- 07-180 :名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 19:55:44.70 ID:II8I3tdr
- 「ねえ、ちょっと練習台になってくれない?」
声を掛けられ振り向けばそこに居たのは、古鐘 瑠璃香(ふるかね・るりか)だった。
外見は良いが、変人、残念な子、痛い子、重度の中二病など周囲から認識させる関わらない方に越したことはない女子。
それが何故僕の家の前に居るのだろうか?
「はい?」
取りあえず返事はして見る。
「答えは聞いてないわ!」
「ええーっ!?」
やはり周囲の認識通り訳が解からない人だ。
「上林 颯太(かみばやし そうた)君、あなたは選ばれたの」
彼女はいきなり僕の腕をつかむと自分の方へ引き寄せようとした。
いきなりだったので僕は抵抗し腕を振りほどこうとしたのだけど…
バチッ!
スタンガン!? 僕は腹部に焼けるような痛みを受け動けなくなる。
更に彼女はスタンガンを僕に押し付けた。
「や、止め・・・」
バチッ!バリバリバリッ
痛みにのたうつ様に僕はそのまま気を失った。
薄れゆく意識の中、古鐘瑠璃香の表情の見えない顔だけがやけにはっきりと見えていた気がする。
- 07-181 :名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 19:58:06.55 ID:II8I3tdr
- 目が覚めるとそこは薄暗い室内で僕はベッドに寝かされていた。
不思議と気分はすっきりとしている。
「目が覚めたようね、もう帰って良いわよ」
聞えた声の主はやはり瑠璃香だった。
薄暗いせいかその表情は先程にまして見えない。
「帰って良いって、いったい何なんだよ」
僕は文句を言いつ掛けてある包布をはがして身を起こした。
「あっ」
包布をはがして気が付いたが、僕は服を着ていなかった。
下も全部だ。
慌ててまた包布で身体を隠す。
「ちょっと、なんで僕裸なんだよ!」
「私の練習台になってもらったから」
しれっと瑠璃香が答える。
「練習台って何の?」
「移植手術」
「はいぃ~っ?」
信じられないと言うか有りえないだろ?
人の体を勝手に手術するとか。
「成功したから今日は帰って良いわよ」
「いや、まって。いったい何の移植手術したの?」
「膣よ。まあ卵巣とか子宮も全部だから女性器と言った方が解かりやすいかしら」
「はいぃぃ!?」
慌てて股間を確認するが、確かにそこに見慣れないもがあった。
しかも逆に何時もあるはずの大事なアレが消えていたのだ。
「僕のムスコがない!」
「相互移植だから」
「相互移植って?」
「なんで解からないのかしら?颯太君の男性器と莉乃(りの)さんの女性器を交換して移植したのよ」
「ええっ!莉乃だって!?」
莉乃は僕の双子の姉だ。
似ていないなどと散々言われるが、二卵性の双子なんて普通の兄弟がそっくりだったりしないのと同じように似てないものだ。
ましてや高校生にもなれば男女の違いはどうしようもない。
- 07-182 :名無しさん@ピンキー:2011/04/18(月) 20:00:37.33 ID:II8I3tdr
- 「いちいち驚かない。莉乃さんなら隣のベッドに寝てるから」
見れば隣にはもう一つベッドがあり、そこに寝かされている女の子、莉乃が居た。
莉乃は気がついてはおらず、ただ眠っている様だ。
「じゃあ、これって莉乃のあそこ?」
もう一度自分の股間を確認してみる。
どう見ても女の子だ。
恐る恐る指を伸ばすと、そこには確かに割れ目が存在していた。
「問題なく定着しているのは確認済みよ。もう良いからさっさと服着てくれるかしら?」
瑠璃香に言われて慌てて手を離す。
少々恥ずかしい。
「いや、その前になんでこんな事したの?」
「説明が面倒だわ」
「いや、人にこんな実験台みたいな事をしておいてそれは無いだろ?」
「じゃあ、あなたに理解出来る様に説明してあげるけどips細胞は知っているわよね?」
「ごめん、知らない」
「なんでそんな基礎も知らないの?まったく。だから面倒なのよ」
「いいから教えてくれないか?」
「もう、思いっきり簡単に言うとね、私は超絶的な再生術を完成させたのよ」
「はあ?」
「はあ?、じゃないわよ」
瑠璃香の言う事は説明になっていない。
実際に僕の股間がこうなっているのだから、なんかそう言う凄い事が出来るのは事実なんだろうが。
「それでなんで僕たちを」
「やってみたかったから」
今度は即答だ。
「は?」
思わず聞き返した。
「あなた達って丁度良かったのよ。双子だから遺伝子の入れ替えとか都合が良かったし。いくら万能でも幹細胞から異性の性器官を作り出すのって無理があるのよ」
やっぱり何が言いたいのか解からない。
まあそれは諦めた。今は一番重要な事を聞くべきだ。
「あのさ、重要な事聞くけどコレって元に戻せるの?」
「戻す訳ないじゃない」
また即答だ。
僕は言葉を失う。
瑠璃香は世間の評価通りの、変人で残念な子で痛い子で重度の中二病なんて奴じゃなかった。我儘で利己的で自己中な奴で間違いない。
もっと悪いのはこんな事が出来てしまう得体の知れないその才能がある事だ。
冷静に考えてここはどうするべきか?
莉乃が目覚めたら更に面倒になるに違いない。
もう嫌になって来るよ。
こんな時だけ神様に助けを求めても罰は当たらないかな。
神様じゃなくても良い、誰か何とかして下さい。
- 07-188 :名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 16:49:24.37 ID:0akJRN12
- いけない。
あまりの事につい天を仰いでしまった。
別に信仰心が無い訳じゃないが、今はそんな事をしていてもこの事態が終息しないのは解かっているんだ。
莉乃はまだ起きていない。
瑠璃香に詰め寄るなら今のうちだ。
「あの、戻したくないって言うだけだよね?戻せないんじゃなくてさ」
僕の質問に瑠璃香はこちらを睨みつけてきた。
「あのね、理解が出来てないの?私が戻さないって言ったらそれで完結するの。同じ様な質問は繰り返さないでくれる?」
やっぱりそう言う反応か。
「いやあ、古鐘さんは天才なんだし元に戻すなんて簡単に出来るんだろうなって思っただけだよ」
また睨みつけてきた。下手に出てるつもりだけど何が悪いんだ?
「あなたってつくづくね。そんな簡単にできる事ならやる価値があると思うの?」
うわ、もうさっきからあつかいが面倒だ。
このままだと埒があかない。こうなったら多少強引にここは拝み倒すか。
僕はベッドから抜け出し、床に降りると正座をし手を着き頭を下におろした。
言う所の土下座と言うやつだ。
「すいません。お願いですから戻して下さい。ものすごい困るんです」
素っ裸で土下座ってかなり恥ずかしいぞ、これ。
「無様ね。見苦しいわ」
どの口がその台詞をのたまう。
「本当にお願いしますよ。切実なんです。助けて下さい」
瑠璃香は眉を顰めてこちらを見据えている様だ。頭を下げているので見えないが、視線をそう感じる。
「もしかして、私が戻すって言うまでそれ続けるつもり?」
ああ、続けるよ。
「戻してもらえるなら、ずっと続けます。お願いします」
このまま、押し切ってやる。
「…颯太うるさい……」
う、今の声は莉乃だ。
恐る恐る顔をあげて見ると、ベッドの上でもぞもぞしている莉乃の姿が見える。
まだ寝ボケている様だけど。
- 07-189 :名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 16:50:31.25 ID:0akJRN12
- 「あら、莉乃さんも目が覚めた様ね」
「ん~ …お母さん?」
瑠璃香の声に反応し身を起こす莉乃。呑気に伸びをしてあくびを噛みしめている。
「あれ?ここどこだっけ? って楓太あんた何やってるのよ!」
「ぐふっ」
いきなり枕が飛んできた。
「女の子の前で裸って何考えてるのよ!」
莉乃は考えるよりも先に手が出る。特に僕に対しては容赦ないんだ。
取りあえず何か言っておかないと今度は飛び蹴りでも来そうだし。
「いや、莉乃、大変なんだって」
「何が大変だっての、変態!」
「やれやれね。姉弟そろってうるさいわ」
瑠璃香が相変わらずな物言いで言葉をはさんできた。
「おや?瑠璃香ちゃんだったか」
はえ?莉乃は瑠璃香を知っているのか?
莉乃は僕とは違う高校に通っているから面識は無いと思ったんだけど。
「そう言えば学校帰りに颯太の事で話があるって、瑠璃香ちゃん家にお呼ばれしてお茶飲んでたはずなんだけど…」
状況が分かりやすい独白をありがとう。
「莉乃さんも用事は済みましたから、お帰り頂いて良いですよ」
「用事って颯太の事?」
「そうです」
「瑠璃香ちゃん行動早いわね。
私はてっきり颯太に気があって姉である私に相談に来たって思ってたのに。
なに?もう告白しちゃったの?」
莉乃、何を勘違いしてるのさ。
瑠璃香の用事って言うのはそんな事なんかじゃないぞ。むしろ莉乃にも関わる重大な事態だよ。
「あのさ莉乃、ちょっと布団はぐって見てくれない?大変な事になってるから」
「なによ?私も裸だって言いたいの?生憎と颯太に見られても何とも思わないから」
まあ、そうだろうさ。莉乃は僕を男として見てないから、風呂上がりに平気でショーツ一枚で僕の前でうろつくし、僕が先に風呂に入っていると後から入って来て僕を追い出したりするしね。
- 07-190 :名無しさん@ピンキー:2011/04/24(日) 16:54:34.00 ID:0akJRN12
- 「いいから良く見てみなよ」
ここは莉乃にも驚いてもらおう。
莉乃は包布をめくり自分の身体を覗きこむ。
「ん?何これ?」
自分の股間を見て思わず手を伸ばす。
「っ!! 何これ!? 何これっ!!」
見慣れないものと、そこに触れ伝わって来る感触に取り乱している。
「それは陰茎と陰嚢よ」
見かねた瑠璃香が説明をする。
「陰茎?陰嚢?」
「面倒だから結論だけ言うわ。そこにあるのは颯太君の男性器よ」
聞いた莉乃の顔が一瞬固まったかと思うと、どんどん赤みを増して行く。
そして、その身体が宙を舞った。
「ぐぁっ!」
「なんでこんな事になってるのよ~っ!」
見事なドロップキックだ。死ぬ。蹴られたの背中じゃなかったら死んでるよ。
「なんで僕に当たるのさ、やったのは僕じゃなくて古鐘さんだって」
「うっさい! あんたが関係してる事なんでしょ、戻しなさいよ」
これ完全に僕の話聞いてくれないパターンだ。アプローチの仕方間違えた。
ちゃんと興奮させないように説明しておくべきだった。
「莉乃さん、あなたもなの?」
やれやれと肩をすくめる元凶の瑠璃香。
戻してもらいたいなんて当たり前だろう。
「仕方がないわね。交換して終りにする予定だったけど、実験検証もする事にするわ。
追って連絡するから今日はもう帰って良いわよ」
だから、解決になって無いって。
「それって戻してもらえるって事なのかな?」
「最終的にはそうなるプランね」
取りあえず元には戻してもらえるんだ。良かった。
「最終的?今すぐ戻しなさいよ」
莉乃が噛みつく。
「今は無理よ。準備が足りないわ」
しれっと答える瑠璃香。
その態度に莉乃はわなわなと震えている。流石に他人に手を上げるのは堪えてる様だけど、
結構な仕打ちだから引っ叩くぐらいしても良いんじゃないかと思う。
でもそんな事をしたら、大変な事になりそうだ。
「そう、今は戻せないってわけね。分かったわ」
莉乃の表情と声が引き攣っている。
「莉乃さんは物分かりが良くて助かるわ。私は他に用事があるからこれで失礼するわ」
瑠璃香はそう言い残すと、今度こそさっさと部屋を出て何処かに行ってしまった。
「なにあいつ?」
まずい、莉乃本気で怒ってるよ。
「ちよっと颯太!あの瑠璃香って娘いったい何なのよ。なんでこんな事になってんの!?」
「いや、僕も良く知らないんだけど。学校では悪い意味で有名人だよ。変人で残念な子で痛い子で重度の中二病と言った感じで」
「確かにろくな娘じゃなさそうよね」
「それで、これも僕には良く解からないんだけど、あの娘は何だか凄い才能があって僕と莉乃のあそこを交換しちゃったらしいんだ」
「だから、なんでそうなるのよ?」
「いや、知らないよ」
この後も次々と莉乃に質問攻めにされたが、僕だって解かる訳無いじゃないか。
まだまだ窮地は続きそうだよ、まったく。
最終更新:2012年01月24日 10:17