21: 19vndrf8Aw★ :2019/01/23(水) 22:38:12 ID:???Sd
…
アラ助「…」ポツーン
部屋に独りぼっちのアラ助。
アラ助「う、うぅ…」キョロキョロ
アラ助の部屋には、暇潰しの遊び道具がいっぱいあった。
パズル、携帯ゲーム機、運動器具、絵本など。
だが…
アラ助「暇潰し…暇潰しなんかやってもおもしろくないのだ…!」
アラ助「うぅーーー!外に出たい!出たい出たい出たい出たい出たい出たい!出たいのだぁーーーっ!」ドタバタ
アラ助は退屈で退屈で仕方がなく、ストレスで頭が押し潰されそうになっていた。
アラ助「ぐうっぅ、ぅううう!はずれろ!はずれろおおおぉぉ!」ガチャッガチャッ
アラ助はリードを固定する鍵をいじくったが、外れる気配はない。
アラ助「はぁ、はぁ…」ゴロン
アラ助は仰向けにねっころがった。
アラ助「…」ゼェハァ
アラ助「アラ助は…ペット…飼い主の、ペット…。飼い主を喜ばせるために、生まれた…」ゼェハァ
アラ助「ペットって何なのだ…アライさんはいつまでこうしてなきゃいけないのだ…」ゼェハァ
アラ助「まさか、い…」
アラ助「…一生…ずっと…こうなの…か…?」
22: 19vndrf8Aw★ :2019/01/23(水) 22:42:31 ID:???Sd
アラ助「アラ助は、ずっと…ずっとこのまま、毎日退屈なこの部屋でゴロゴロしてなきゃいけないのか…?」
アラ助「飼い主は仕事に行ってる間ぜんぜん構ってくれないし…お散歩も短いし…」
アラ助「嫌…なのだ…!」ブルブルワナワナ
アラ助「こんなずっとずーーっと同じことの繰り返しの、退屈な毎日なんて…!もううんざりなのだぁ…!」
アラ助「何とかして、飼い主から自由をもらうのだ!」ゼェハァ
23: 19vndrf8Aw★ :2019/01/23(水) 22:49:32 ID:???Sd
夜、飼い主男が帰ってきた。
飼い主男「ただいまー、アラ助」ガチャッ
アラ助「かいぬしぃいい!」ガバッ
アラ助は土下座した。
飼い主男「な、なんだ」
アラ助「がいぬじぃ!アラ助はもう限界なのだ!我慢の限界なのだぁあ!あたまがこわれそうなのだあああ!」
飼い主男「アラ助…」
アラ助「もううんざりなのだ!こんな狭い部屋に閉じ籠って!つまんない暇潰しばっかりして!お散歩も自由にできなくて!ただずっとここに閉じ籠ってるだけなのだああ!」
アラ助「もういやなのだああああああ!アラ助は自由になりたいのだああ!お外を自由に散歩したいのだあああああ!」
飼い主男「…」
アラ助「…外はダメでも、せめてお家の中だけでも…自由に歩きたいのだ…!」
飼い主男「…」
アラ助「かいぬしいいぃ!おねがいだから!この首輪とってなのだ!絶対お外に出ないから!お家の中だけ散歩するからあああ!この首輪のリード取ってなのだあああああああ!」
アラ助は大声で嘆き、叫び、懇願した。
飼い主男「………」
24: 19vndrf8Aw★ :2019/01/23(水) 22:55:33 ID:???Sd
飼い主男「だめだ…昨日ニュース(ワイドショー)でやってた。そうやって家の中で放し飼いにしてたアライさんが、窓から外に出て盗みをしたって」
飼い主男「法律でダメだって決まってるんだ」
アラ助「ほーりつが何なのだ!!!!アラ助は泥棒なんてしないのだああ!おねがいだからリード取ってなのだああああ!」ガチャガチャ
飼い主男「…散歩の時だけなら」
アラ助「普段からなのだああ!」
飼い主男「…反抗しちゃダメだって言ってるだろ」
アラ助「ぐ、ううううううう!でも!もうアタマの限界なのだあああ!ああああああ!毎日毎日毎日毎日毎日毎日ずっとずっとずっとずーーーーっとおんなじ部屋の中!!!」
アラ助「飼い主にはわかんないのだ!アラ助が毎日どんだけ退屈で!どんだけ暇で!どんだけ苦しくって!嫌で嫌で仕方ないか!」
アラ助「頭痛がするぐらい!気がおかしくなりそうなのだあああ!!!」
飼い主男「…」
どうしてアラ助は、こうなってしまったのだろうか。
今までのアラ助は、なんでも言うことを聞く、従順な『いい子』だったのに。
どうしてこんなに『悪い子』になってしまったのだろうか。
25: 19vndrf8Aw★ :2019/01/23(水) 23:00:34 ID:???Sd
飼い主男「…アラ助」
アラ助「どうせダメだって言うのだろ、飼い主」
飼い主男「そうだ」
アラ助「…!」ワナワナ
アラ助「うぅ…ぅうううぅう…!」ブルブルワナワナ
飼い主男「!!?」
アラ助「うがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!ぁああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁああああーーーーーーーーー!!!!!!!」
31: 19vndrf8Aw★ :2019/01/24(木) 23:49:29 ID:???Sd
アラ助「はぁっはぁっ…」ゼェハァ
飼い主男「あ、あんまり大きい声で叫ぶな!近所迷惑だろ!」
アラ助「散歩いくのだ」
飼い主男「アラ助…」
アラ助「さ ん ぽ !!!!」
飼い主男「わかったよ…」カチャカチャ
飼い主男はアラ助のリードを持ち、夜の散歩に出かけた。
そして公園のとこまでくると…
アラ助「…」ピタッ
飼い主男「ど、どうした」
アラ助「ふんぬ!」グイイイッ
突如アラ助は、リードを手で掴みぐいっと引っ張った。
飼い主男「ああっ!?」パッ
いきなり引っ張られたため、飼い主男はリードを放してしまった。
アラ助「ああああああ!!!アラ助は!!!自由になるのだあああ!!!」ペタペタペタペタペタペタ
飼い主男「あ、アラ助!?」
アラ助は草の茂みへ向かって、四つん這いでぺたぺたと這い進んだ。
32: 19vndrf8Aw★ :2019/01/24(木) 23:55:28 ID:???Sd
アラ助「うがああああ!!!飼い主!!追ってくるななのだああ!アラ助はもう独り立ちするのだあああ!」ペタペタペタペタペタペタ
飼い主男「だ、ダメだ!」ガシィ
だがすぐに飼い主男は追い付き、リードを掴んだ。
アラ助「はなせえええ!はなすのだあああああっ!」グイグイイイ
アラ助は必死に飼い主男から離れようとする。
飼い主男「なんでだ、なんで逃げようとするんだアラ助!!お前昔は大人しくていい子だったじゃないか!なんでそんな変わったんだ!」グイグイイイ
アラ助「飼い主だって!!!昔はもっと優しくていい人だったのだ!!なんでそんなに意地悪な奴に変わったのだぁ!」グイグイ
飼い主男「俺…が…!?違う、変わったのはお前だろアラ助!!」
アラ助「だったらなんで今の飼い主はアラ助に意地悪するのだ!!なんでアラ助を虐めるのだ!!アラ助が嫌いになったんだろぉお!」グイグイ
飼い主男「意地悪なんてしてない!虐めてない!!昔となんも扱い変わってないだろうが!」ゼェハァ
アラ助「ぜぇ、はぁ…」ゼェハァ
33: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:00:35 ID:???Sd
飼い主男「逃げようとしちゃダメだろ」ゼェハァ
アラ助「だって、飼い主から逃げないと…アラ助はずっとあの狭い部屋にいなじゃいけないのだ…!あんなのもう嫌なのだ!」
飼い主男「いいだろそれで!!今までだってそうだったじゃないか!」
アラ助「良くないのだ!!昔はよかったけど!今はもうアラ助はおとななのだ!」
飼い主男「大人だから何が違うって言うんだ」
アラ助「うぅう!さっきから何回言えばいいのだ!」
一人と一匹の言い争いは…
なぜ逃げるのか
↓
部屋に閉じ込められたくないから
↓
我儘を言うな
↓
もう我慢の限界だから逃げる
↓
なぜ逃げるのか
このループがしばらく続いた。
互いに互いの言い分を、まったく理解できなかった。
34: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:05:51 ID:???Sd
飼い主男「もういいから帰るぞ!」グイグイグイグイ
アラ助「がえりだぐないいいい!がえりだぐないのだあああああ!うがあああああ!ひっぱるなあああ!」ズルズル
最早言い争いは無意味と判断し、飼い主男はアラ助のリードを引っ張って引き摺った。
アラ助「かいぬし!飼い主はなんでアラ助をおうちに連れ戻そうとするのだ!」
飼い主男「だって…お前を飼ってるから!」
アラ助「なんでアラ助を飼ってるのだ!!アラ助に何して欲しいのだ!!」
飼い主男「え…そ、それは…」
アラ助「なんなのだ!!」
飼い主男「…」
…なぜ自分は、アラ助を連れ戻そうと…
飼い続けようとしているのだろうか。
35: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:11:34 ID:???Sd
飼い主男「…」
アラ助「分かんないのだ!!なんで飼い主はアラ助を閉じ込めたがるのだ!ぜんぜん分かんないのだ!」グイグイ
飼い主男自身すら、なぜアラ助を未だに飼い続けようとしているのか分からなかった。
自分の気持ちが理解できて いなかった。
飼い主男「…アラ助」ナデナデ
アラ助「…飼い主…」ピタッ
飼い主男は、アラ助の頭を優しく撫でた。
もはや中学生の少女くらいの身長まで育ったアラ助の頭を。
飼い主男「…」ナデナデ
アラ助「…」
アラ助は、拒絶することなく撫でられ続けている。
目をつぶり、落ち着いてきているようだ。
36: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:18:03 ID:???Sd
アラ助「うっ…ぐすっ…!うぁあああ…わああぁぁあぁぁっ…!」グスングスン
アラ助は涙を流し、泣き出した。
飼い主男「…」ナデナデ
アラ助「がいぬじぃ…!ひぐっ、ぐすっ…」ダキッ ギューッ
アラ助は、飼い主男に抱き付き、頬擦りした。
アラ助「がいぬじぃ…ほんとに…ほんとにもう嫌なのだ…!ぐすっ、お家の中にずっと閉じ籠って、毎日毎日一人で暇潰し暇潰し暇潰し暇潰し…!えぐっ、ぐすっ」シクシク
アラ助はガチ泣きしている。
アラ助「耐えられないのだ…頭が割れそうになるのだ…!うぁぁぁっ…!アラ助を、自由に、自由にさせてほしいのだ…」シクシク
飼い主男「…自由になってどうするんだ。自分で食べ物とれないだろ」
アラ助「わかんないのだぁ!わがんないげど…ずっとずっと閉じ籠ってばっかはもう嫌なのだ…!ほんとにもう嫌なのだ…!」ウルウル
アラ助「むかしは…!飼い主がもっと大きかった頃は、おうちのお部屋の中でゴロゴロしてると落ち着いたのだ…安心だったのだ…!飼い主が守ってくれてるみたいで…!」
アラ助「でも、飼い主やおうちが小さくなってからは、それが嫌で嫌で仕方なくなったのだぁ…!」
飼い主男には、アラ助の気持ちが全く理解できなかった。
本能的に拒絶しているんだろうか。
37: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:21:34 ID:???Sd
飼い主男「でも、外で俺と離れ離れになったら…。食べ物なくなって飢え死にするぞ」
アラ助「…アラ助を、おうちの外で飼えばいいのだ、飼い主」
飼い主男「…」
アラ助「お昼は自由に散歩に行って、飼い主が帰ってきたらごはん貰って、一緒に遊んで…そうすればいいのだ」
飼い主男「…」
アラ助「どうなのだ?名案なのだ!そうすれば、アラ助も飼い主も…!」
飼い主男「ごめんな、アラ助…」ダキッギューッ
アラ助「え…」
飼い主男「アライ縄張り法っていう法律があって…。放し飼いはできないんだ」
アラ助「…」
38: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:24:47 ID:???Sd
アラ助「じゃあ…やっぱり、飼い主はこれから、アラ助をまたあのお部屋に閉じ込めて、苦しめようとしてるのか…!嫌がらせしようとしてるのか…!」ワナワナ
飼い主男「え、え…」
アラ助「絶対嫌なのだ、もう!あんなとこにいるくらいならお外で餓えてしんだほうがマシなのだぁ!」グイグイグイグイ
アラ助はまた逃げようとしている。
飼い主男「頼むから言うこと聞け!ペットだろお前!」グイグイ
アラ助「お願いだからお願い聞いてなのだあ!」グイグイ
パワーでは飼い主男が勝っていたため、なんとか自宅の中までアラ助を引き摺り、家へ連れ戻すことができた。
39: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:28:22 ID:???Sd
そしてアラ助を、別の部屋に連れていき、リードを鍵で固定した。
飼い主男「これなら大丈夫だろ、前と別の部屋だ」
アラ助「うぅ…そうじゃないのだ…お部屋が違ってもおんなじなのだ…!鍵とってくれないとダメなのだ…!」
飼い主男「…俺にできるのはここまでだ。また明日な」スタスタ
アラ助「飼い主…」
アラ助「…」ポツーン
アラ助はまたも部屋に閉じ籠められた。
アラ助「…」
40: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 00:48:55 ID:???Sd
飼い主男「はぁ…疲れた…」ゲンナリ
アラ助が反抗するようになってからというものの、飼い主男は毎日ストレスと心労に苦しんでいた。
何故自分がこんな心労を背負わなくてはならないのだろうか。
アラ助はペット。愛玩動物である。
心の癒しのために飼育を始めたのである。
アラ助が幼獣だった頃は、毎日アラ助によって本当に癒されていた。
可愛く甘えてくる仕草。
『かいぬししゃんしゅきしゅきなのりゃー!』と好意をストレートに伝えてくる愛情表現。
愛らしい容姿。
そのどれもが、飼い主男にとって、今まで飼ったどのペットよりも魅力的であった。
その頃は確かに、ペットアライちゃんが大人気であり、大勢の客に買われていることが納得できた。
これだけ愛らしいのなら。
これだけ癒されるのなら。
十分お値段以上の価値がある。
心の底から、飼い主男はそう感じていた。
41: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 01:04:47 ID:???Sd
だが、今は違う。
容姿は確かに、まあ…いいかもしれないが。
癒されることなど全くない。
心労とストレスだけが積み重なっていく。
何のためにアラ助を飼っているのだろうか?
自分はわざわざ高い金を払って、心労とストレスを買っているのだろうか?
そんなつもりはない。
飼い主に癒しを与えるのがペットの役割のはずだ。
だが今のアラ助は、全くその役割を果たしていない。
これが人気ペット?
これが大勢の客に買われているペットだというのか?
自分以外の大勢の客達も、自分と同じような心労やストレスを感じているのだろうか?
こんな辛い思いを味わわされているというのに、リピーターがいるというのか?
信じがたい。
43: 19vndrf8Aw★ :2019/01/25(金) 01:11:37 ID:???Sd
アラ助を子供に戻すことはできない。
アラ助はすっかり変わってしまった。
言うことを聞かず、反抗するようになってしまった。
狂暴になり、自由を求めて逃げ出そうとするようになってしまった。
『悪い子』になってしまった。
飼い主男は、たっぷり愛情を注いでアラ助を育てたつもりだった。
悪いことは教えず、きちんとした倫理を教えてきたつもりだった。
我が子のように…はさすがに言い過ぎだが、しっかりとアラ助に向き合ってきたつもりだった。
…だというのに、この有り様は何だろうか。
一体、何がいけなかったのだろうか?
…ペットアライさんという生き物は。
本質的に邪悪であり、大きくなったら心が邪念に染まってしまう生き物なのだろうか。
まるでスイッチが切り替わるかのように心が悪意に染まり、飼い主を苦しめようとする、害獣なのであろうか…。
最終更新:2019年03月03日 21:55