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クリーナ

113 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 19:46:08.65 ID:gwurQYz8O
…

~夜、ある中年サラリーマンの家~

中年サラリーマン「…」ゴクゴク

ペットアライさん「…」ゴクゴク

家の居間で、中年サラリーマンと、そのペットのアライさんがお茶を飲んでいる。

ペットアライさん「美味しいのだぁ~…」ゴクゴク

中年サラリーマン「…そうだな」

アライさんは成体のようだ。
夜行性のアライさんは、夕方に起きてご飯を食べたばかりのようである。

中年サラリーマン「お前も随分大きくなったな…」

ペットアライさん「飼い主さんのおかげなのだ!」シッポフリフリ

中年サラリーマン「…」

この中年サラリーマンは未婚男性。
童貞である。

ペットアライさん「飼い主さん!夜になったら、散歩行くのだ!」シッポフリフリ


114 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 19:50:13.84 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…ああ、分かった。これ着けるんだぞ」スッ

ペットアライさん「なのだー!」スチャッ

ペットアライさんは、蛍光ベルトを腕に巻いた。
交通事故防止のためだ。

ペットアライさん「さあ、出発なのだー!」ペタペタ

中年サラリーマン「…行こう」

足首がないため、四つん這いで歩くアライさん。

中年サラリーマンはアライさんを連れて、外へ出掛けた。


…

~家の外~

ペットアライさん「ふはははー」ペタペタ

中年サラリーマン「…」スタスタ

ペットアライさん「うおー!こうもりが飛んでるのだ!」ジロジロ

中年サラリーマン「…こうもりはいいな。空が飛べて…」スタスタ

ペットアライさん「飼い主さんも空飛んでみたいのか?アライさんもなのだ」ペタペタ

中年サラリーマン「そういう時代が来ればいいなぁ…」スタスタ

手綱を握っている中年サラリーマンは、四つん這いのアライさんと一緒に夜の街中を散歩する。


115 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:02:04.96 ID:gwurQYz8O
車のエンジン音と、ヘッドライトの光が近付いてくる。

中年サラリーマン「クリーナ、車だぞ」

ペットアライさん「うおお、危ないのだ」ペタペタ

車「」ブロロー…

車は通り過ぎていった。

中年サラリーマン「…なあ、クリーナ。今の生活…どう思う?」スタスタ

ペットアライさん「んー?…退屈なのだ」ペタペタ

中年サラリーマン「そうだよな…」

ペットアライさん「でも、クリーノもいるし…。飼い主さんもいるのだ。寂しくはないのだ」ペタペタ

中年サラリーマン「…」

『クリーノ』…

中年サラリーマンが、家で飼っている雄のアライグマの名前である。

ペットアライさん「あー、いつかクリーノと…」ペタペタ

その時。
向こうから足音が近付いてきた。

おばさん1「えっほ、えっほ」タッタッ

おばさん2「えっほ、えっほ」タッタッ

…ジョギング中の、近所のおばさん達である。


116 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:05:37.41 ID:gwurQYz8O
ペットアライさん「交尾したいのだぁ!」シッポフリフリ

中年サラリーマン「!?」ピタッ

おばさん1「!?」ピタッ

おばさん2「!?」ピタッ

ペットアライさん「のあ?飼い主さん、なんで止まるのだ?」

中年サラリーマン「…い、行こう…」スタスタ

ペットアライさん「?何なのだ…」ペタペタ

おばさん1「…今の聞いた?交尾シタイノダーですって!嫌ねー」タッタッ

おばさん2「あの人、独身なんですって。いつもあのアライさんと何やってんのかしらねー」タッタッ

おばさん1&2「「あーヤダヤダ」」タッタッ

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「飼い主?どうしたのだ!早く行くのだ!」グイグイ

中年サラリーマン「ああ…」スタスタ


117 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:10:54.69 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…」スタスタ

バッタ「」ピョンピョン

ペットアライさん「お!バッタがいるのだ!こら待て~!」ペタペタペタペタ

バッタ「!」ガシィ

ペットアライさんは、道端にいたバッタを捕まえた。

ペットアライさん「頂きますなのだー!はぐはぐ、もふもぐ…」モグモグ

中年サラリーマン「…美味いか?」

ペットアライさん「んふー。飼い主さんの手料理の方が美味しいのだ」

中年サラリーマン「そうか」

ペットアライさん「でもこれは、なんというか、戦いなのだ!狩りの中で、アライさんの血が騒ぐのだ!ジビエなのだ!」コスリコスリ

中年サラリーマン「ふふ。楽しいか?」スタスタ

ペットアライさん「楽しいのだー!ふはは、他にはいないかー?くんくん、ふんふん!」ペタペタ

ペットアライさん「うえー、この電柱、犬のオシッコのにおいがするのだ」クンクン

中年サラリーマン「…」スタスタ

四つん這いのアライさんは、地面のにおいを嗅ぎながらぺたぺたと進んでいる。


118 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:17:06.78 ID:gwurQYz8O
警官「そこのあなた、何してるんですか?」

中年サラリーマン「えっ…あ、その…」アセアセ

ペットアライさん「ん?何か用なのか?」

警官「…ああ、アライさんの散歩ですか。危険がないようにお願いしますよ…」スタスタ

中年サラリーマン「はい…」スタスタ

ペットアライさん「ふははー!アライさんが、飼い主さんを危険から守ってやるのだ!アライさんの爪と牙は鋭くて強いんだぞー!」ペタペタ

中年サラリーマン「頼もしいな」スタスタ

一人と一匹はさらに進む。

女子高生「…」スタスタ

コンビニから出てきた女子高生とすれ違う。

ペットアライさん「なのだー」ペタペタ


120 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:21:34.34 ID:gwurQYz8O
女子高生「…っ」ドンビキ

女子高生は、一人と一匹を見て顔をしかめた。

女子高生「…きも…」スタスタ

ペットアライさん「うぬ!?今アライさんのこと何て言ったのだー!」ムカァ

中年サラリーマン「や、やめろって…」グイグイ

ペットアライさん「何ビビってるのだ飼い主!こういう時、言い返さないとナメられるのだ!やいバーカ!ブース!うんこたれー!」

女子高生「ほんときもい…」スタスタ

中年サラリーマン「こらやめないか!」グイイイイッ

ペットアライさん「ぐぎゅううぅ!?」

手綱を思い切り引っ張られ、首輪がアライさんの喉に食い込む。

ペットアライさん「ぐ、ぐゆじ…!なん、れ…!」ブルブル

中年サラリーマン「すみません、すみません」ペコリペコリ

女子高生「まじ無理」タタター…

女子高生は去っていった。


121 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:23:52.52 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「すまんな、クリーナ」パッ

ペットアライさん「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ…何するのだ!あんなのにビビってたらダメなのだぁ!」

中年サラリーマン「頼むから波風たてないでくれ…」スタスタ

ペットアライさん「うぅー…」ペタペタ


女子高生は、なぜ『キモい』等と言ったのだろうか?


122 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:28:54.10 ID:gwurQYz8O
例えば、男性がアライちゃんの散歩をしているのを見たときの印象は…

まあ、ペットの散歩だな、という感じだ。

何故なら、あの不自然にでかい頭…人間ではあり得ない頭身や体型は、アライちゃんを否が応でも『動物』と認識させるからだ。



では、アライしゃんならどうであろうか。

幼児のような、はたまた少女のような姿を…
50センチすらない大きさに『縮めた』感じだ。

体だけでなく、頭まで小さい。

こんな人間はいない以上、アライしゃんを見ても、ご近所さん達は尚『動物』と認識する。


…では。
成体のアライさんならどうであろうか。


123 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:33:14.97 ID:gwurQYz8O
体の大きさは、女子中学生と同じくらい。

耳と尻尾があるから、『人外の存在』だということは頭では理解できるはずだ。

しかし…
耳と尻尾がなければ、その姿はほぼ人である。
それも、人権がなく、ペットとして中年男性に飼われているのである。



なんというか…

中年男性が、女子中学生のような姿のアライさん(足首がない)に首輪をつけ、

手綱を握りながら、四つん這いで歩かせる姿は…

ミニスカートがまくれ、白いタイツ状の毛皮で覆われた尻を丸出しにして恥じらいもなくぺたぺたと歩くその姿は…



…見た目的に、非常に『キツい』のである。


124 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:36:53.62 ID:gwurQYz8O
男性はまだしも、女性から見れば…

女の子が四つん這いで、スカートから尻を丸出しにして、中年男性に手綱を握られぺたぺたと歩くその姿は…

生理的嫌悪感しか感じないと言っても過言ではない。


アライさんの散歩とは、あまりにも…
見た目的に『アレ』な行為なのである。


128 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:44:54.53 ID:gwurQYz8O
~中年サラリーマンの家~

ペットアライさん「ふぅー、ただいまなのだ。散歩ありがとうなのだー」シッポフリフリ

中年サラリーマン「ああ、ご苦労さん。俺もね、いい運動になるんだな、これが」

ペットアライさん「あはは!この会話、昨日もしたのだ!」

中年サラリーマン「ハハハ…じゃあ、風呂入って寝るわ。お前もシャワー浴びたらボイラー消しとけよ」スタスタ

ペットアライさん「はいなのだー!うおー、クリーノ!一緒に遊ぶのだー!」ペタペタペタペタ

中年サラリーマンは寝室で寝た。


130 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:50:54.42 ID:gwurQYz8O
…

~翌日、街中~

中年サラリーマン「…」スタスタ

彼がいる街は、だいぶ田舎だ。
娯楽なんてそうそうない。

こういう田舎では、ご近所付き合いが大事である。

この中年サラリーマンも、これまで欠かさずご近所付き合いをしてきたのだが…

おばさん1「うわ、見て。大橋さんよー」ヒソヒソ

おばさん2「あーやだ。昨日交尾とか言ってたわねー。独身だし、やっぱりそういう…」ヒソヒソ

中年サラリーマン「…」スタスタ

…アライちゃんを散歩していた頃は、ご近所さんもアライちゃんを可愛がってくれたし…

中年サラリーマンを邪険に扱うこともなかった。

女子高生「…きも…」スタスタ

男の子1「あー、変態のおっさんだー!」ワイワイ

男の子2「へーんたい!へーんたい!」ワイワイ

中年サラリーマン「…」スタスタ

しかし、アライちゃんが大きくなってから…
中年サラリーマンは、露骨に周りの人に嫌悪されるようになっていた。


133 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 20:57:10.57 ID:gwurQYz8O
~会社のトイレ~

中年サラリーマン「…」フラフラ

田舎のオフィス。
『ご近所さん』の顔見知りもけっこういる。

中年サラリーマン「…」ガチャッ

中年男性は、男子トイレを出ようとすると…

『ねえ知ってる?あの独身の大橋さん、アライさん飼ってるんだってー』ヒソヒソ

『えー?アライさんって…あの大きくなると狂暴になるやつでしょ?子供のうちは可愛いけど…』ヒソヒソ

中年サラリーマン「!」

近くで、女子社員が中年サラリーマンの噂話をしている。

『どうやって言うこと聞かせてんだろうね。っていうか、なんで飼い続けてるの?大きくなったらもう可愛くなし、うざいだけなのに』ヒソヒソ

『それは、もう…』

『キッモ~~~!』

中年サラリーマン「…」

…会社でさえ、嫌な噂が立っている…。

中年サラリーマン「…もう、嫌だ…」


137 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:01:47.62 ID:gwurQYz8O
~夜、中年サラリーマンの家~

中年サラリーマン「…」スタスタ

アライグマ♂「キュルルルルルゥ」ドタドタ

ペットアライさん「ふははー!お帰りなのだー飼い主!」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「退屈だから、飼い主さんの部屋の本読んで、おうどん茹でてみたのだ!…立ち膝だから大変だったのだ…」

ペットアライさん「飼い主!アライさんうどん、一緒に食べるのだー!」シッポフリフリ

アライグマ♂「ハウハウ」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「…ん?どうしたのだ飼い主?嫌なことでもあったのか?」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「イジメられてるのか?それなら、アライさんがぶっ飛ばしてやるのだ!アライさんは強いんだぞー!」ピカピカガイジガオ

中年サラリーマン「…クリーナ」

ペットアライさん「何なのだ?」


147 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:28:21.96 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…アライさんの楽園って、知ってるか」

ペットアライさん「何なのだ?それ」

中年サラリーマン「…子供のころ、人に世話されて…大人になったアライさんはな、自由になれる土地…アライさんの楽園に行くんだ」

ペットアライさん「そんな話、お店で聞いたことないのだ」

中年サラリーマン「そ、それはな…。…。今までその話を聞かずに、頑張っていい子にし続けてたアライさんだけが行けるんだ」

ペットアライさん「ふーん…。アライさんは、別にいいのだ」

中年サラリーマン「!?で、でも…あんなに退屈だって言ってただろ!自由になれるんだぞ!毎日楽しく過ごせるんだぞ!」

ペットアライさん「飼い主とクリーノも一緒に来るのか?」

中年サラリーマン「…いや…」

ペットアライさん「ふーん。じゃあ、アライさんは別に行かなくていいのだ」シッポフリフリ

中年サラリーマン「な…ぁ…!」ブルブル

ペットアライさん「それがどうかしたのか?」


151 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:36:25.78 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…いかなきゃいけない決まりなんだ…。行ってくれ…たのむ…」ブルブル

中年サラリーマンは嘘をついた。

結局のところ、アライさんはたかがペットである。

ペット一匹への同情のために、人生をドブに捨てる行為が賢明といえるだろうか。

ペットアライさん「何でなのだ?何でなのだ!アライさんは、飼い主と一緒に居たいのだ!絶対行かないのだ!」

中年サラリーマン「行けよ!!」ドガァ

ペットアライさん「のだっ!」

中年サラリーマンは、ペットアライさんを蹴った。

中年サラリーマン「あ…。だ、大丈夫か…?」アセアセ

ペットアライさん「…飼い主は…。アライさんのこと…嫌いなのか…?」

ペットアライさん「飼い主は…!アライさんと一緒に…居たくないのかぁっ…!」ウルウル

中年サラリーマン「決まりなんだから仕方ないだろ!」

中年サラリーマンは、また嘘をついた。


155 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:42:13.94 ID:gwurQYz8O
ペットアライさん「う…うぅ…!嘘…なわけ、ないのだ…。飼い主は、アライさんに嘘ついたことないのだ…」

中年サラリーマン「…行ってくれるな?」

ペットアライさん「…うぅ…ぅううううぅぅぅっ…!」ダキッ ギューッ

ペットアライさんは、中年サラリーマンに泣きながら抱きついた。

ペットアライさん「なんで、こんな突然…!ぐすっ…!突然こんなこと言われて…!ひぐっ…!お別れなんて嫌なのだああっ…!」グスグス

中年サラリーマン「クリーナ…っ」

ペットアライさん「アライさんはぁ…!飼い主と、クリーノと、ずっとずっと一緒に、楽しく暮らしたいのだぁっ…!」スリスリ

中年サラリーマン「ぁ…ぁああ…クリーナぁ…」ブルブル

ただのペットであるはずの、このアライさんは、この独身中年男性にとって…

いつの間にか、まるで手のかかる実の娘のような存在となっていた。


160 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:48:02.10 ID:gwurQYz8O
ペットアライさん「飼い主に辛いことがあったら…アライさんが慰めてやるのだ!」

ペットアライさん「飼い主が病気や怪我で困ったら…!アライさんが看病してやるのだ!」

ペットアライさん「だから…ずっとずっと、一緒にいるのだ…飼い主ぃい…!」

中年サラリーマン「…うううぅぅっ…!」

これからの人生…
果たして、この独身男性の孤独をまぎらわせてくれる存在が現れるだろうか。

この独身男性に、微笑みかけてくれる者が現れるだろうか。

この独身男性の帰りを家で迎えて、『おかえり』と声をかけてくれる存在が現れるだろうか。


162 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:53:00.59 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…っ…!なあ、クリーナ…」

ペットアライさん「何なのだ」

中年サラリーマン「これから毎日…散歩無しでもいいか?」

中年サラリーマン「一日中、ずっと家の中だけで暮らすこと…できるか…?」

ペットアライさん「…そんなの、嫌なのだ…。退屈で死にそうなのだ…」

中年サラリーマン「俺はもう、お前と一緒に暮らすなら…、そういう飼い方しか…できない…」

ペットアライさん「…」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「何でなのだ…。さっきは、決まりだって言ってたのだ…!」

中年サラリーマン「お前が死んだと、みんなに言うしかない」

ペットアライさん「…」

ペットアライさん「…飼い主…ほんとのことを話してほしいのだ…」

ペットアライさん「どうして飼い主は、アライさんと一緒に暮らせなくなったのだ…?」

中年サラリーマン「…」
163 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 21:57:50.93 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…お前と一緒に暮らしてると…。みんなに変態扱いされるんだ…!イジメられるんだよ…!」ブルブル

ペットアライさん「の…ぁ…?」

中年サラリーマン「最近、ご近所さん達が俺に冷たいのは!変態扱いされるのは!イジメられてるのは!全部!お前のせいなんだよクリーナ!」

ペットアライさん「っ…」

中年サラリーマン「…もう、こんな毎日嫌だ…!お前なんか、こんなに大きくなる前に、さっさと楽園に送ってればよかった!」

ペットアライさん「かい…ぬしぃ…」ブルブル

中年サラリーマン「お前のせいで!人生台無しになるのは嫌だ!出ていけよぉ!」

ペットアライさん「だ…だったら…なんで飼い主は…アライさんを育ててくれたのだ…!大きくなっちゃダメだなんて…」ブルブル

ペットアライさん「だったら、最初から…!」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「っ…うぅぁあああっ…嫌なのだあ…!飼い主さんと、お前と会えなかった人生なんて想像したくないのだぁっ…!」

中年サラリーマン「…」
164 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:01:22.10 ID:gwurQYz8O
ペットアライさん「のぉああああああーーーーーんっ!のぉおおおおーーーーーーーぁあああーーーーーーんっ!」ビエエエエン

ペットアライさん「なんなのだああああああ!なんで飼い主を虐めるのだああああっ!アライさんの何が!何が悪いっていうのだああああっ!」ビエエエエン

ペットアライさん「わがんないのだああああ!アライさんには人間の考えることがぜんぜん分かんないのだああああああっ!」ビエエエエン

中年サラリーマン「…クリーナ…」ギューッ

ペットアライさん「のぉおおおおおおーーーぁあああああああーーーーーーーーんっ!」ビエエエエン


167 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:05:36.75 ID:gwurQYz8O
ペットアライさんは泣いた。
とにかく泣き続け…

やがて、落ち着きを取り戻した。

…

ペットアライさん「…」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「…アライさんは、もう…ここにいられないんだな…」

中年サラリーマン「…ああ…お別れだ…」

中年サラリーマンは、それでもなお、自分の人生を選んだ。

『人間らしい、普通の、まともな生き方』を選んだ。

ペットアライさん「でも、飼い主…。まだご飯、食べてないのだ」

中年サラリーマン「…」

ペットアライさん「最後に…、アライさんが作ったうどん…食べてほしいのだ…」

中年サラリーマン「…いただくよ」ズルズル

ペットアライさん「…どうなのだ?」

中年サラリーマン「…伸びてるな。柔らかすぎる。…茹ですぎだ」

ペットアライさん「食べるのが遅かったからなのだ!」

中年サラリーマン&ペットアライさん「「あはははははははは!」」ゲラゲラ

一人と一匹は…
楽しかった頃の記憶を思い出していた。


172 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:11:46.69 ID:gwurQYz8O
~翌日~

スーツ男1「アライさん引き取りサービスです。アライさんを楽園にお連れしに来ました」

スーツ男2「よろしくお願いします」ペコリ

ペットアライさん「よろしくお願いしますなのだ!」ペコリ

スーツ男1&2「「!?」」ビクゥ

おじぎを返されたスーツ男達は、滅茶苦茶びびった。

ペットアライさん「どうしたのだ?挨拶するのは当たり前なのだ」コスリコスリ

スーツ男1「…購入証を見せて貰えますか」

中年サラリーマン「…はいよ」スッ

スーツ男2「…2年半…2年半も育てて、これか…!凄いな…!…おほん。それでは、こちらの御輿にお乗り下さい」ガチャッ

スーツ男2は、小さな穴の空いた御輿を開けた。


173 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:20:10.96 ID:gwurQYz8O
中年サラリーマン「…」カキカキ

中年サラリーマンは、説明を聞いた後、誓約書にサインした。

スーツ男1「ありがとうございます」

ペットアライさん「飼い主!」ダキッ ギューッ

ペットアライさんは、中年サラリーマンに抱きついた。

中年サラリーマン「クリーナ…?」

ペットアライさん「今までずっとずっと…ご飯くれて、散歩に連れって、遊んでくれて…ありがとうなのだ」

ペットアライさん「アライさんは、これから楽しいところに行くらしいけど…」

ペットアライさん「飼い主とクリーノと、みんなで一緒に暮らしたこと、絶対に、一生忘れないのだ」ニッコリ

ペットアライさん「飼い主さーん♪スキスキなのだ♪」スリスリ

中年サラリーマン「う…ぁあああっ…」ブルブル

ペットアライさん「…それじゃあ、さよならなのだ、飼い主!…いつかまた会おうなのだ!」ペタペタ

ペットアライさんは、御輿に乗り込んだ。

中年サラリーマン「…ああ。さようなら…。こっちこそありがとう、クリーナ」

スーツ男1&2「「では、出発します」」スッ

御輿の中の声『出発進行!なのだー!』

スーツ男達は、御輿をかついで運び、トラックへ積んだ。

そしてトラックは、中年サラリーマンの家から走り去っていった。


中年サラリーマン「…クリーナ…」

中年サラリーマン「…これで、よかったんだ…」


179 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:26:54.00 ID:gwurQYz8O
やがて、トラックが建物の前で停まった。

スーツ男1「よし、運ぶぞ」ザッザッ

スーツ男2「オーエス、オーエス」ザッザッ

スーツ男達は、建物の玄関の前に来た。

スーツ男1「どうもー。アライさん引き取りサービスです」

玄関の扉が開き、男達は中に入っていった。

~??の部屋~

御輿の中の声『うおーい!使者さん!ウンチしたいのだ!トイレはこの三角のでいいのか!?これにしていいのか!?』ガタガタ

スーツ男1「下ろすぞ」スッ

スーツ男2「ああ」スッ

スーツ男達は、テーブルの上に御輿を下ろした。

御輿の中の声『何とか言うのだ!あーもう漏れる!早くー!この三角のにするからなーっ!』

御輿の中の声『うぅーっ!』


183 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:31:50.25 ID:gwurQYz8O
御輿の中の声『ふはー…気持ちよかったのだ~…。もしトイレじゃなかったらごめんなさいなのだ』

スーツ男1「…」スッ

スーツ男1は、御輿に空いた小さな穴へ、何かのスプレーを突っ込み噴射した。

御輿の中の声『ん?何なのだこれ?いいにおいなのだー』

スーツ男1「…」プシュー

御輿の中の声『…ふわあああー…なんか疲れたのだ…長旅したからなのだー…』

スーツ男1「…」プシュー

御輿の中の声『おやすみなのだ、飼い主…。…ぐがー…ごがー…』zzz

…御輿の中からイビキが聞こえてきた。

スーツ男達はガスマスクをつけている。

スーツ男1「開けるぞ」ガチャッ


ペットアライさん「のだぁ…のだぁ…」z
zz

スーツ男2「完全に寝ているな。よいしょ」ガチャッ

スーツ男2は、ペットアライさんをベッドに寝かせ、手足の付け根を金具で拘束した。


184 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:36:00.03 ID:gwurQYz8O
白衣の男1「お疲れ様です」スッ

白衣の男2「後は私達がやります」スッ

スーツ男1「乙でーっす!いやー、すげーのが見つかったな!」スタスタ

スーツ男2「お宝なんてもんじゃない…奇跡だよこんなの」スタスタ

スーツ男達は部屋から出ていった。

白衣の男1「…」プスッ

白衣の男1は、ペットアライさんになにかを注射した。


187 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:40:17.27 ID:gwurQYz8O
そして…

白衣の男2「…」ギュイイイイーーーンッ

白衣の男2は、回転丸ノコを取り出した。

白衣の男2「右腕、いくぞー」ギュイイイイーーーンッ ズバババッバババババァ

ペットアライさん「のだぁ…のだぁ…」ズバァボトッ ドクドク

薬で眠らされているペットアライさんの右腕は、本人が気づかないまま切断された。

血管収縮剤を投与されていたせいか、出血はさほどでもない。

白衣の男2「止血!縫合!」ギュギュ

右腕の切断面は縫い合わされ、止血された。


188 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:43:13.61 ID:gwurQYz8O
白衣の男2「次は左腕だ」ギュイイイイーーーンッズバババッバババババァ

ペットアライさん「うーん…くりーのぉ…zzz」ズバァボトッ ドクドク

左腕も切断され、縫合された。

次は右脚が…

次は左脚が切り落とされた。


ダルマアライさん「のだぁ…のだぁ…」zzz

白衣の男1「施術完了しました」

スーツ男1「サンキュー!」スタスタ

スーツ男2「こいつはすげえぞ!きっと過去最高額だな」スタスタ

ダルマアライさんは、どこかへ運ばれていった…。


195 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:49:49.73 ID:gwurQYz8O
…

~???~

ダルマアライさん「ふわぁ~…むにゃむにゃ…」

ダルマアライさん「!?な…なんなのだ!?ここ…」キョロキョロ

ダルマアライさん2「うぅ…」

ダルマアライさん3「ああ気持ち良かったのだぁ…」ケラケラ

部屋には、手足のないアライさんが並べられていた。

排泄物が勝手に流れていく洗浄システムのついた台に乗っけられている。

ダルマアライさん「手足が…あ…あれ…?」

ダルマアライさんは、自分の手足がないことに気付いた。

ダルマアライさん「何なのだ、これっ…ひっ…!ぁああ、わ、悪い夢か?夢なのだ!」ハァハァ

ダルマアライさん「ゆ、夢なら早く醒めて欲しいのだ…はやく…はやく…!」ブルブル

ダルマアライさん「き、きっとこの夢が、覚めたら…」ブルブル

ダルマアライさん「いつもみたいに、優しい飼い主さんが、アライさんを散歩に連れていってくれるのだ…!」ブルブル


197 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 22:55:06.70 ID:gwurQYz8O
従業員「…」ガラガラ

やがてこの施設の従業員が、ケージを持ってやってきた。

成獣アライグマ♂「ハウハウ」ガシャガシャ

ダルマアライさん「く、クリーノ?いや、違うのだ…。においが全然違うし、クリーノはこんなに大きくないのだ…」ブルブル

従業員が、アライグマの手綱を掴み、ケージを開けた。

成獣アライグマ♂「キュルルルルルゥ!」ガバッ

ダルマアライさん「のあああっ!?」

成獣アライグマ♂は、ダルマアライさんに抱きつき…

ダルマアライさん「な、何するのだ!?お前…まさか!?」

成獣アライグマ♂「キュルルルルルゥ!」ズンッ

ダルマアライさん「のぉぉぁあああっ!」ビクン

ダルマアライさんの股間へ、何度も激しく腰を打ち付けた。


201 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 23:01:38.35 ID:gwurQYz8O
この成獣アライグマ♂は…

『アライグマ引き取りサービス』で回収された個体。

年齢と性格テストによって業者に選りすぐられた、『長く、大人しく』生きるアライグマだ。

ダルマアライさん「はぁ…はぁ…」

…

それから2ヶ月が経った。

妊娠ダルマアライさん「かい…ぬしぃ…かいぬしぃ…」オナカポッコリ

ダルマアライさんにとっての『悪夢』は、醒めることはなかった。

いや、むしろ本当に悪夢を見ている最中の方が、このアライさんにはまだ幸せといえるだろう。

妊娠ダルマアライさん「楽園…楽園はどこなのだ、かいぬしぃ…いつ…いけるのだぁ…」

妊娠ダルマアライさん「そんなに…こんなに…アライさんが憎かったのかぁ…かいぬしぃ…」


203 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 23:04:56.94 ID:gwurQYz8O
『アライさん引き取りサービス』。

その目的は、ただ回収して殺処分するためではない。

飼育されたアライさんの中から、『飼いやすい』個体を選別し…

ペットアライちゃん工場へ売却することもまた、重要な役割である。


きっとこのダルマアライさんが産む子供は…
飼い主に、長く可愛がって貰えることだろう。

そしていつの日か、母親のように…
ペットアライちゃん工場へ戻ってくるだろう。


このように…

大きくなると狂暴になり飼いづらいといわれるアライさんは、
様々な工夫によって、飼いやすくなるように品種改良されているのである。


205 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 23:05:32.64 ID:gwurQYz8O
つづく


199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 22:58:22.16 ID:yJ7y8JdUO
今までで一番の鬱回だわ……
御手洗には何とも思わなかったのに……


200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 23:01:22.98 ID:P8Ee2AfMo
御手洗も可哀想だったがあっちは自立してたし人妻だったしな
この子は勝手に交尾したりもしてないし純粋に子供みたいなものだからキツい


204 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/19(金) 23:05:30.21 ID:m/PWp4ie0
品種改良が進んだ小型犬みたいに
大きくならないアライちゃんとかいたら飼いたいな~


209 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/01/19(金) 23:06:31.33 ID:gwurQYz8O
204

年齢に比べて体が小さいほど、各工場での『競り』の価格は高くなります





最終更新:2018年02月19日 20:16