アライちゃんと不都合な真実

612 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 22:25:27.84 ID:f0JhfQt9o
雑誌の編集部では、今回の特集タイトルを、あらかじめネットや広告で広報した。

できるだけ多くのアライちゃん飼い主に、関心を持ってもらうためだ。

職員1「これで、今回は大注目を浴びそうですね!」

編集長「ああ!今大ブームのペットアライちゃんの記事!しかも、皆が気になっているであろう楽園の真実を暴くんだからな!」

記者「取材だ取材だ!」


…数日後…

職員1「編集長!大変です!」

編集長「どうした」

職員1「全国のペットアライちゃん飼い主達から、物凄い数の苦情が寄せられています!手紙や電話、公式サイトへの電子メールなど…手に負えません!」

編集長「な…なんだと!?苦情!?いったいどうして!!我々は彼らのために真相究明しようとしてるんだぞ!」


613 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 22:35:19.00 ID:f0JhfQt9o
編集長「い…一体どうして!?」

職員2「どうやらSNSで我々の特集タイトルが拡散されたらしく…。アライちゃんの飼い主達がそれをよく思わなかったようで、抗議活動をしているようです!」

編集長「苦情って…どんな?」

職員1「それが…。『アライさんの自由を奪うな』『楽園に足を踏み入れるなど言語道断』『余計なことをするな』などと…」

職員2「ようは、『楽園の真実を暴く特集をやめろ』という旨の抗議ですね」

編集長「フザけている…!いかれてるのか!?楽園だなんて、あんなデタラメを真に受けて!そんな物凄い勢いで苦情や抗議をするなんて…!」

編集長「…そういうのは、一部のイカレポンチだけなんだろう?本当は大多数が楽園の真実を知りたがっているんじゃないのか!?」

職員1「お便りによると、楽園の真実を知りたがっているのは、ペットアライちゃんを飼っていない層がほとんどです」

職員2「抗議しているのは、ペットアライちゃん飼い主の大多数…ということです」

編集長「む、ぅ…!しかし、それだけ関心が集まっているということは、逆に雑誌がたくさん売れるかもしれない…!」

編集長「特集は続行だ!イカレポンチ共のことなんて気にかけてたまるか!」


615 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 22:41:56.52 ID:f0JhfQt9o
それからも、記者は取材を続けた。

アライさんを『楽園送り』にする車を見つけ、その後をひそかに追跡したところ…

ある、塀で囲われた大きな建物の中へ車が入っていくのが見えた。

この建物が何なのか?
記者が調査をしたところ…

『アライセンター』という建物の名前だけが判明した。

どんな施設なのか?
中はどうなっているのか?

記者は様々な手段でアポを取ろうとしたが…

一切取材を許可しては貰えなかったようだ。


617 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 22:45:31.65 ID:f0JhfQt9o

~編集部~

編集長「アライセンターのことはまだ何も分からないのか?」

記者「はい…。正攻法では無理ですね。となれば、『元職員』や『元関係者』を探し出して聞くのが一番良いでしょう」

編集長「そうだな…。そこの元関係者を探し出して、なんとか取材をしてみるぞ!」

その時。

電話『プルルルルルルルルルルル』

編集部の電話が鳴った。

編集長「はい、もしもし。編集長です」ガチャッ


618 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 22:51:11.55 ID:f0JhfQt9o
スポンサー企業『もしもし。こちら、●●株式会社の広報担当です』

この雑誌のスポンサー企業からの電話であった。

編集長「はい、いつもお世話になっております。どのようなご要件でしょうか?」

スポンサー企業『あのさ、おたくの雑誌で今やろうとしてる特集、今すぐやめてくんねーかな?』

編集長「え」

スポンサー企業『じゃなきゃおたくんとこのスポンサー降りるよ?』

編集長「ど…どういうことですか!!」

スポンサー企業『うちんとこに、物凄い数の苦情や迷惑メールが来てんの。雑誌の特集をやめさせろって』

編集長「!?」

スポンサー企業『どうすんの。やめるの、やめないの?今すぐ答えて』

編集長「ど…どういう…ことだ…」

職員2「こ、こっちからも他のスポンサー企業から、特集をやめろっていう電話が!」

職員3「こっちからもです!」

記者「ど…どうなってるんだこれは!!」


619 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 23:01:12.12 ID:f0JhfQt9o
職員4「どうやら、楽園送りカーを我々が追跡してるのを撮影した者がいるらしく!SNSで拡散され、アライちゃん飼い主たちがスポンサー企業へ迷惑行為やサイバー攻撃を仕掛けているようです!」

職員5「車のナンバープレートまで晒されてます!社員の個人情報までぇ!!」

編集長「い…異常すぎるだろ!!なんで、なんでこんなことをするんだ!!!我々は、ただ…!」

編集長「ペットショップの嘘と欺瞞に騙されている飼い主達へ、真実を教えてあげようとしているだけなのに…!」

スポンサー企業『どうすんだよゴラァ!!』

編集長「ひいィイ!!」

編集長は直感で察した。
このままでは、編集部は常に迷惑行為を受け続け…
取材も妨害され…
ろくな記事が書けないまま、無理矢理出版しても。
ネットの呼び掛けで不買運動とかが行われるのであろうと。

そんな最低の結果に加え、スポンサーに離れられたとあっては破滅どころの話ではない。

編集長「や、やめますやめます!特集やめまぁあああす!声明もネットで出しますから!!!!」

スポンサー企業『そりゃ良かった。2日以内に頼むよ。じゃ、今後もごひいきに』ガチャッ

編集長「…分からない…。全く分からない…。一体、なぜこんなことに…」


621 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 23:07:42.56 ID:f0JhfQt9o
結局、アライちゃん飼い主のために楽園の真相を究明するという特集は…

よりによって、メインターゲットであるはずのアライちゃん飼い主達の手によって、終演の幕を引かれたのであった。


~編集部~

職員1「あれからすっかり、迷惑行為も抗議活動も無くなりましたね…」

職員2「ネットニュースでは、『また』楽園の真相を追求するマスコミが封殺されたと報じられてますよ」

編集長「…『また』?」

職員2「つまり、楽園の真相を暴こうとして、アライちゃん飼い主たちに潰されたメディアは、我々以前にもこれまでにいくつもあったということですね」

記者「どういうことなの…」

編集長「…アライちゃんの飼い主達は、みんなそれだけ強く楽園を信じてて、楽園へ送り出したアライさんの幸せを願ってる…ってことなのか?」

記者「ピュアすぎるだろ…。飼い主たちはマジで誰も、楽園のことを疑ってないのかな…」


624 : ◆19vndrf8Aw [saga]:2018/03/13(火) 23:10:46.85 ID:f0JhfQt9o
~オマケ~

記者「そういや、結局アレはどういう意味だったんでしょうね?」

編集長「アレ?」

記者「取材したときに聞いた…『アライちゃんを育てることは、従来のペット飼育とは本質的に違う』」

記者「『本質的には、蚕の飼育が最もアライちゃん飼育に近い』…って言葉の意味ですよ」

職員1「アライちゃんと…蚕?全く共通点ないですよね…」

職員2「実はたいした意味はないんじゃないか…?」

記者「アライちゃんの飼い主たちは、みんな何考えてるかさっぱりわからん…」


続く





最終更新:2018年05月25日 23:43