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アライさんと子供達

8 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 16:36:08.78 ID:C/plAi9YO
…

~一般の病院、夜~

アライさん「…ちび…」

アライちゃん1「ぢゅるるるるっ!ちゅぱちゅぱ…んごくっ、ごくっ!」ゴクゴク
アライちゃん2「じゅるるるっ!じゅぱっ、じゅぱっ!」ジュルルル

御手洗の2人の子供が、母親の乳房にしがみつき、母乳を啜っていた。

アライちゃん3「のぁぁーっ!のぁぁーっ!」キュルルルル
アライちゃん4「のぉーーーぁあんっ!!のぉぁあーーんっ!」ビエエエン

アライさんの乳首は2つしかない。
残りの2人は、姉妹がどくのを待っている。

アライちゃん1「けぷ」ヂュパッ コロン
アライちゃん2「んぱー」プハァ コロン

お腹がいっぱいになった2人は、御手洗の乳房からどいた。

アライちゃん3「うゆうぅぅ~!」シッポフリフリ
アライちゃん4「のりゃっ!のりゃっ!」シッポフリフリ

しかし妹達は、自分の番が来たことに気付いていないようだ。

アライさん「ちび達…おっぱい飲むといいのだ…んうぅ…!」キィイイイン シュウウウ…

御手洗は、けものプラズムの手足を生やした。
これまで試したところ、1日に形成できるのは長くても10分が限度であった。

アライさん「お前達の番なのだ」ガシィ

アライちゃん3「のぁあー!」ブラン
アライちゃん4「ぴぎゅるるる!きゅるるるるぅ!」ブラン

御手洗は、2人の子供を抱き寄せた。

アライちゃん3「ぢゅるるるるうっ!じじゅずずずずっ!」ヂュルヂュル
アライちゃん4「じゅるるる!ずぽ!!ぐっぽぐっぽっ!!」ヂュパッヂュパッ

残りの2人も、母乳にありつけたようだ。


10 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 16:55:05.00 ID:C/plAi9YO
アライさん「…」

御手洗は気がついた。
手足を形成できる時間が、15分になった。
次第に、次第に延びている。

このままいくと…
人間社会に復帰することは無理でも…
…別の暮らしかたならば、できるかもしれない…。

…だが、そうはいかないかもしれない。

ひとまず、離乳期になるまで、介護ヘルパーに補助してもらい、預金をくずして生活する。
そして、けものプラズム形成の特訓を続ける。

のびしろを確かめるのだ。

しかし離乳期になっても、まだ手足を形成できる時間が不十分だった場合…

…やはり…
…手足を、移植してもらうべきであろうか…。


11 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 17:02:57.12 ID:C/plAi9YO
~御手洗のアパート、玄関~

御手洗の部屋の前は、かつて落書きされたり、大便や死骸を置かれて嫌がらせされていたが…

現在は警備員がついており、嫌がらせ行為をされないように見張っている。

介護ヘルパー「御手洗さん…。ここが、あなたのお家…ですか?」キョトン

アライさん「」

アパートに帰って来た御手洗。
郵便受けに突っ込まれ、溢れ出ている便箋の多さに絶句した。

介護ヘルパー「…家に入ったら、一緒に読んでみましょうね?」

アライさん「…お願いしますなのだ」ペコリ

…

~アパート内~

アライちゃん1~4「「「「のりゃぁ…のだりゃあ…」」」」スピースピー

御手洗たちは、便箋の中身を確認するが…

アライさん「」

介護ヘルパー「…酷い…」

便箋のほとんどは、亡命説絶賛報道中だったころにアラアンチから送られたものであった。

誹謗・中傷の文章や、
アラ虐写真など…
遊び半分で御手洗を傷つけようとする意思がありありと感じられるものであった。


14 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 17:09:37.95 ID:C/plAi9YO
アライさん「う…ぅっ…」フラリ

介護ヘルパー「…い、いらない手紙はこっちで処分しますね!」ガサガサ

この介護ヘルパーは人間の女性である。
介護ヘルパーは、便箋をひとつひとつ開き、中身を確かめる。

嫌がらせの手紙は、御手洗に見せずに処分した。

アライさん「…ありがとうなのだ…。ヘルパーさんみたいに、優しい人間もいるのだ…」

介護ヘルパー「こんな嫌がらせする人は、悪目立ちしてる極少数ですよ」ペリペリ

…そうだろうか。
社会には、MCチヘドローのような奴が沢山いる気がしてならなかった。

介護ヘルパー「ん?これは…」

介護ヘルパーは、一通の便箋をみつけた。

介護ヘルパー「…寄付活動のお手紙です」

アライさん「寄付活動…?」


18 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 17:41:00.77 ID:C/plAi9YO
その内容は…

手足を失った御手洗への憐れみからか。

御手洗へ、寄付金や食べ物、千羽鶴、古着、ぬいぐるみなどの物資を贈りたいというものであった。

アライさん「…この狭いアパートに、そんだけのモノは入らなさそうなのだ…」

介護ヘルパー「…私が選り分けてあげますよ」

アライさん「…でも…。…怖い…のだ…」

介護ヘルパー「怖い?」

アライさん「タダより高いモノはないっていうのだ…。フェネックや大臣は、フレンズ感謝祭自体が、アライさんを誘き出すための罠だったって…思ってるのだ…」

アライさん「人間は…人間はぁ……!優しい顔して近付いてきて、好意を見せて…こっちが心を許したときに…!裏切るのだぁっ…!」ブルブル

アライさん「この人間たちも、ぬいぐるみに変なモノいれたり…食べ物に毒とか入れたり…するかもしれないのだぁ…!」ブルブル

介護ヘルパー「…」

アライさん「怖い…ヘルパーさん…怖いのだ…」ブルブル

介護ヘルパー「…」

人間に虐げられ続けた御手洗。
介護ヘルパーは、金を払って契約している身であるため、信用できる。

しかし、この寄付活動は…
無償で物質を提供すると言っているが、
そこが御手洗には『疑わしい』としか思えなかった。

人間が、自分に無償で好意を向けてくれることなど、あり得ない…。
あるとすれば、裏があり、自分を騙そうとしているにちがいない。

…そうとしか考えられなくなっていた。


21 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 17:54:37.17 ID:C/plAi9YO
アライさん「…受け取れない…のだ…。うぅ…」シュウウウ

車椅子に座っている御手洗は、けものプラズムで腕を形成した。
そして、引き出しから便箋とペン、切手を取り出し、手紙を書く。

アライさん「返事を返すのだ。悪いけど受け取れない…怖い…。送らないでほしいって…返事するのだ…」カリカリ

御手洗は手紙を書き終えた。

介護ヘルパー「…出してきましょうか?」

アライさん「これは…アライさんが出すのだ」ガラガラ

御手洗は、車椅子でエレベーターを降り、手紙をポストに入れた。

アライさん「優しい人かもしれないのだ…でも、ごめんなさいなのだ…」スッ


…結局、寄付物質は贈られてこなかった。

この手紙を出した者は、どうやら嫌だと意思表明をされたなら、無理矢理贈ったりせず引き下がる人間だったようだ。


23 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 18:00:26.68 ID:C/plAi9YO
アライさん「…」ニギニギ

車椅子に座ったまま、腕だけを形成した場合、
手足を生やす場合より2.5倍ほど形成可能時間が延びるようだ。

アライちゃん1「うゆぅ…のぁああーー!のぁああーーっ!」ピギーピギー

アライちゃん2「のりゃああああーーーんっ!ぴぎゅううぅうぅ!」ビエエエン

アライちゃん3「のぉぉーーぁああーんっ!!ぴぃぃいいいいーーっ!」キュルルルル

アライちゃん4「うみゅみゅぅぅーー!!きゅるきゅるるるぅ!」ピギーピギー

アライさん「ああっ!…ほら、おっぱいあげるのだ」ダキッ

アライちゃん1「じゅるっ!じゅぽっ!ぢゅるるるっ!ちゅぱちゅぱ…」ヂュルヂュル

アライちゃん2「ごくっ…!ごくっ…!んぢゅるるるっ…!」チュパチュパ

アライさん「…ちび達。産まれてきてくれてありがとうなのだ…」


24 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 18:12:49.23 ID:C/plAi9YO
…

そうしてアライちゃん達は、離乳期を迎えた。

アライちゃん1「うゆぅ~」ヨチヨチ
アライちゃん2「のりゃ!のりゃ!」ヨチヨチ
アライちゃん3「おかーしゃ!しゅきしゅきなのりゃー!」シッポフリフリ
アライちゃん4「へゆぱーしゃんも、へねっくしゃんも、しゅきしゅきなのりゃー!」スリスリ

介護ヘルパー「うふふ、ありがとう」ナデナデ

フェネック「元気に育ってるね~。うーん、子供いいなー…。私も彼氏作って、子供育てようかな…」ナデナデ

…御手洗の子供達は、一人で四足歩行のヨチヨチ歩きができるようになっていた。

アライさん「ふははー!チビ達は優秀なのだ!」ピカピカガイジガオ

それはそうだろう。
かつて御手洗が、師匠のもとで猛特訓し…
世界を救うために数々のセルリアンと戦って身につけた高レベル。

それを、いくらか引き継いでいるのだから。
先天的な運動能力の素養は高い。


26 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 18:19:20.19 ID:C/plAi9YO
アライちゃん1「ありゃいしゃんのほーがはやいのりゃ!うぅー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん2「ぴいぃぃーーっ!まけゆのやーなのりゃああっ!あやいしゃんがかちゅのりゃぁ~っ!」ヨチヨチヨチヨチ

…もっとも、親が高レベルだからといって、性格まで先天的に高い素養をもつわけではない。

育て方を間違えれば、子供達はかつて日本中で被害を出したヨチラークソ害獣になるであろう。

そうならないように、小さいうちからしっかりと教育しなくてはならない。

アライさん「…」ガサッ

…御手洗は、一冊のノートを持っていた。
それはブラウンPが、御手洗のために残した、『アライさん教育研究ノート』。

ブラウンPの死語、『御手洗へ譲る』の付箋が貼られた状態で、自室から見つかったものである。

ブラウンPが麦わら帽子アライさんを育てたときに完成させた、『社会性を持ったアライさんを育てる教育方法』をまとめたノートである。

アライさん「タイリクさん、ありがとうなのだ…。人と仲良くできる、立派ないい子達に育ててみせるのだ…」

…ブラウンPがこの研究をした動機は、『いい子に育ててから殺すため』という、
極めて不純な動機であった。

しかし、これを御手洗へ譲ったときの気持ちは…
ただ純粋に、友人が子育てするときがあったら、それを助けてあげたいという…
穢れなき好意であったに違いない。


28 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 18:29:53.20 ID:C/plAi9YO
アライさん「チビ達、ご飯なのだ!」スッ

御手洗は、子供達に離乳食を与えた。

アライちゃん1「おぉ~!おいちちょーなのりゃあ!」ヨチヨチシッポフリフリ

アライちゃん2「たべゆのりゃー!あーん…」

アライさん「待つのだ、チビ達。…ご飯を作ったアライさんや、お米や野菜を育ててくれた人のこと、どう思うのだ?」

アライちゃん3「おかーしゃしゅきしゅきなのりゃぁ!いーひとなのりゃぁ!」シッポフリフリ

アライさん「それじゃあ、食べる前に、ちゃんと言うことないのか?」

アライちゃん1~4「「「いただきましゅなのりゃ~!」」」シッポフリフリ

アライさん「よく言えたのだ!チビ達は、ちゃんと人に感謝できて偉いのだ!」


30 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 18:32:20.40 ID:C/plAi9YO
アライちゃん4「いただきまーしゅ!あむあむあむあむあむ!くっちゃくっちゃ!はぐっぐちゃっ!」クッチャクッチャ

アライさん「こら、チビ!行儀よくするのだ!食べる時はクチャクチャ音出しちゃダメなのだぁ!」

アライちゃん4「うゆ?なんでなのりゃー!あやいしゃんはへーきなのりゃあ!」シッポフリフリ

アライさん「お前がそうでも、アライさんやヘルパーさん、フェネックはその音が大嫌いなのだ!そんな音立てると嫌われるのだぁ!」

アライちゃん4「ぴいぃ!?へゆぱーしゃんやへねっくしゃん!?きらいになりゃないでなのりゃあ!」ピイイィィ

フェネック「ちゃんとお行儀よくできる子は好きだよ~」

介護ヘルパー「しっかりお勉強できる子は好きですよ」

アライちゃん4「うゆ!がんばゆのりゃ!…はぐ!はぐ!もぐもぐ!」モグモグ

アライさん「おおー、音出さずにできてるのだ!チビ達は将来立派な大人に育つのだ!」

アライちゃん4「うゆ~!いっぱいたべて、おべんきょーちて!りっぱになゆのりゃ~!」シッポフリフリ


48 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 20:09:41.60 ID:C/plAi9YO
…

~トイレ~

介護ヘルパー「お尻拭きますね」フキフキ

アライさん「…」

日に日に成長していく我が子を見る御手洗。

今の自分は…
自分の尻を拭くのさえ、介護が必要な状態であった。

けものプラズムの手は、自由自在に出したり引っ込めたりできるものではない。

一度形成したら、しばらく引っ込まないし…
再び形成するのには、大きなエネルギーを消費する。

エアコンが、電源を入れて安定状態になるまでの短い時間が最も消費電力が大きいのと同じようなものだ。

…もう、こんな体はこりごりだ…。
…トイレを出た御手洗は、そう思った。

アライさん「…フェネック…」

フェネック「はいよー」

アライさん「…実験室のアライさん達に同情して、手足をつけずにいることは…幸せになるのを我慢することって…。立派だって思うのだ…?いい子だと思うのだ…?」

フェネック「…」

アライさん「チビ達を抱いてやることも、守ってやることもできない、こんな体のままでいることって…綺麗なことなのか…?カッコいいことなのか…?」


49 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 20:13:17.81 ID:QNldI1Nfo

フェネック「…どうしたの?アライさん」

アライさん「アライさんは、もう…」

アライさん「…人目を気にして…、立派なふりすることに…疲れたのだ」

フェネック「…」

アライさん「いい子でいることも…。綺麗でいることも…。カッコつけるのにも…。もう疲れたのだ…」

フェネック「…」

アライさん「アライさんは、そろそろ…幸せになりたいのだ…」

アライさん「幸せになりたいって思うのは、悪いことなのか…?自分に素直に生きたいって思うのは、悪いことなのか…?」

フェネック「…」ギューッ

フェネックは御手洗を抱き締める。


54 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 20:25:09.71 ID:C/plAi9YO
フェネック「いいよ、アライさん」

アライさん「ふぇねっくぅ…!」

フェネック「…よく頑張ったね、アライさん」ナデナデ

アライさん「うぅ、ぅぁああああっ…!」ポロポロ

御手洗は泣き出す。

アライさん「あ、アライさんは、アライさんはっ…ぐしゅっ、ず、ずっと、手も、足も、なくって…死にたいくらい嫌だったのだぁ…!」グスングスン

フェネック「…今までずっと、辛かったんだね」ナデナデ

御手洗は、親友の前で、ずっとずっと我慢し続けていた本音を漏らす。

アライさん「ほんとは、うぅ、お医者さんに、移植手術の話してもらったときぃっ…!今すぐ移植してほしいって…!思ってたのだっ…!」グスングスン

アライさん「でも、でもおぉぉっ…!あ、ああいうとき、同情しない奴は、移植してほしいって言う奴は…『幸せになろうとする奴』は…!」グスングスン

アライさん「人間たちの社会では、軽蔑されるって…!アライさんは知ってるのだぁっ…!心のない奴って…!自分勝手な奴って…嫌われるのだぁっ…!」グスングスン

フェネック「…そうだね。人間は、そういう人を嫌うね」ナデナデ


57 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 20:31:19.23 ID:C/plAi9YO
アライさん「だがら、それが、やだったからぁっ!ずっとずっと我慢してたのだぁっ!」グスングスン

フェネック「…」

アライグマのフレンズは、自分の損得勘定を何より優先して判断する生き物。
そして、先天的に、他者への思いやりや、共感性に欠ける生き物。

野良アライさん達は、そういった先天的な脳機能の人間との違い故に、
自分の行動が迷惑になるかを考えられない。

人々は、そんなアライグマのフレンズのことを、『ガイジ』と呼んできた。

…御手洗とて、例外ではない。
例外ではないのである。

御手洗は、先天的に高い共感性と思いやりを持った天才などではない。

御手洗は、何の努力も我慢もなく、当たり前に利他的な判断ができるような、突然変異個体ではない。


御手洗が産まれ持った性格は、根本的な部分では、野良アライさんと何も変わらない。

しかし…
フレンズの皆と、仲良く生きたい。
人間達と、仲良く生きたい。

『仲良く生きたい』。
その願いだけのために。

欲しいものを我慢し。
主張したいことを我慢し。

…『思いやりがあるフリ』をし続けて、善人の仮面を被り続けて生きてきた。

それが御手洗というアライさんである。


61 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/23(土) 20:36:03.25 ID:C/plAi9YO
フェネック「…病院に行こ、アライさん」

アライさん「うん、うんっ…」グスングスン

フェネック「手足、つけてもらお」

アライさん「うんっ…」シクシク


御手洗は、ずっとずっと被り続けてきた善人の仮面を…。
外すとはいかずとも…、
…頭の上にずり上げて、素顔をさらけ出したのであった。






最終更新:2017年12月25日 23:05