生まれ着いての邪眼持ちであり、本業は邪眼術といえる。
邪眼が初めて発動したのは17歳の時だが、本人はそのことをあまり語りたがらない。
また、魔術師らしく(?)指輪を山ほど手につけているが、何故か左手の小指だけは指輪をつけていない。
↓ ↓ さて長い過去話が始まりますよ ↓ ↓
幼い頃(10歳前後)、両親の顔も、名前も、自分自身が何者すらもわからない状態で色街に捨てられていた。
ボロに身を包み、盗み等の軽犯罪に手を染め、その日その日をただ生き抜いていくだけの、
獣じみた荒んだ日々を送っていたが、12歳前後になったある日、とある娼婦に拾われる。
その日から、彼女の働く娼館で自分も働きつつ、色々なことを学んでいった。
真っ当ではなくとも“普通”に生活する為の基本的な知識であり、ある程度の読み書きであり、
共同生活の知恵であり、自分の外見を効率的に利用することであり、相手を篭絡する為の手練手管であり、
食事の作り方であり、掃除の仕方であり、笑い方で、怒り方で、泣き方で、喜び方で、喜ばせ方で、
そして誰かからの愛情であり、誰かへの愛情であった。
与えられる沢山の物を享受し、自身から与えることも少しずつ憶えていく。
それは紛れもない幸せだった。
だが、幸せにまどろむ日々はあっさりと崩れ去った。
それも、他ならぬ“ヤシュム自身の手で”奪われたのである。
ヤシュムが17歳前後になったある日。
色街に出入りしていた厄介な連中に、彼女が誘拐されてしまった。
彼女を助ける為、館を飛び出したヤシュムだったが、数と力にモノを言わせた連中に、目の前で彼女を傷つけられてしまう。
ヤシュムが自身の非力を呪ったまさにその時、不運か、幸運か、邪眼が初めて発動してしまう。
眼は果たして、ヤシュムが憎いと思ったものをみな蝕み、生きながらに腐り落とした。
しかし、制御できない力は彼女を助けたいと言うヤシュムの願いとは裏腹に彼女をも蝕み、遂には彼女をも殺してしまったのだ。
そうして、色街から逃げ出したところを享受者に拾われ、力の制御方法を学び、自身も享受者となったのである。
「彼女は自分の母で、姉で、初めての友人で、恋人」
昔のことは語りたがらないが、もしもその彼女の事を聞かれれば、今のヤシュムはこう答える。
もう失わない為に出来る限り心を閉ざし、他者と深く関わることを拒みながら。
与えられた全てを壊した自分自身を、何よりも深く憎みながら。
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