<  少年が見た夢  >




むねが いたい

えぐられるような痛み



違う



なにかが むねを えぐっている




肉の音 嫌な音 たとえられない激痛
水音 ぬめり気のある水音 赤い水音

ああ 人間は こんなにも頑丈なのか
はやく はやく 一秒でも早く
終わって 終わってください
ただ終わりに向かうだけのこの時間を 終わらせて



いいや
待って


終わらないで



いたい
くるしい
もう
いきが
できない



お願い
終わらないで
どんなに痛くても
どんなに苦しくてもいい


終わらないで 終わらないで
俺が ここでいなくなったら
なにもかもなくなってしまうじゃないか



手を伸ばした
拘束された腕の 指先が少しだけ動いた
唇が何かを告げた
声はもう出ない
息のようなものが血と一緒に漏れただけ



ああ
終わってしまう
お願い 終わらないで
痛みが消えていく
嫌だ 終わらないで



神になんて祈らない
じゃあ何に祈る?
なんでもいい 悪魔でも 化け物でもいいから




俺を終わらせないでください




……今見えたものは、なに?
ああ、また、記憶が薄れてゆく……

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最終更新:2018年04月04日 10:06