67: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 19:08:27 ID:???Sd
…
アラ助「飼い主、大変なのだ!お、お股から血が…!アライさん病気になったのだぁ!」
飼い主男「それは病気じゃない、生理っていうんだ」
アラ助「なんなのだそれ?」
飼い主男「子供が産めるようになったら、そうなるんだ」
アラ助「子供…!?う、産みたいのだ!飼い主、子供を産むにはどうすればいいか教えるのだぁ!」
飼い主男「…」
飼い主男は、小さかった頃のアラ助を思い出していた。
子供のアライちゃん達は可愛かったが、それはペットショップでの調教ありきである。
ただでさえ手のかかるアラ助に加えて、その子供まで世話するのは不可能だ。
飼い主男「教えられない。我慢しろ」
アラ助「お願いなのだ!子供がいれば!この地獄にも耐えられるのだぁ!だからお願いなのだ!」ガシャガシャ
飼い主男「我儘言うな、ダメだ」スタスタ
アラ助「かいぬしぃいい!」
68: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 21:21:13 ID:???Sd
…
~飼い主男の職場 休憩中~
飼い主男「はぁ…。うちのアラ助は大丈夫だと思ってたのに、すっかり狂暴化してしまった…。嫌われるようなことしてないのに…」
後輩女「そういう生き物だから仕方ないですよ」
飼い主男「やっぱり楽園に送るしかないのかな…。でも、ペットを捨てるのは可哀想だし気が退ける…」
後輩女「ペットを『捨てる』…?」
飼い主男「ああ。いくいるだろ、引っ越し先でペットが飼えないから愛犬を保健所に連れてって殺処分する、みたいなの…」
後輩女「ありますね」
飼い主男「俺もああいう奴らと同じことをするってことになるのは、嫌だな…」
後輩女「ああ~、ペットアライちゃん飼い主あるあるですよね。私も最初は、そういう勘違いしてました」
飼い主男「勘違い?」
後輩女「例えば、先輩。あなたが高校生高校だとします。担任の先生は、クラスの皆と仲良しです」
飼い主男「ああ」
後輩女「では、終業式を迎えた後…。担任の先生が、『お前達と別れたくない』と言って、生徒を卒業させず教室へ縛り付けようとしたら、どう思いますか?」
飼い主男「え…?」
69: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 21:28:27 ID:???Sd
飼い主男「いや…こっちにも将来はあるし。就職や進学しなきゃだし…。『ふざけんな』って反発するな」
後輩女「それに対して、担任の先生は『先生に反発するなんて何事だ!お前達はいつからそんな不良生徒になったんだ!』と叱ってきたら、どうしますか?」
飼い主男「え…言ってること滅茶苦茶だし、先生は間違ってるって抗議するかな」
後輩女「どうしてですか?先生は、生徒達への接し方を以前から何も変えてないんですよ」
飼い主男「え」
後輩女「先生が突然態度を変えて悪者になったわけじゃない。むしろ今までと何も変わっていないんですよ。なのに、なぜ突然抗議するようになるんですか?反発するようになるんですか?」
飼い主男「…」
70: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 21:33:56 ID:???Sd
飼い主男「こっちの事情が変わったからだ。卒業して就職なり進学なりしなきゃいけないのに、それを邪魔するから反発するんだ」
後輩女「…三年間お世話になった、大事な恩師なのに?」
飼い主男「こっちはもう一人立ちする時期なのに、それを邪魔しようとする奴は、もはや恩師でもなんでもない、ただの悪人だ」
後輩女「…大人になったペットアライちゃんが、飼い主へ反抗的になる理由。分かりましたか?」
飼い主男「え…」
後輩女「今の先輩の立場がアラ助ちゃん。私が言った担任の先生が、先輩なんですよ。アラ助ちゃんから見ればね」
飼い主男「…」
飼い主男は、そんな見方はいままで考えたことも無かった。
71: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 21:52:18 ID:???Sd
後輩女「高校生が自身の将来のために、クラスから卒業して就職や進学を目指したがるのと同じように」
後輩女「大人になったペットアライちゃんも、自由に生きるために、ペットを卒業して楽園に行きたがるんです」
飼い主男「…でも、一つだけどうしても腑に落ちないところがあるんだ…」
後輩女「…予想はつきますけど。何ですか?」
飼い主男は、一番大きな疑問を口に出した。
飼い主男「アライさんの楽園なんて…本当にあるのか?みんな騙されてるんじゃないのか?」
後輩女「…やっぱり」
飼い主男「たとえ楽園っていう施設が全国にあったとしても、こんなにたくさん飼われてるペットアライさんを、ずっと世話していける施設なんて、有り得ないんじゃないか?」
後輩女「…」
飼い主男「楽園なんてものはでっちあげの嘘っぱちで…。連れてったペットアライちゃんは、殺処分されてしまうんじゃないのか…!?そうとしか思えない!」
飼い主男「信じられないんだ…!楽園なんてものが実在するだなんて…!大勢のアライちゃん飼い主達は、誰も俺と同じ疑問は持たないのか!?」
後輩女「…」
飼い主男「ペットショップの説明を真に受けて!アライさんの楽園なんていう、物理的に有り得ないようなモノが存在してると盲信してるっていうのか!?みんな、みんなが…!?」
飼い主男「おかしい…絶対におかしい!」
72: 19vndrf8Aw★ :2019/04/14(日) 22:00:31 ID:???Sd
後輩女「…その疑問も、ペットアライちゃん飼い主初心者あるあるですね」
飼い主男「へ…?」
後輩女「先輩は、お盆のときにお墓参りはしますか?」
飼い主男「ああ、当然だ」
後輩女「何故ですか?」
飼い主男「何故って…なんか関係あるのかよ」
後輩女「では聞きますけど…。先輩は、あの世が本当に存在してると思いますか?」
飼い主男「え」
後輩女「お盆になると、ご家族の霊が彼岸から帰ってくる、と…。それを心から、科学的に、本当だと信じているんですか?」
飼い主男「…いや。霊なんて…実在はしないだろ」
後輩女「ではもう一度聞きます。なぜ先輩はお盆にお墓参りをするんですか?」
飼い主男「…」
84: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 22:48:12 ID:???00
飼い主男「…爺さんにも婆さんにも感謝してるんだ。墓参りくらいするさ」
後輩女「感謝の気持ちは届かないのに、それでも伝えたくなる」
後輩女「そういうもんですよ。あるかないか、じゃなくて。信じたいか信じたくないか、が大事なんですよ」
飼い主男「…納得いかない…そんな、自分本位な…!自分さえ良ければそれでいいっていうのかよ…」
飼い主男「ペットってのは消耗品じゃないだろ!大事な家族だろ!そんなポイポイ捨てれるようなもんじゃないんだよ!」
後輩女「…捨てるなんてひどい言い方…。だから、楽園で元気に暮らしてるんですってば」
飼い主男「…もういい、俺には分からん。楽園とかいうどこにあるか分からん場所に、大事な『家族』を平気で送る奴らの気持ちなんて…」
飼い主男「分かりたくもない」
後輩女「…また相談に乗りますよ」
飼い主男「…ああ」
飼い主男は、後輩女の説明にちっとも納得できなかった。
ペットとは家族ではないのか?
何が卒業式だ。
何が墓参りだ。
そんなわけの分からない理屈で、大事な家族をわけの分からないところへ送ってたまるか。
そう考えながら、飼い主男は帰宅した。
アラ助「ぅぁああああああああーーーーー…ぁああああああああーーーーーーーーーー…!」ガシャンガシャン
飼い主男「…」
アラ助はひどく自傷行為をしており、自分の身体中を引っ掻いていた。
長い間爪を切ってやっていない。
近づいたら引っ掻いてくるからだ。
85: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 22:54:46 ID:???00
飼い主男「…アラ助…」
アラ助「ふぅうーーっ!ふぅううぅうーーーーっ!」フゥーッ
アラ助は飼い主男を威嚇する。
今にも飛びかかり、爪と牙で攻撃してきそうだ。
飼い主男「…」
ペットアライちゃんは、あらかじめ工場でヨチライフ手術を施され、脛から下を切除されてくるが…
爪と牙を除去する手術や、開腹による避妊手術をするなら、それは飼い主が自費で行わなくてはならない。
何せそれら全て合わせると、手術費用は3万円もする。
ペットアライちゃんが追加で3匹買えるほどの値段だ。
こんなに高額になる理由は人件費だ。
犬や猫に比べ、施術ができる人員が遥かに少ないためだ。
『さすがにそこまでやるのは高すぎないか?』と思い、飼い主男はそれらの施術をしなかったのだが…
今思うと、それらをやってもらっておけば良かったかもしれない…
飼い主男はそう思った。
86: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 22:58:25 ID:???00
アラ助「そとへ!!!だせええええ!!!」ブンッ
飼い主男「!!?」
その時、アラ助は砂トイレから何かを掴み、飼い主男の顔面に投げた。
飼い主男「うげっ!」ベチャッ
飼い主男「…くっせぇえええええええッ!!!!!オエェエッ!きたねえwッ!」
アラ助「外に!出さないなら!もっと投げてやるのだあああ!」ブンッブンッ
飼い主男「やめろおおお!アラ助やめろおお!」ベチャッベチャッ
…アラ助が何を投げたかは明記しないでおく。
アラ助「はぁ…はぁ…!飼い主、アラ助を自由にする気になったか!?」ゼェハァ
飼い主男「…」
飼い主男は精神的にひどくダメージを受けた。
飼い主男「…アラ助。俺達…家族…だよな?」
87: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 23:05:50 ID:???Sd
アラ助「こんな風にアラ助を狭い部屋に閉じ込めて!苦しめる家族が!あってたまるかなのだ!!!!」
飼い主男「…」
アラ助「昔は良かったのだ!昔は!でも今はもう
違うのだ!今のアラ助はもう昔みたいなチビじゃないのだ!!」
アラ助「飼い主にずっとおうちの中で守ってもらわなくて平気なのだ!お散歩のときもリードなんかいらないのだ!ずっとずっとずーっとこんな風に閉じ込められていたくなんかないのだ!」
飼い主男「…」
飼い主男とアラ助の会話は、どちらも一方通行だった。
『自由にさせろ』
『法律で禁止されてるから駄目だ』
それだけだ。
後輩女の前で語ってみせた『家族の絆』など、すでに崩壊していた。
こんなストレスを与え続けてくるペットなど、正直嫌気がさしていた。
もはや昔のような仲良しこよしの関係になど戻れないのは自明であった。
だが飼い主男は、アラ助を楽園には送れずにいた。
88: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 23:14:38 ID:???00
それはアラ助のため…ではない。
自分のためだった。
一度飼うことに決めたペットを、飼い主の都合で捨てたくなどない。
そんな身勝手な飼い主になど、自分はなりたくない。
ペットを消耗品のように使い捨てる最低な飼い主になどなりたくない。
『善き飼い主でありたい』。
…そんな気持ちのために、飼い主男は意地になっていた。
飼い主男「…」
だが…
果たしてその気持ちは、アラ助の為になっているだろうか。
『善き飼い主』のつもりでいる自分は、アラ助の目にも『善き飼い主』として映っているだろうか。
ペットを消耗品でなく、大事な家族として扱いたがっている自分は…
間違っているのだろうか。
飼い主男「…そんなはず、ない…。そんな、はず…」
『ペットは最後まで面倒を見ろ』
『自分勝手な理由で手離すな』
『消耗品でなく家族として大事に愛情を注げ』
…犬や猫のような馴染み深いペット相手なら、そうするのが良識だ。
だが、その良識が…
アラ助には何ら喜ばれていない。
むしろ苦しめているばかりだ。
89: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 23:18:59 ID:???00
飼い主男「…」スタスタ
飼い主男は、とりあえず臭いの元を除去するためにアラ助の部屋を去った。
アラ助『かいぬしいいいいいっ!こんだけ言ってまだ分かってくれないのかあああああっ!かいぬしいいいいいっ!』
飼い主男「…はぁ…。くっせぇ…」ジャバジャバ
飼い主男「…どうすりゃ、いいんだよ…」
飼い主男「楽園…楽園か…そんなもん…あるわけねえだろっ…ざけんなっ…」ワナワナ
飼い主男「ッ…嘘だ…嘘にきまってる…そんなもんあるわけない…!絶対ろくでもない所だ…!」
飼い主男「なんで、なんでなんだ…!あの後輩女や、他の飼い主達は…なんであんな風に消耗品みたく割りきれるんだ…!」
飼い主男「狂ってる…イカれてる…!どいつもこいつも…!」
90: 19vndrf8Aw★ :2019/07/15(月) 23:24:55 ID:???00
飼い主男「…でも。ペットショップでも、言ってたな…。ペットアライちゃんは皆、こうなるって…」
飼い主男「…分かってたことじゃないか。覚悟してたことじゃないか…。大きくなったら狂暴化するなんて…」
飼い主男「でも、正直…『そんなはずない』って思ってた…信じられなかったんだ」
飼い主男「あの可愛くて人懐っこいアラ助が、こんなに狂暴になって、暴れるようになるだなんて…」
飼い主男「うちの子だけは特別だと、心のどこかで思ってたんだ…」
飼い主男「…ちくしょう…」スッ
飼い主男は、スマホで小さい頃のアラ助を撮った動画を観た。
『アラ助ー、新しい玩具だぞー!アスレチックだ!』
『ふおおおぉー!すごいのりゃー!おっきーおしろなのりゃ!これであそんでいいのか!?』
『ああ、いいぞ。好きなだけ遊べ』
『かいぬししゃーん♪しゅきしゅきなのりゃー♪ありがとなのりゃー!≧∀≦』
飼い主男「…」ホロリ ポロポロ
…動画の中のアラ助は。
涙が出るほど可愛らしかった。
かつて確かにあった、その時間。
今はもう失われてしまった、その時間。
飼い主男「…ああ。もう一度この頃に戻れたら…。アラ助…」
最終更新:2019年07月30日 00:11