102 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 20:44:05.31 ID:8BNGvoplo
~夜、森の中~
アライちゃん1「のだっ、のだっ!ここはあらいしゃんのなわばりなのだぁ!」フゥーッ
アライちゃん2「しんにゅーしゃはぶっこよしゅのだぁ!」フゥーッ
アライグマは縄張りを作らない動物だと聞いたが。
アライちゃん1「はいってくるなら、よーしゃしないのだぁ!たあ~!」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん2「たあ~!」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん達が俺を睨み付けながら、俺の足下へ這い寄ってきた。
アライちゃん1「はぐ!はぐ!がぶがぶ!」アギアギ
アライちゃん2「あぐあぐ…はぐはぐ!」ハグハグ
アライちゃん達は、俺の革靴を噛んでいる。
アライちゃん1「ふふーん!どーだ!いたいだろおおぉぉ!」フシャアアアアア
アライちゃん2「ありゃいしゃんたちのなわばりからでていかないなら、このままぶっころしゅのだぁ!はぐはぐ!」アギアギ
…俺は、足下にまとわりつくアライちゃん2匹の胴体を、2本の足で踏みつけた。
アライちゃん1「ふぎゅぎぃいぃぃぃぃぃいいいいーーーーーーーっ!ぎびいいいぃぃぃいいーーーーーっ!!!びぎーーーーーっ!!」グシャメギボギ ゲボォ
アライちゃん2「ぶぎゅうううぅぅぅぅぅぅっ!!」ブチャグチャブホォ
足の裏から、骨と内臓が潰れる感触が伝わった。
ヒグマ「…何だったんだ?こいつら…」
…先に進もう。
103 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 20:51:23.65 ID:8BNGvoplo
む…レーダーに反応ありだ。
目の前に来るぞ!
森の茂みが、ごそごそと音を立てる。
やがて、レーダーの反応の主が姿を現す。
ヒグマ「な…何…っ!?」
俺達の前に現れたのは…
…口のまわりや手が血に染まった…、アライさんではないフレンズであった。
105 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:00:36.46 ID:8BNGvoplo
目の前のフレンズは、ヒグマ隊長と同じ姿をしていた。
違いといえば、ヒグマ隊長の方が筋肉質でがっしりしており…
…目の前のフレンズは、げっそりと痩せこけているくらいだ。
野良ヒグマ「…やあ…。お前も…ヒグマのフレンズか?」
ヒグマ「…あ、ああ、そうだ。驚いたな…。私以外にも、ヒグマのフレンズがいたのか…」
野良ヒグマ「…はは。私など、もうフレンズじゃない…。ただの獣だ」
ヒグマ「…何があったんだ?そんなに痩せて…」
野良ヒグマ「…私はフレンズになる前から…フレンズになっても…。肉食動物として生きてきた」
野良ヒグマ「鹿やウサギを狩ったり、川魚を獲ったりしてな…」
しかしあのアライさん達が森で大量繁殖したせいで、食べ物が無くなった…といったところか。
野良ヒグマ「…」
野良ヒグマ「…ああ。冬眠から醒めたら…すっかり無くなってしまっていたよ」
…『冬眠から醒めたら…?』
その前は十分にあったのか?
107 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:08:00.02 ID:8BNGvoplo
野良ヒグマ「…はは。実を言うとな。私は遠くの森からここへ来たんだ。食べ物を求めてな」
野良ヒグマ「だが…どこを探しても、食べ物は無くなっていた」
野良ヒグマ「…お前達が殺したからだ」
ヒグマ「…ま、まさか…」
野良ヒグマ「そうだ。私は…フレンズでありながら…」
野良ヒグマ「飢えを凌ぐために…。…」
野良ヒグマ「アライさんを、殺して…食べていたんだ」
ヒグマ「なっ…」
野良ヒグマ「そう、同じフレンズのアライさんをだ。…軽蔑するか?最低だと思うか?私のことを…」
ヒグマ「…なんだ、その程度のことか」
…いや、別に…ぜんぜん思わんが。
野良ヒグマ「な…何…!?同じフレンズを、捕食したんだぞ、私は!」アセアセ
周りにハイレベルな奴が多過ぎて…正直、大して驚くような話じゃないんだよなぁ…
109 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:14:19.01 ID:8BNGvoplo
野良ヒグマ「そ、そんな…。これを聞いてどうも思わないなんて…。お前達はどうかしている!」アセアセ
ああ、全くその通りだと思うよ。
仮にも人の姿をしたアライさんを、殺すのはともかく…
食っちまう人間やフレンズが、人間社会にはワンサカいるんだからな。
正気の沙汰じゃねえ。狂気の沙汰だ。
だが、その狂気がこの社会を包み込んでいる以上、もはやアライさんを食うのもおかしなことじゃ無くなってるんだ。
野良ヒグマ「…わ、私の、罪悪感と苦悩に苛まれる日々は、いったい…」ペタン
ヒグマ「…私も、アライさんを殺す度に心を痛めている。あれでもフレンズだ。できれば殺したくはない」
ヒグマ「…辛かっただろうな、お前も」
野良ヒグマ「う…うぅっ…!話を分かってくれる人がいたっ…!」ダキッ ギューッ
ヒグマ「よしよし」ポンポン
ヒグマ隊長と野良ヒグマが抱き締め合っている。
これが本当のベアハッグといったところだろうか。
112 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:20:24.87 ID:8BNGvoplo
ヒグマ「もう、アライさんを殺さなくていい。…ジャパリパークに来るといい」
野良ヒグマ「ああ…なんか、監獄みたいな所だと聞くな。…はは…。たくさんのアライさんを殺して食べた、罪深い私には丁度いいさ…」
監獄みたいな所って…
さんざんな言われようだな。
ヒグマ「待機している隊員を呼ぼう。…お前が望めば、保護するぞ」
野良ヒグマ「ああ、頼む…。もう、こんな所はたくさんだ…」
…なんか、久々にマトモな感性の人を見た気がする。
食通の友人もブラウンPも会長も大臣も、どいつもこいつもアラジビ好きだから、
てっきりアラジビを受け付けない俺の方がおかしいのかと思っていた。
…そうして、野良ヒグマは保護されていった…。
113 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:27:22.01 ID:8BNGvoplo
…休日、ジャパリパーク…
ヒグマ「やあ。うまくやってるか?」
野良ヒグマ「ああ。前評判が嘘みたいだ。どこが監獄だ、皆優しくて良いところじゃないか。…狭いけどな」
ヒグマ「それは良かった」
野良ヒグマ「ただ…他にいるフレンズ達が皆草食動物のフレンズのせいか、皆私を滅茶苦茶怖がるのが辛い」
ヒグマ「む…?」
野良ヒグマ「特にヤブノウサギさんは、私から泣いて逃げ回り、あげく失禁しながら命乞いをし始めた」
ヒグマ「…旧ジャパリパークの方では、草食フレンズに怖がられることは無かったけどな…」
ヒグマ「そもそも皆ジャパリまんしか食べないから、草食も肉食も区別無かったとも言えるな」
野良ヒグマ「…それと、その…。ここに来てから、毎日自己嫌悪に苛まれている」
ヒグマ「何故だ?」
115 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:28:42.93 ID:8BNGvoplo
野良ヒグマ「その…草食フレンズ達を見る度に、あの…。…美味しそうだと思ってしまう」
ヒグマ「…それは気の毒に…」
116 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/11/30(木) 21:29:11.42 ID:8BNGvoplo
一旦ここまで
最終更新:2017年12月04日 22:00