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吐露

268 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 10:57:34.32 ID:mMfTbjngO
…

パークキーパー「うみゃ」グイイッ

黒衣のフレンズ「…」

…そこの真っ黒な人形の物体に、拘束は任せていいんだろうか。

ヘラジカ「私も押さえておく」グイイッ

…分かった。
俺は、森へ逃げた子供達を追跡する。

アライさん「…」

…協力してくれるか?ID2番。

アライさん「…」

…ID2番?


269 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 10:59:53.82 ID:mMfTbjngO
アライさん「…ちびは…ちびはまだ…、森の中では生きていけないのだ…」

アライさん「…だけど、人間社会に行っても…、いつか、人間達に殺されそうな気がするのだ…」

アライさん「チヘドローみたいな奴が出て…!ちび達を悪者扱いして…!殺す奴がいるのだぁっ…!」ブルブル

…否定できないな。

アライさん「…安全なのは、ジャパリパークか大久野島だけど…。アライグマのフレンズを展示するわけにはいかないのだ…」

…そうだな。
あそこにいるフレンズ達は、見世物以外の役割が持てない。

だがアライさん達は、その見世物にすらなれないだろう。

まともな客が減り…
アラアンチが来て石を投げるだろう。

アライさん「分かんないのだ…。チビの居場所が、どこにあるのか…」

…
見つけるには、時間がかかるだろう。

だが、それがどこであっても。
あんたの隣であることに違いはない。
そうじゃないか?

アライさん「…そうなのだ。チビ達には、教えなきゃいけないことがいっぱいあるのだ」

…おぶってやる。
探しに行こう。

アライさん「…」

俺はID2番を背負い、森へ進んだ。


271 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:09:36.53 ID:mMfTbjngO
アライさん「…助けてくれて、ありがとう…なのだ…」

…礼が言えるアライさんもいるんだな。

アライさん「…でも、どうして助けてくれるのだ?人間は、アライさん達が嫌いなのだ…。タダで助けてくれるわけないのだ…」

…アライさん嫌いな人間は、確かに多いだろう。
俺だってそうだ。

だが、誰もが皆『嫌いだから排除する』という短絡的思考の持ち主じゃない。
あんたを今まで傷付けてきた、社会不適合者どもはそうかもしれんがな。

アライさん「…」

人間は、罪を許し会えるし、仲直りできる。
考え方の違う相手を理解できる。
対立した相手と、和解できる。
…それが人間だ。

嫌いだからといって即攻撃し排除する奴らのことは…
一般的に『野蛮人』という。
人間社会でも鼻つまみ者さ。

…だが奴らは、その劣等感故に、アライさんを虐め、見下し、サンドバッグにすことで、憂さ晴らしをするんだろう。

アライさん「…お前と会えて、よかったのだ…」


272 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:24:46.05 ID:mMfTbjngO
アライさん「ちびーー!チビ!どこなのだ!?アライさんとまた一緒に暮らすのだ!」

…耳元で、ID2番がカン高い声で叫ぶ。

この場では言えないが…正直なところ、俺はアライさんの声が嫌いである。
聞いててイライラする。

…しかしだ。
産まれもっての特徴を嫌うのは、それこそ不当な差別というものであろう。

御手洗が今まで、人間社会の不快さを我慢して生きてきたように。
俺もまた、そのキンキン声を我慢する。

アライさん「お友達や人間さんが、アライさんを助けてくれたのだ!アライさんは無事なのだぁ!」

やがて、草陰でがだがさと音がする。

アライちゃん1「おがーーしゃーーんっ!」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん2「ひとしゃんありがとーなのりゃあっ!」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん3「こわかったのりゃああっ!さびちかったのりゃああっ!」ヨチヨチヨチヨチ

草陰からヨチラー…じゃなくて、
御手洗の子供達が、よちよち歩きで這い出てきた。

アライちゃん1「ひとしゃんしゅきしゅきなのりゃー!」スリスリ

アライちゃん達が、俺の足元に群がってくる。

アライちゃん2「おかーしゃん!おかーしゃんとはなればなれやーなのりゃあ!」スリスリ

アライちゃん3「ひとしゃんありがとなのりゃあ!おれーにありゃいしゃんの、かわいーかわいーしっぽのだんしゅみせてやゆのりゃ!」クルッ


274 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:28:01.95 ID:mMfTbjngO
アライちゃん3「のりゃっ!のりゃっ!」シッポフリフリフリフリフリフリ

アライさん「元気で良かったのだ!チビ達はやっぱり可愛いのだぁ!」

…ID2番。
人間社会では、人前で尻尾のダンスするのは止めるように躾しておけよ。

アライさん「だ、ダメなのか?」

ダメだ。
手を擦り合わせる『ハエガイジムーブ』や、口を開けて咀嚼する『クチャラー』は知ってるだろう。
…それと同じくらい不快だ。

アラアンチに殺されたくなかったら、しっかり躾しておけ。

アライさん「分かったのだ…チビ!それをやると、人間は嫌がるのだ!嫌われるのだ!」

アライちゃん3「ぴいいぃぃっ!?ご、ごめんなしゃいなのりゃあー!」ピタッ


…何というか。
本当に、佐助を連れてこなくて良かった。


275 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:36:27.28 ID:mMfTbjngO
俺は、ヘラジカ達がいる所へ向かって歩いた。

アライちゃん1「なのだー」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん2「なのだー」ヨチヨチヨチヨチ
アライちゃん3「なのだー」ヨチヨチヨチヨチ

俺の後を、ヨチラー3匹…じゃなくて、
御手洗の子供3人がついてくる。


…しかし、こうして見ると。
やはりこいつらもアライさんなんだな。

アライさん「?何を今さら…」

…『俺が駆除してきた敵』。
それと同じ、本質的に全く変わらない生き物だということだ。

つまり…
俺が今まで殺してきた野良害獣どもも、皆あんたのようになれる素質があったわけだ。

アライさん「…」


277 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:46:41.87 ID:mMfTbjngO
やがて俺達は、拘束されている黒衣のフレンズの前に戻ってきた。

アライちゃん1~3「「「いもーとー!ぶじだったのかぁ!いきててよかったのりゃあ~!」」」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん4「う…うゆぅ…くび…くびいちゃいのりゃあっ…!」

黒衣のフレンズ「…本当に、そいつらを生かしておくつもりですか、ハンター」

ああ。そのつもりだ。

黒衣のフレンズ「きっとまた人間に拉致されたり、迷惑かけたり…牙を剥いたりしますよ。今まで何を見てきたのですか!?」

何を見てきたかって?
…テロリストが子供を産み、テロリストとして教育し、人類を攻撃し続けたのを見てきた。

黒衣のフレンズ「分かってるではないですか!そこにいる子供達も、あなたや政府、警察、軍隊が正当に駆除してきた生き物と、何ら変わりない!!」

分からん奴だな。
野良害獣どもが、何故あんなクソガイジだったか、分かるか?

黒衣のフレンズ「アライさんだからでしょう!産まれもっての絶対悪であるアライさんだから!」

違う。
強盗の親から、ガキの頃に強盗として生きるように教育を受けたからだ。

黒衣のフレンズ「…」

俺達は正義の味方じゃないし、野良アライさん達も悪じゃない。

俺達はただ、野良アライさんというテロリスト集団…
『敵』と『戦った』。
…それだけのことだ。

黒衣のフレンズ「…」


278 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 11:53:03.83 ID:mMfTbjngO
はっきり言おう。
あんたの原種が滅ぼされたのは、まことに気の毒なことだ。

だが今のお前は、被害者じゃない。

ただのアラアンチだ。
それも、とびっきり悪質な。

黒衣のフレンズ「…アラアンチ、ですか」

そうだ。
自分で否定できるか?

黒衣のフレンズ「…はは、違いありません。頭のおかしいアラアンチ。…そのものですね」

そうだな。
もっとも、あんたに途中まで荷担しかけた俺も、あまり人のこと言えないが。

黒衣のフレンズ「…御手洗さん」

アライさん「何なのだ」

黒衣のフレンズ「…あなたは、私を許せないでしょう。子供とあなたを殺し、移植手術の機会を奪った私を」

黒衣のフレンズ「それでも、謝らせてください…。本当に、申し訳ありませんでした」

アライさん「…ほんとのとこは、どう思ってるのだ」

黒衣のフレンズ「…」

アライさん「ほんとの気持ちを言うのだ。許すかどうかは、それで決めるのだ」

黒衣のフレンズ「…」


279 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:01:46.13 ID:mMfTbjngO
黒衣のフレンズ「…悔しい…悔しいです…!」ブルブル

黒衣のフレンズ「家族や仲間を、突然やってきたアライさん達に虐殺されて…!」

黒衣のフレンズ「原種の仲間を殺す度に強くなっていくあいつらが…!怖くて…!憎くて…!でも、敵わなくって…!」ブルブル

黒衣のフレンズ「誰かに助けて欲しかった…!そう思ったとき、私はサンドスターに選ばれ、フレンズになりました」

黒衣のフレンズ「私は同種の仲間とともに、アライさんと戦おうとしました…。でも、仲間は私を逃がしてくれた…!」

黒衣のフレンズ「私は研究所へ行き、シロウ主任たちのもとで、アライさん駆除兵器…、アライディスパッチャーやカプセルドローンを作った…」

黒衣のフレンズ「でも、間に合わなかった…!原種は、滅んでしまった…!」

…あいつらに、ニホンザルを滅ぼすほどの力があったとは驚きだな。
逆に負けそうなイメージがあるんだが。

黒衣のフレンズ「…どうやら、そのときに活躍した高レベルの野良アライさんは、その後はアライハザードの中核部隊になったり、山小屋へ行ったりしたようですがね…」

…そう言われると納得だ。
アライハザードを起こした兵たちが、ろくな飛び道具もなしに警官隊と戦えたのは、
ニホンザルを滅ぼしてレベルを上げたからだったのか。


282 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:14:11.37 ID:mMfTbjngO
しかし、なぜニホンザルを滅ぼしたんだ?

アライさん「アライさんに聞かれても困るのだ…いや本当に…」

…だよな。とばっちりだよな。

黒衣のフレンズ「…野良アライさんの生態は、アライグマよりむしろ猿に近かった。だから、猿と暮らし方が被ってしまったんです」

黒衣のフレンズ「アライさんには、他の生き物から巣を奪う習性があります。原種も巣を奪われました」

『ここはアライさんが最初に見つけたお家なのだ』ってとこか。

黒衣のフレンズ「はい…。住み家を奪われたニホンザル達は、当然抵抗し、住み家を奪い返そうとました」

黒衣のフレンズ「しかし、その行いが野良アライさんの逆鱗に触れました」

『アライさんのお家が取られたのだ!お家泥棒め、こんな巨悪は許せないのだ!』ってとこか?

黒衣のフレンズ「一字一句違わずそう言いました。…そして戦いの末に…原種は滅ぼされました」

黒衣のフレンズ「野良アライさん達は、『正義は勝ったのだ!』と言っていました」

…後からやってきた害獣に、住み家を乗っ取られ…
奪い返したら強盗扱いされて、滅ぼされた…と。

黒衣のフレンズ「…」


285 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:29:05.40 ID:mMfTbjngO
大臣「…はぁ、はぁ…。ですが、お前の復讐は、失敗に終わりました。何故だか分かりますか」ヨロッ

黒衣のフレンズ「…御手洗さんの方が、味方が多かったから」

大臣「違うのです。お前の復讐は…『とっくに終わっていた』のです。成功という結果で完遂していたのです」

大臣「お前の原種を滅ぼした集団…『特定有害駆除対象フレンズ』は、一斉掃討作戦が終わった時点で、もうとっくに滅んでいたのです」

黒衣のフレンズ「…」

大臣「…お前が殺そうとしたのは…御手洗の方は、とばっちりを受けた罪のない民間人です。妨害されて当然なのです」

黒衣のフレンズ「…」

大臣「そして…実験用やドナー用のアライさん達は…言い方が悪いですが…」



大臣「…『備品』なのです」



アライさん「」

…大臣、御手洗の前で言っていいのかそれ?

大臣「…器物破損の迷惑行為。自分の復讐心のために、ルールを破ったら…、我々がお前の敵に回るのは当然なのです」


286 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:39:25.35 ID:mMfTbjngO
黒衣のフレンズ「…」

大臣「御手洗を見習うのです。御手洗は、どんなに人間に迫害されても、じっと耐えて我慢した。子供を殺されても、です」

アライさん「っ…」ブルブル

大臣「人間もフレンズも、自分の感情のままに素直に生きていていいわけではない。忍耐しなくてはならないのです」

大臣「『けものはいても、のけものはいない』世界なんてないのです」

大臣「『けものになったら、のけものにされる』のです」

大臣「『けものですもの大目に見ててね、みんな自由に生きている。飾らなくて大丈夫』なんてあり得ない」

大臣「みんな自由に生きたら、みんな不自由になるのです。けものであれば、飾らなくてはならないのです」

黒衣のフレンズ「…」

大臣「ムショに行ったら、我慢強さを磨くのです。きっちりシゴかれてくるのです」

黒衣のフレンズ「…はい」


288 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:45:00.57 ID:mMfTbjngO
…というか、皆、無事なんですか?

乗り物が得意なフレンズ「…痛いけど…死ぬほどじゃ…ないかな…」ヨロヨロ

力持ちなフレンズ「うぅっ…服が、わたくしの吐瀉物で汚れて…うっ…気持ち悪い、ですわっ…」ベトベト

…平気そうですね。
大臣は血を吐いてたように見えましたけど…
内臓傷付いてないんですか?

大臣「…」

大臣?

大臣「やせがまんしてるのです…ほんとはいたいのです…」ブルブル

…ですよね。
もう寝ててください。
救急車、もうすぐ来ますんで…。


290 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 12:56:50.79 ID:mMfTbjngO
黒衣のフレンズ「…教授…聞こえていますか?」

パークキーパー「うみゃ?」

パークキーパー「< ●>」

…聞こえてるらしいぞ。

黒衣のフレンズ「…私は、最初からこうする気で、あなたの研究所へ入りました」

黒衣のフレンズ「実験用アライさんは、皆殺しにすると…、最初から決めて、今日まで準備を進めていました」

黒衣のフレンズ「あなたが実験用アライさんのお世話をしているときも」

黒衣のフレンズ「あなたが残酷な実験に涙しているときも」

黒衣のフレンズ「あなたが臓器や手足を奪われたドナーアライさんを見て、泣きながら嘔吐していたときも」

黒衣のフレンズ「私は、あなたに離反する気でいました。…その決心は、今日まで変わることはありませんでした」

パークキーパー「< ●>」ジィー…

黒衣のフレンズ「…」

パークキーパー「…『聞こえていますか?白衣さん。私です、シロウです』」ピーガガー

黒衣のフレンズ「シロウ…主任?」

パークキーパー「『教授は、言っています』」

黒衣のフレンズ「…」




パークキーパー「…『あなたが、ちゃんと謝って罪を償える人なら…きっとまた仲間に戻れる』と」

パークキーパー「…『刑務所から出たら、また戻ってきた来て下さい』…と」

黒衣のフレンズ「」

黒衣のフレンズ「…」ガクッ

…黒衣のフレンズは、地面に膝をついた。


292 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2017/12/24(日) 13:03:04.28 ID:mMfTbjngO
黒衣のフレンズ「…なんなんですか、あなたは…」ブルブル

黒衣のフレンズ「本当に、お人好しすぎます…!パークキーパーを使ってまで、こんなことをしたり…!」ブルブル

パークキーパー「うみゃ…」

大臣「…ええ!?パークキーパーって…人工衛星の!?ですか!?」ゲホッ

そうですが。

大臣「…これが?」チラッ

パークキーパー「うみゃー」

大臣「…教授。後でいろいろ聞かせるのです…」



…こうして…
復讐劇は終幕した。

黒衣のフレンズは逮捕され、禁固刑を言い渡された。

…まあ、結果論ではあるが、殺人は実行しなかったからな。
アライちゃん4の首も、治療して事なきを得たようだし。





最終更新:2017年12月25日 23:23