるんだい!」

古道具屋おばさん「花さん、大変ですねぇ…」

花好きおばさん「全くだよ…。でも、花を植えるのはやめたくない…」

古道具屋おばさん「…そうだ、うちの息子が今帰ってきてるから、ちょっと相談してみようかねえ」

花好きおばさん「ん…。何だっけ、くず鉄業者の?」

古道具屋おばさん「そう、廃品回収やってる息子がね、アライちゃん捕る罠作るの上手なんだよ~。ちょっと何かいいのないか、聞いてみるとするよ」

花好きおばさん「どうも~、お願いしますね~」

古道具屋おばさんは、自宅へ帰っていった。


12 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 19:55:37.51 ID:FXzvQF+hO

~古道具屋の家、長男の部屋~

廃品男「…」ジジジ…

広い部屋の中で、一人の青年がくず鉄いじりをしていた。

何やら、壊れた電化製品のパーツをいじっているようだ。

冷蔵庫のラジエーターを箱に仕掛け、木造の巣箱のようなものに繋ぎ合わせようとしている。

古道具屋おばさん「ユーちゃん、ちょっといいかい?」ガラッ

廃品男「どうした?母さん」

古道具屋おばさん「お隣の家のお花が、アライちゃんに荒らされて大変なんだよ~。なんかいい罠ないかな?」

廃品男「…どんなのがいい?安上がりだけど手入れがやや面倒なやつと、高いけど生け捕りにできるやつ」

古道具屋おばさん「安い方がいいねぇ」

廃品男「…分かった。なんとかしてみよう」ピポパ

廃棄男「もしもし…課長、オレです。バケツとか、安いスクラップをいくつか持っていっていいですか?」

廃棄男「…ありがとうございます。では、持ってったものは休み明けにリスト提出します」ピッ

廃品男は家を出ると、軽トラに乗り、職場へ向かった。


13 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 20:06:13.30 ID:FXzvQF+hO
やがて、廃品男はいくつかのスクラップを持ってきた。

穴は空いてないが、持ち手が外れた金属バケツ。

ラムネの瓶。

錆びかかった金属製の細長い棒。

錆びた金属製の網など…。

廃棄男「よし、作るか」サッ

廃棄男は、ラムネの瓶の底へ穴を空け、細長い金属棒を貫通させた。

そして金属棒の両端を、バケツの持ち手があった部分に空いている穴へ通した。

さらに、匂いの強いサラミに接着剤をつけ、ラムネ瓶の外側の真ん中あたりへ貼りつけた。

最後に、金属棒の両端へ登れるように、網を梯子として垂直に取り付けた。

廃品男「よし…できた。母さん、お隣さんのとこへ行こう」スッ

古道具屋おばさん「おお、じゃあ行こうかね」スタスタ

廃品男は、出来上がった物体と、墨汁ボトル、サラダ油を持ち、車に乗った。


14 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/07/03(火) 20:11:53.79 ID:FXzvQF+hO
~花好きおばさんの家の前~

廃品男「このバケツへ水を溜めて、墨汁を混ぜて黒い色をつけ…最後にサラダ油を垂らします。これで完成です」

廃品男が持ってきたのは、明らかにみっともないガラクタだ。

市販のアライホイホイよりもずっと見映えが悪い。

花好きおばさん「…こ、これでアライちゃんが捕れるのかい?ありがとう…お代は?」

廃品男「お代は、きちんと害獣を駆除した後に頂きます」

花好きおばさん「そ、そうかい…どうも…」

花好きおばさんは、サラミがくっついたラムネの瓶が金属棒を軸としてクルクル回る、このぶきっちょなガラクタバケツを、球根を植えた植木鉢の前に仕掛けた。


…なぜこんなハイペースで球根を植えてしまうのか。

きっと、1日でも早く開花するのを見たいからだろう。





最終更新:2019年01月28日 00:19