04-298 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/21 07:09 ID:0I4OU8dD
トンネルをひとつ・・・またひとつと抜けるたび車窓に映る景色に緑が増えていった。
東京発の特急電車に乗って1時間、もうすぐ懐かしい故郷に着く。指折り数えて待ち望んでいた帰省、だが今回の帰省は俺が望んだものではなかった。
昨日携帯電話に飛び込んできた母の声、それは長年兄弟のように育ったあいつ――木村明(あきら)の突然の死の知らせだった。
兄弟同然で、どこに行くにもいつも一緒そんなあいつが死んだ。その知らせを聞いた時、俺の足は既に故郷へと向かっていた。

俺――伊藤篤志があいつと別れたのは2年前、俺たちが高校へ進学したときだった。
俺たちは15歳になり進路の選択を迫られた。そして俺は東京の進学校を、あいつは地元の高校へ進む道を選んだ。
東京へ旅立つ朝、あいつは笑顔で「またな・・・」と送ってくれた。

「何が"またな・・・"だよ・・・てめえがくたばっちまって・・・」
あいつのことを思い出していたら自然と目頭が熱くなるのを感じた。
(あいつが死んだのをこの目で確認するまで泣いてたまるか。)
俺はそう心に誓い涙を堪えた。
やがて車内に故郷の名を告げるアナウンスが鳴り響く。俺は網棚の上の荷物を降ろし降りる準備を始めた。

ホームに降り立つと突き抜けるような夏の日差しと蝉時雨が俺を出迎えた。東京の照り返しがきつい暑さより幾分ましだが冷房で冷やされた身体には夏の暑い空気は毒だった。俺は荷物を抱え改札まで急ぐと待合室で懐かしい我が家へと電話を入れた。
電話には親父が出た。「元気か」などと他愛のない会話を交わした後、今駅に着いたから迎えに来てくれと伝えた。

04-299 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/21 07:10 ID:0I4OU8dD
親父が迎えにくるまで駅の待合室で待つことにした。
窓から見える街の風景は東京に発った2年前のあの日から何も変わっていない。
駅の正面にある少し寂れたデパート
少し怪しげな雰囲気の漂う飲み屋街
その一角にある少し看板の割れたラーメン屋
コンビになどが建った以外は何一つあの日から変わっていない。

だけど・・・もうこの街にあいつはいない・・・・

考えないようにしていたがそれでも気がつくとあいつのことを考えている自分がいた。
頬を涙が伝う。慌てて手で拭き
(俺は泣いてない・・・泣くのはあいつの死を見届けてからだ)
そう自分の気落ちに嘘をつき親父が来るのを待った。

やがて一台の車が駅のロータリーに入ってきた。
(シルバーのシビック、間違いない親父だ)
傍らに置いた荷物を持ち車に歩み寄ると親父は笑みを見せ俺を迎え入れた。
車での親父との会話はほとんど俺の耳に留まることは無かった。
東京で叔父夫妻に迷惑をかけていないかとか学校はどうだとか今の俺にとってはどうでもいいことばかりで窓の外ばかり眺めていた。
やがて2年ぶりの我が家に着いた。だが今は感傷に浸っている時間は無く、お袋に急かされながら着替え隣のあいつの家へと急いだ。

04-300 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/21 07:11 ID:0I4OU8dD
親類との挨拶もそこそこに俺はあいつの元へと急いだ。
祭壇に飾られた笑顔のままのあいつの写真
そして棺で花に囲まれ眠るあいつがいた。
男にしては綺麗なその顔に手を伸ばすと温かさは既に無く冷たい感触が伝わってきた。
(もう・・・あいつは・・・いない・・・)
そう実感した俺は周りを気にすることなく声を上げて泣いた。それまでいっぱいに溜め込んだ涙が枯れるまで俺はあいつの身体にすがり泣き続けた。

形式どおりの葬儀が終わりあいつの身体すらこの世にはもう残っていない。
親類たちはまだ残って話をしていたが俺はその場にいるのに耐えかね自分の部屋に戻ることにした。
ネクタイを外しベッドに身体を横たえるとまた涙が溢れてきた。

どのくらい時間が経ったのかわからないが俺は電気をつけっぱなしで寝てしまったようだ。
喉が乾き台所に何か飲み物を探しに行こうとした。
そのとき何かが俺を呼ぶような感覚を感じた。

「アツシ・・・・」
今度は確かに俺の名を呼ぶ声が聞こえた。声の主は後ろ――ベッドのあたりだ。しかしこの部屋には俺以外誰もいないはずだ。だがその声は確かに聞こえた。
恐れを振り払い振り向くとそこには純白のワンピースを着た少女が光に包まれ立っていた。その姿は神々しくもあり俺は不思議と恐怖を感じなかった。

「篤志・・・・逢いたかった・・・」
俺の名を呼ぶその少女に"あいつ"を感じた。
抱きしめれば折れそうな華奢な身体、肩まで伸びた美しい黒髪、僅かではあるが胸元で女を主張するふくらみ
そのすべてがあいつとは違っていたがどこと無く面影のある顔、そして何より全身から発する気配は確かにあいつそのもので俺には目の前にいる少女があいつ――明だと理屈ではなく直感でわかった。

04-336 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/06/22 20:37 ID:ziKYY8QK
「ごめんね・・・篤志・・・再会がこんな形になって・・・」
明の目から涙がこぼれ落ちた。しかしその涙は霧散し床にたどり着くことなく消えていった。
俺は首を横に振り明の手を取ろうとした・・・がその身体には触れることが出来ず俺の手は明の手をすり抜けてしまった。

「ごめん・・・篤志・・・僕・・・死んじゃった・・・幽霊なんだ・・・僕・・・」
明自身から語られた幽霊という事実は俺に衝撃を与えた。だがそれ以上に明の姿は俺に衝撃を与えた。
涙で潤む瞳で俺を見つめるその姿は女としての魅力に満ち溢れていた。
ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・
明の姿を見るたびに鼓動が高鳴るのが自分でも判る。だが心の内では理性という名の枷が自分自身に課せられていた。
(なに動揺してるんだ・・俺、こいつは・・・・明は幽霊・・・いや、それ以前に男じゃないか・・・・そうだこいつは男だ、じゃあ何で?)
当然の疑問が頭に浮かんだ。なぜ明は女の姿で俺の前に現れたのか?見当もつかなかった。

「明・・・その格好は・・・」
「ああ、この格好?・・変かな?」
そう言って明はスカートの裾を少し持ち上げおどけてみせた。幽霊だからそんなはずは無いのに明からはふわっと女特有の甘い香りがした気がして俺の心を揺さぶった。

「いや・・・そうじゃなくて、何でお前女になってんだ?」
明は腕を組んで少し考え込み口を開いた
「それは僕にも判らない。僕のお葬式が終わって身体を火葬された後、気がついたらこの格好をしてた」

04-337 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/22 20:39 ID:ziKYY8QK
結局俺は納得できなかったがそれ以上聞くことができなかった。
その後俺たちは時間を忘れて話に夢中になった。お互いの高校についてのこと・・・最近のこと・・・こんな奇妙な再会だったが俺は・・・嬉しかった。

やがて東の空が白み始め鶏の声が朝を告げる頃明の声は少し淋しそうな顔に変わった。

「ごめん、篤志、僕もう行かなきゃ」
明の身体から向こうが透けて見える。どうやら別れの時間がきたようだ。

「また・・・逢えるよな?」
「うん・・・また明日逢おうね。」
その言葉を残し明はこの部屋から完全に消えていった。

気が付くと太陽が高く昇り大量の汗がシャツを濡らしていた。どうやらあのまま寝てしまったようだ。汗にまみれたシャツを脱ぎジーンズとTシャツに着替えリビングに降りていった。
既に家族は朝食を終えていたためトーストとインスタントコーヒーだけの朝食を自分で用意して昨日の事をぼんやり考えていた。
あれは夢だったのか・・・そう思ったがあいつと交わした言葉も、その姿も、妙な現実感があった。そして何より部屋に残っていた香り・・・というか気配のようなものは昨日の出来事が夢ではないと訴えかけていた。
(・・・また明日逢おうね・・・)
確かにあいつはそう言った。俺はそれを信じて夜になるのを待つことにした。

04-338 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/22 20:39 ID:ziKYY8QK
夜になるまで俺は故郷のこの街をぶらぶらと歩いていた。
小学校の近くの駄菓子屋
駅の近くの小さなゲーセン
偏屈親父の模型屋
気がつくとあいつとよく行った思い出の場所ばかり足が向いていた。
だけど頭の中のあいつの姿は思い出の中の少年から昨日見た少女の姿へと変わっていく・・・そしてその少女の事しか考えていない自分がいた。
(俺・・・あいつの事・・・いや・・・あいつは親友以外の何者でもない)
頭に浮かんだ言葉を強引に塗りつぶすように頭を振る。だけど・・・・少女の顔は頭から離れなかった。

夕食を済ませると部屋に戻り夜に備えて早めに寝る事にした。そしてその時も脳裏に浮かんだのは純白のワンピースで微笑むあいつの姿だった。

04-339 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/22 20:40 ID:ziKYY8QK
「・・・し・・・・篤志・・・篤志・・・起きて・・・」
高く清んだ綺麗な声が耳に入る。ゆっくりと目を開けると部屋の天井と白く輝く明の顔が目に入った。

「あ・・・おはよ」
「ふふ・・・おはよ・・・って時間じゃないけど、おはよ・・・篤志。」
そう言って微笑む明の顔は不思議な魅力に溢れていた。
心が痛い・・・もしこの出会いが普通の出会いだったなら迷わずこの少女を抱きしめていただろう。だけど・・・明は・・・。

「どうしたの?」
明が俺の顔を心配そうに覗き込む。前屈みになった明の胸元が目に入り思わず鼓動が高まり顔が紅潮する。

「いや・・・なんでもない・・・うわっ!」
照れ隠しに起き上がろうとして思い切りベッドから落ちてしまった。

「大丈夫?」
「いつつ・・・大丈夫、ちょっと足を引っ掛けただけだ。」
差し出された明の手、それを掴んで俺は立ち上がった。だがそのありふれた行為にひどく違和感を覚えた。
(あれ?俺・・・今こいつの手を掴んだ・・・昨日は触る事すらできなかったのに)
俺の頭は疑問符で埋め尽くされていった。

・・・・ To be continued

04-463 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 06:54 ID:7Uaop11Q
今日と昨日で違う事・・・・判らない。
一体何が違うのか、明に意見を求めようと視線を送ったが明自身判らないらしく首を横に振った。
それにしても判らない事ばかりだ。まず第一に明がなぜ女として俺の前に現れたのか、そして昨日触れることができなかった明になぜ今日触れることができたか、この二つの疑問はひょっとしたら一つの物なのかもしれない。
改めて明を見る。元男、幽霊という色眼鏡を外してみても今の明はかわいいと思う。さっきから明の顔を見るたび鼓動が早くなる。
(俺・・・まさかこいつの事)
不意に明と目が合ってしまった。それだけで心臓か破裂しそうなほど動悸が早まる。

「昨日も聞いたけど何で女になったんだ?」
照れ隠しに思わず疑問を口にしてしまった。明は少し考えるとその口を開いた。

「判らない・・・でもこの姿に不思議と違和感がないんだ。もしかしたらこっちが僕の本当の姿かもね。」
そう言って"クスッ"と笑う明はやはりかわいかった。

言葉につまり話すネタが尽きた俺は明と共に外を散歩する事にした。
月明かりの中二人で川沿いの散歩道を歩く、青白く染まる街の景色が白いワンピースを着た明の姿をより際立たせていた。
夜の涼しい風が火照った顔に心地良い、だがそれでも動悸は収まることは無かった。
(俺・・・やっぱこいつのこと・・・)
自分の心に架けられた枷の鍵は少しずつ、だけど確実に解かれていった。

04-464 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 06:55 ID:7Uaop11Q
「ねえ篤志、この道懐かしいね。・・・・篤志?」
「明・・・」
理性の枷は外れ俺は明の身体を抱きしめた。しっかりと抱きしめたその身体は温かかった。

「ちょ・・・篤志・・・いきなりどうしたんだよ」
「好きだ・・・明・・・放したくない・・・・。」
「篤志・・・僕・・・幽霊で・・・・元男だよ。」
「昨日からずっと考えた・・・・考えたけどやっぱお前の事好きなんだ。」
もと男だとか幽霊だとか、なぜ触れることができたのかそんな事もうどうでもいい。今俺の腕の中に明がいる、ただそれだけで十分だ。
明日にはもう東京に戻らなければならない。だからこそ今はこのまま明を抱きしめていたかった。

「篤志・・・」
返事代わりに明の腕が俺の背中にまわされた。

「ごめん・・・僕・・・嘘ついてた。判らないって言ったの・・・あれは嘘、本当は僕がそう願ったから・・・んん!!」
返事を聞かず俺は明の口を唇で塞ぎ、より強く抱きしめた。

「ん・・・んん・・・んふぅ・・ん・・・あはぁ・・・・・」
重ね合わせた唇から明のぬくもりが伝わる。
(いとおしい・・・)
俺はもうそれしか考える事ができない、こいつが幽霊だとか元男だとかはもうどうでもいい。明と共にある今のこの時間がすべてに思える。

「ん・・・はぁ・・んぅ・・ん・・えっち・・・・」
俺が乳房に手を伸ばすと明は顔を赤らめ俺に抗議した。その顔は幸せで溢れ、その顔を見た俺は明の唇を再び俺の唇で塞いだ。
明の白い首筋にキスをし、背中に回した手でワンピースを脱がしてゆく。明は抵抗することなく少し身体を強ばらせて潤んだ瞳で俺を見つめていた。

04-465 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 06:58 ID:7Uaop11Q
夏の夜の空気に晒された明の裸身は蒼白い月の光に照らされて神々しいまでに綺麗だった。
露になった乳房に手を伸ばし揉みしだく、心地良い弾力の乳房が形を変えるたび明の口からは濡れた声が溢れた。

「ああ・・・う・・ん・・はぁ・・・・あっ・・・あああ・・ん・・ぅん」
舌先で固く膨らんだ乳首を転がす、そのたびに明の身体は震え、そして俺自身のモノも硬度を増していった。
芝生に横たわらせショーツに手を掛けると明は顔を紅潮させ恥ずかしそうにうつむいてしまった。

「綺麗だよ・・・明」
「どこ見て言ってるんだよ・・・・・ばか・・・ひゃ・・・あふぅ・・・っ・・あああ」
俺が秘唇に口をつけると明は身体を弓なりにのけぞらせ艶っぽい喘ぎ声をあげる。その声は俺の欲望を加速させた。

「もう・・・我慢できない・・・ひとつになりたい」
耳元でそっと--優しく呟くと明は無言でコクンと頷いた。

04-466 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 06:59 ID:7Uaop11Q
俺のモノを秘唇にあてがうと明は手をキュと握りこれから来るであろう痛みに身構えている。俺は大丈夫だからと首筋に軽いキスをして腰を明の最奥に向け進めた。

「ひっ・・・くふぅ・・・はぁぁ・・あっ・・・・あああああ」
肉壁の抵抗を掻き分け入った明の膣は温かく俺に今までにない快感を与え俺はそのままいきそうになるのを必死で押さえた。
繋がったまま明の頭をそっと撫でる。明は目に涙を浮かべつつその顔は穏やかな笑みで溢れていた。
目が合いどちらからというわけでもなく口付けを交わす。いつまでもこうしていたいという感情ともっと強い快感を得ようとする身体の欲求が激しくぶつかり合う。
そして・・・体の欲求に俺は屈した。

「動くよ・・・」
「うん・・・」
優しくキスをした後ゆっくりと腰を動かす。

「あぅ・・・はぁ・・・あっあっあっ・・・・あああぁぁぁぁぁ」
明の喘ぐ声と共に俺の額に汗が浮かび腰の動きが早まる。身体の奥から沸き起こる快楽の波が俺に限界が近い事を教えた。

「・・・っく・・・明・・・俺・・・も・・う・・くっ」
「いいよ・・・大丈夫だから・・・僕の中に・・・・それが・・あっ・・・僕の・・望みだから・・・」
望み・・・その言葉の免罪符を得て俺の中の快楽の波は限界を迎えた。

「・・・・う・・・っく・・・・はぁぁ」
「いい・・・・いいよ・・・あっあっあっ・・・はぁ・・あああああああああぁぁぁ」
俺は明の中に果てた・・・快楽の余韻で火照った身体に夜の風が心地良かった。

04-467 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 06:59 ID:7Uaop11Q
気がつくと東の空が白み始めていた。
俺たちはあの後ずっと抱き合っていた。交わす言葉も多くは無かったがそれだけで俺は幸せだった。

「もう・・・行かなきゃ・・・」
唐突に明が立ち上がる。その瞳にはまた涙が溢れていた。

「また・・・逢えるんだろ?」
「うん・・・だけど・・・今度逢うとき僕は違う僕・・・」
「違う僕?・・・まさか・・・」
「そう・・・僕は・・・生まれ変わる・・・この二日間の思い出は神様がくれたプレゼントだったのかも・・・だけどきっとまた逢える・・・だから・・・さよならは言わない・・・またね・・・」
明の身体が光に包まれ足の先からその身体が光の粒子に変わっていく。俺は明を抱きしめようと手を伸ばすが手は明の身体を掴むことができずすり抜けてしまった。
俺はいつのまにか泣いていた。そして光が――明が空の彼方へ消えるまでずっと立ち尽くしていた。

「身体に気をつけてな。」
「ああ・・・親父もな」
特急列車のドアが閉まり列車は動き出す。ポケットから特急券を取り出し席を確認すると俺はシートに腰を降ろした。
この予定外の帰郷は俺に一生涯忘れる事ができない思い出をくれた。
あいつは女の姿になったのは自分の本来の姿に戻ったからだと言った。その真偽はあいつ本人にしか判らない。
そして、触れることができるようになったのもあいつ自身の願いとあいつは言った。だけどそれだけではないと俺は思う。なぜならば・・・・それは俺も願った事だから・・・
あいつは別れ際"またね"と言った。だから俺もそれを信じようと思う。だからもう・・・涙は流さない。

車窓に映る景色に灰色のコンクリートが増えてゆく。東京に戻ればまた辛くもある日常が始まる。だけど・・・精一杯頑張ろうと思う、あいつと再会するその日まで。

04-468 :I wish・・・ ◆PETORIs7YU :04/06/25 07:00 ID:7Uaop11Q
街が煌びやかな光で飾り立てられ流行のクリスマスソングが流れる。街全体が恋人たちを祝福していた。
溜め気をつく・・・冬の冷たい風が身体と心に吹き付けた。俺は寂しさを紛らわそうとコートの襟を立てて家路を急いだ。
あの思い出深い17歳の夏から16年、俺は何度目かの孤独なイブを迎えていた。
俺は高校を卒業後大学に進み、今では一流と呼ばれる商社の一員となっていた。傍から見ると恵まれた人生だと思う。
実際、入社が決まったとき両親は嬉しさのあまり親戚中に言って回ったそうだ。だが俺の心は17歳のあの時のまま凍りついていた。
寂しさに耐えかね彼女を作った事もあった。だがどの恋も長く続かなかった。
別れる理由はいつも同じで「私じゃない誰かを見ている」だった。

駅前のツリーを見上げ再びため息をつく、街の幸せそうな空気が俺には辛かった。

・・・ドン・・・
不意に背中に何かがぶつかった感触がした。

「・・・篤志・・・」
懐かしい少女の声がした。

「篤志・・・やっと逢えた」
その声が17歳のまま凍った俺の心を溶かす。

「逢いたかった・・・ずっと探してた。僕・・・生まれ変わっても篤志の事・・・忘れなかったよ・・・」
少女の抱擁が俺の心を完全に溶かし俺は堪らずその声の主を抱きしめた。

「明!」
「篤志・・・」
抱きしめたの少女は懐かしい香りがした。はあの日あの場所で抱き合った思い出のままの少女が確かに俺の腕の中にいる。

「明・・・もう放さない・・・絶対に・・・」
16年の刻を経て俺たちは再び唇を重ねる。
疎ましくさえ思った街の明かりが今では俺たちを祝福しているように思える。
煌くクリスマスツリーの光に包まれ俺たちはいつまでも抱き合っていた。

 The END

04-796 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/01 22:15 ID:SBYimjxc
ん・・・温かい・・・誰だろうこの人は・・・

月明かりの下ボクは男の子と抱き合っている。顔は見えないけど歳はボクと同じぐらいかな?
恥ずかしい筈なのにこの人といると不思議と心が安らぐ。
唐突にボクは立ち上がりその人と何かを話す。涙で目の前の景色が霞む。
やがてボクの身体は空へ・・・そしてその人の姿は小さくなって消えた。

pi pi pi pi pi pi・・・・・・・
「ん・・・もう朝・・・・・・起きなきゃ・・」
12月の冷たい空気がベッドから出るのを邪魔する、ボクは何とかのそのそとベッドから這い出し目覚し時計を止めた。
急いで洗面台へ向い、寝癖で乱れた髪をブラシで整え制服に腕を通す。ボクも高校生になってもう8ヶ月、もう慣れたもんだ。
ジャムたっぷりのトーストとホットミルクを急いで身体に流し込み突き刺さるような寒さの通学路に駆け出した。
息が白い、冬の寒さがスカートから出た脚に容赦なく突き刺さった。

「ふぅ・・・寒い・・・早く行こ」
ボクはさっきより歩くペースを上げ学校へと急いだ。

04-797 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/01 22:16 ID:SBYimjxc
「おはよ!明!」
親友のメグが背後からボクの背中を叩きながら現れた。

「あ、おはようメグ!」
「お、明なんだか嬉しそうな顔してる・・・ひょっとして夢の王子様?」
夢の王子様とは今朝見た夢に出てきた男の子のことだ。小さい頃から良く見るこの夢のことをメグこと杉田恵に教えたのは今更ながら失敗だった。

「う・・・うん・・・」
ボクがおずおずと答えるとメグは玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべた。
その笑顔はボクにとっては悪魔の笑みそのものだった。

「あきらぁ・・・現実を見ようよ。クラスで彼氏いないの私らぐらいだよ。もてないわけじゃないんだからさぁ」
「そういうメグもこないだB組の松崎君振ったでしょ。何度目?」
「うっ・・・だって・・・あいつしつこいんだもん。・・・まあ、それは置いといてそんな彼氏のいない貴方に朗報です。明日のクリスマスイブ、なんと合コンを企画しました。ぱちぱちぱち」
そう言って手を叩きながら1人盛り上がるメグ、だけどボクは気が乗らなかった。

「ごめん・・・ボクはいいや。」
「なんでよぉ」
「ごめんね、圭子でも誘ってよ。」
ボクが謝るとメグは口を尖らせ抗議してきた。だけどすぐに表情が変わり"お願い"モードに入っていた。

「と言うか・・・・お願い、その圭子が彼氏できたからってドタキャンされたのよ、お願い、私の顔を立てると思って、ねっ!」
「わ・・・判ったから・・・行くから・・・顔を上げて、恥ずかしいから」
気づくと周りから視線が注がれていた。わざとらしいほどのメグのお願いモードにボクは折れて首を縦に振ってしまった。

「じゃあ決まり、さっすが"妹にしたい女子"ナンバー1の明ちゃん、じゃあ7時に駅前のツリーで待ち合わせね」
「もう・・・げんきんなんだから・・・って一体何のアンケート?"妹にしたい女子"って、ねぇ・・・ねぇってば」
メグの後を追って廊下を走る、途中先生に怒られたけど今この瞬間、瞬間が楽しかった。
・・・だけど・・・あの夢を見るたびに感じるなにか・・・言い表せない喪失感のようなものは何だろう・・・・

04-798 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/01 22:16 ID:SBYimjxc
この日、終業式だけの学校が終わりボクたちは街に繰り出した。流行のクリスマスソングが街に流れ明日のイブを待ちきれない、そんな華やいだ街の空気と裏腹にボクの心に残った喪失感はいまだ拭えずにいた。
うつむき加減に歩くボクをメグが気遣い声をかけてくれた。

「ちょっと、明、大丈夫?顔色悪いよ。」
「う・・・うん、ちょっと考え事」
「調子悪いならもう今日は帰ろうか?楽しみは明日なんだし」
メグの言葉は今のボクにとてもありがたくボクはメグの言葉に甘え小さく頷いた。

「じゃあ、今日はもう帰ろう、"妹にしたい女子"ナンバー1の明に何かあったら私が全校の"おにいちゃん"に殺されちゃうもの」
ありがとう・・・・メグ・・・・でもそのアンケートのこと今度答えてもらうからね・・・

家に帰るとバッグを放り投げベッドに横たわる。頭に浮かぶのはやはり夢のことだった。
昔から見ていた夢、あまりにも良く見る夢・・・・
前から気になっていたけど最近は特に気になって気づけば夢のことばかり考えている。
あの人は一体誰なんだろう、もし逢うことができれば今までの疑問がすべて解決するかもしれない。
ベッドに横になるうちにボクは睡魔に襲われ眠りに落ちていった。

04-799 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/01 22:17 ID:SBYimjxc
カンカンカンカン・・・・
踏み切りの音が鳴り響き特急電車が入ってくる。

「頑張れよ」
「お前もな」
「また会えるだろうからさよならは言わない、またな・・・」
目の前の男の子が列車に乗り込み二人の間がドアに遮られる。その時ドアの窓に写ったボクの姿は・・・男だった。

ザザ・・・・ザザザ・・・

唐突に視界が放送終了のテレビのように砂嵐に包まれ目の前の駅は消え去っていった。

(ん・・・なに・・・ここは・・・誰かのお葬式?)
ふすまが開き見慣れた人が入ってきた。それはあの男の子だった。
部屋に入るなりその男の子は部屋に寝かされた遺体にすがりつき声を枯らして泣いた。そして遺体の顔にかけられた布が外され、そこに現れた顔はさっき見た"男"のボクだった。

「篤志君・・・気を落とさないでね」
「はい・・・」
周囲の大人たちが男の子に声をかける。
(そっか・・・篤志君って言うんだ)
やがてボクは天井を突きぬけ空へ・・・空へと昇ってゆき、いつのまにかボクの姿は女に戻っていた。


はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・
気がつくと窓の外はすっかり暗くなっていた。シャツが汗で身体に張り付き気持ち悪い。夢の中ではボクは男の子だった。慌てて胸に手を当てると柔らかい感触が伝わる。
(良かった・・・夢か・・・)
そう思ったものの今日の夢は妙な現実感があった。それに今日の夢でわかったことがある。あの男の子の名前が"篤志君"だということだ。

05-072 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/04 01:07 ID:DdH8Xln6
その日の夜ボクはまた夢を見た。

「あぅ・・・はぁ・・・あっあっあっ・・・・あああぁぁぁぁぁ」
いつもの場所――月明かりの下でボクは夢の中の男の子――篤志君と抱き合って・・・いや、ひとつになっていた。自分とは思えない艶っぽい声を出すボク・・・上になった篤志君から汗が滴り落ちる。その臭いさえボクには愛しく感じられた。

「・・・っく・・・明・・・俺・・・も・・う・・くっ」
篤志の腰の動きが早くなりボクは今まで感じたことが無い不思議な感じに飲み込まれそうだった。

「いいよ・・・大丈夫だから・・・僕の中に・・・・それが・・あっ・・・僕の・・望みだから・・・」
望み・・・それがボクの望みなの?・・・何も考えられなくなり頭が真っ白になる・・・だけど温かくてなんだか嬉しい・・・
「・・・・う・・・っく・・・・はぁぁ」
「いい・・・・いいよ・・・あっあっあっ・・・はぁ・・あああああああああぁぁぁ」
身体の中に温かいものを感じる。もう何も考えられない・・・これがイクということなんだ・・・

05-073 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/04 01:08 ID:DdH8Xln6
そのあといつもの夢のようにボクたちは抱き合っていた。
身体の奥が熱くなってくる・・・足の先を見ると身体が透けて光っている。
(もう・・・時間なんだ・・・)
夢の中の"明"の気持ちが伝わってきて目に涙が溢れる。

「もう・・・行かなきゃ・・・」
唐突に明が立ち上がる。その瞳にはまた涙が溢れていた。

「また・・・逢えるんだろ?」
篤志君が名残惜しそうな顔でボクに尋ねる。

「うん・・・だけど・・・今度逢うとき僕は違う僕・・・」
「違う僕?・・・まさか・・・」
「そう・・・僕は・・・生まれ変わる・・・この二日間の思い出は神様がくれたプレゼントだったのかも・・・だけどきっとまた逢える・・・だから・・・さよならは言わない・・・またね・・・」
今までの夢では聞き取れなかったボクと篤志の会話が今ははっきりと聞こえる。だけど涙で周りの景色が歪む。
足の先から光の粒子に変わってゆくボク・・・流す涙すら地面にこぼれ落ちる前に光に変わって消えていった。
空へ昇っていくボク・・・篤志君も泣いているのが判る。
(必ず・・・・必ず生まれ変わっても逢いに行くから・・・)
"明"の気持ちがボクに流れ込んでくるそして目の前の景色は真っ白な光に包まれて何も見えなくなった。

12月24日クリスマスイブ
「う・・・ん・・・朝・・・か・・・」
眠い目を擦るとすぐに異変を感じた。

「ボク・・・泣いているの・・・」
大量の涙がこぼれ落ちていた。

「あは・・なんでボク泣いてるんだろ」
その理由はわかっていた・・・でもそれを認めてしまうとボクがボクで無くなってしまう気がして怖かった。

05-074 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/04 01:09 ID:DdH8Xln6
白いコートの裾をなびかせ待ち合わせ場所のツリーに向かう。身体を寄せ合って歩くカップル、プレゼントを抱え家路を急ぐ人たち。街を行き交う人々がみんな幸せそうに見える。
白い息を吐きながらメグが来るのを待つ。すると10分もしないうちにメグの姿がボクの視界に現れた。そして・・・同時に1人の男の人の姿が目に映った。
夢の中の"篤志君"の姿が少しずつ変わっていき目の前の男の人と重なる。
(篤志・・・間違いない・・・篤志だ・・・やっと見つけた)
その瞬間ボクの中で何かが弾けた。
田園風景の中で遊ぶ幼い男のボクと篤志、小学校の入学式、16歳の別れ、そして 17歳の2度目の別れ・・・木村明として過ごした17年の記憶がドラマの総集編のように頭を駆け巡る。

「明?・・・大丈夫?ぼうっとして・・・」
メグがそばにいるのにも気づかなかった。ボクの意識は完全に篤志に囚われてしまった。

「あ・・・明ひょっとして愛しの王子様でも見つけたの?駄目だよチャンと現実を・・・」
「うん・・・見つけた・・・・篤志・・・」
メグの言葉を全部聞く前にボクは走り出していた。

「ちょ・・・明!明ってばーーー篤志ってだれよー」
メグの叫ぶ声が聞こえる、だけどもう走り出した心は止まらない。懐かしいあの背中をボクは追いかけた。

05-075 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/07/04 01:10 ID:DdH8Xln6
人影に見え隠れする背中、ボクは見失わないように必死で走った。そして・・・

ツリーの少し先でその背中を捕まえた。捕まえた背中は懐かしい香りがした。

「・・・篤志・・・篤志・・・やっと逢えた」
涙が頬を伝う、心の中で過去を覆い隠していた壁は崩れ去りボクは・・・いや僕は木村明を・・・自分自身を取り戻した。

「逢いたかった・・・ずっと探してた。僕・・・生まれ変わっても篤志の事・・・忘れなかったよ・・・」
篤志を抱きしめる手に力が入る。それに答えるように篤志もまた僕を抱きしめた
「明!」
「篤志・・・」
16年の年月は篤志の姿を変えてしまったけどその目、香りはあの日あの場所で抱き合った思い出のままだった。

「明・・・もう放さない・・・絶対に・・・」
篤志の手に津からが入り僕をより近くへと抱き寄せる。そして僕たちは16年の刻を超えて再び唇を重ねあった。
世界が僕たちを中心に回っているようにさえ思えるぐらい僕たちは幸せだった。周りで見つめる人たちの視線さえ僕たちを祝福しているように思える。
16年の刻を超えて掴んだこの幸せ・・・このぬくもりを少しでも味わっていたい、煌くクリスマスツリーの光に包まれ僕たちはいつまでも抱き合っていた。

The END

06-499 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/15 03:03:27 ID:tAyceezr
特急列車の車窓からのぞく景色に懐かしい山々が見える。その頂は白い雪化粧が施されて
いた。
幾度と無く見た彩度の少ないその景色は今までの独りでの帰省のときはひどく寒々しく感じ
ていた。しかしその寒々しい風景は隣で白いコートに包まれて眠る最愛の彼女と供に在る今
回の帰省では彼女に見せてあげたい、誇るべきふるさとに思えた。
やがてふるさとの名を告げるアナウンスの声が彼女――桜井 明を眠りの世界から現世へ
と呼び戻した。

「う・・ん・・・ごめん、ボク眠っちゃった」
「いいって、気にすんな昨日まで試験だったんだろ?」
「うん、でもそのおかげで学校が休みで旅行に来れたんだもん感謝しなきゃ。」
「そうだな、でも・・・昨日のあれは正直きつかった・・・」
「ああ・・・あれね、ごめん、ボクが口をすべらしちゃったから。」
彼女の言う"あれ"とは昨日、明の家に挨拶に行った時のことだ。(生まれ変わってから)
初めての明との二人旅ということで挨拶に行ったのだが明の両親とは既に合ったことがあ
るため形式的な挨拶だけで済んだ。だが問題はその後だった、試験明けパーティーと
称して明の友人たちが桜井家に押しかけた。まあ・・・そこまでは良い、本当に問題なのは明
が浮かれて俺のことを『私の王子様』と友人たちに紹介したのだ。
さすが10代の女の子が4人、当然その場は蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。黄色い
声で騒ぎ立て俺に矢継ぎ早に質問をしてくる娘、何を思ったか顔を赤らめ黙り込む娘、いろい
ろな反応だったのだが一番辛かったのは最終的に全員に『王子様』とあだ名で(なおかつタメ
口で)呼ばれたことだ。

06-500 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/15 03:05:00 ID:tAyceezr
「もう・・・いいや」
「あはは・・ごめんごめん、ほら篤志もうすぐ着くってば荷物降ろしてボク背が届かない
んだから」
「はい・・・」
俺はちょっとだけ疲れたように返事をし、列車を降りる準備をした。そして、3分もしない
うちに列車はふるさとの駅に滑り込んだ。
ドアが開き暖房の効いた車内に冷気が流れ込んでくる。マフラーを巻きなおし身を縮ま
せながら二人で待合室へと向かった。
やかんが置かれただるまストーブの温かさに一息つくと俺はポケットから携帯を取り出し
実家へ連絡を取ろうとした。その時、明から意外な言葉が出た。

「ねぇ、せっかくだから歩かない?街をゆっくり見たいし」
その言葉に俺は途中まで開きかけた携帯電話を再びたたみ、首を縦に振った。
待合室を出て駅前の通りに出るとそこには16年前と変わらぬ風景が広がっていた。そ
の風景は16歳の少女の心を17年前の少年のものに戻していった。

「あ~~あのラーメン屋まだ潰れてなかったんだ、あっ!あの模型屋もよく行ったよね」
ゲーセン、ラーメン屋、模型屋、駄菓子屋と・・・・二人であの頃の思い出をたどるように街
を歩く、見るものすべてが懐かしいといった明のはしゃぐ姿を見、やはり一緒に来てよかっ
たとその姿を見る俺も嬉しい気分になった。

06-501 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/15 03:06:16 ID:tAyceezr
二人で寄り道をしながら街を歩いていたおかげで俺の実家近くの商店街に来た頃には時計
の針は3時を回っていた。正月を過ぎ里帰りしていた人々も帰ってしまったこの町の商店街
は人影もまばらで心なしか淋しさすら漂っていた。そんな中、俺は1人の老婦人の姿が目に
留まった。

「あれ?篤志君じゃないの、いつ帰ってきたの?」
向こうも俺の存在に気づいたらしく近くに歩み寄り声をかけてきた。彼女の名は木村葉子、明
の――"木村明"の母親だ。

「あ、おばさんお久しぶりです。正月帰れなかったから今日休みを取って帰ってきました。」
「そう、ところで篤志君この娘は?」
「ああ、こいつは俺の彼女の明」
「へぇーかわいい娘捕まえたじゃないの、それにしても明とはねぇ・・・偶然かしら」
俺とおばさんが話している間、明は少し顔を伏せうつむいていた。おばさんはそれにかまわず
俺と話し続けていた・・・が明を見続けるうちにおばさんの表情もまた違ったものへと変わって
いった。

06-502 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/15 03:07:12 ID:tAyceezr
「あれ?・・・あはは私なんで泣いてるんだろう・・・この娘を見てるとなぜか涙が出て
くるの・・・今日のおばさん変だよね。」
おばさんの目にはきらりと光る一粒の涙があった。そしてそれは明も同じだった。明
が一歩おばさんに歩み寄ると二人は自然と抱きしめ合い、そこに言葉は無かった。
商店街を行き交う人々の視線にも動じることなく二人は抱きしめあう、そして永遠とも
思える数分間ののちそっとはなれた二人、それを見る俺の頬にも一筋の涙が流れて
いた。

「ごめんなさいね、私ったら見ず知らずのお嬢さんに抱きついたりして。でもあなたの
事他人とは思えなくって・・・本当にごめんなさいね」
その言葉を残しおばさんは商店の中へと行ってしまった。
おばさんと別れ再び俺と明と二人で歩きはじめた。どちらからとも無く手をつなぎ俺の
実家へと急いだ。

「なあ・・・本当のこと言わなくて良かったのか?」
「いいの、こんなこと信じてくれないよ。」
「でもなあ・・・」
「ごめん、でも・・・いいの」
それ以上俺は何も言えずただ明の華奢な身体を抱き寄せた。

06-503 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/15 03:08:33 ID:tAyceezr
3年ぶりの俺の実家に着いた。母さんが俺たちを出迎えたちまち世間話に華を咲かせた。
その話は自然と明のことになり明もまた本来の笑顔を取り戻した。
世間話を続けていると不意に電話機から電子音のベルが鳴り響いた。一言二言話すと母
さんは俺を呼んだ。

「篤志、吉岡君から電話」
予期せぬ電話に少しあせりながら受話器を取ると電話の先には声こそ大人びているもの
の高校の時と変わらぬ吉岡の姿があった。

「よお!篤志久しぶり、帰ってきたそうじゃないか木村のおばさんから聞いたぞ」
「ああ、情報が早いなもうばれたか」
「ばれたかじゃないよ、かわいい彼女連れてきたってみんな大騒ぎだぞ。ところでせっかく
帰って来たんだからみんなで飲まねえか?・・・・というより来い。来なくても俺たちが拉致
しに行くから夜明けとけよ。」
一方的に話すと吉岡はさっさと電話を切ってしまった。俺はジェスチャーでやれやれとお
どけてみせると明もまた笑い返した。

「母さん、今夜夕飯要らなくなった。みんなで飲もうだって。」
「あらそう・・・残念」
「ごめん、明日の昼はみんなで食べよ明日の夕方まではこっちに居られるから」
母さんは少し残念そうな顔をしたが楽しんでこいよと言ってくれた。

そして夜・・・行き先も言わずに電話を切ってしまった吉岡のせいで結局家で待つ羽目に
なってしまった俺は明と居間でテレビを見ながら吉岡が来るのを待っていた。そして1時間
のバラエティー番組が終わる頃玄関のチャイムが鳴った。

・・・・ To be continued

06-581 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/28 01:08:55 ID:PG4zsrVC
ガラガラとガラス戸をあけるとそこには懐かしい顔があった、滝沢の結婚式以来の吉岡の
顔は相変わらず日に焼けた無邪気な少年のままだった。

「よお!久しぶり、すっかり都会人になっちまったな」
「はは、デスクワークばっかりで身体が鈍っちまうよ。お前がうらやましいよ」
「そうだろ、農作業でこのとおり身体だけは丈夫でな」
そう言うと力こぶを作り笑って見せた。

「じゃあ、母さん行ってくるよ。」
靴をはき出かけようとした時、奥から明の慌てるような声が聞こえてきた。

「まった、ボクも行く~」
「ちょっと待て、野郎ばっかりの中にお前は連れて行けねぇ」
「大丈夫だよ、ボクも"元"野郎だし」
「そういう問題じゃないだろ」
その言葉と裏腹にぷぅっと頬を膨らませて俺に抗議する明の顔はまさに少女のそれで、そ
の顔を見た俺の心配を更に膨らませた。

「へぇ、それが自慢の彼女?」
そんなやり取りをする俺に背後から吉岡が声をかける。その目は新しいおもちゃを見つけた
子供のように輝いていた。

「連れて行ってやれよ篤志、彼女も独りで残されたらさびしいだろ・・・・な?」
「そうそう、さびしいよ」
抜群の連携で俺に畳み掛ける2人に俺は・・・首を縦に振らざるをえなかった。
そんな俺を見る明の笑顔はこれ以上ないぐらいに輝いていた。
(くそっ、この顔に弱いんだよな俺・・・)

06-582 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/28 01:09:29 ID:PG4zsrVC
結局2人に押し切られ3人で飲み屋に向かうことになったがそこで俺はもう一度驚くことになった。

「おい、確認するけど帰りは代行で帰るんだよな?」
家の前に止められた車に乗り込もうとする吉岡に念のため釘をさした。

「そんなのみんな使わねぇよ、どうせおまわりもやってるんだから」
はぁ・・・とため息をつき俺は帰りは歩いて帰ろうと決め、車に乗り込んだ。
日が落ちた田舎の夜空は都会ではありえない美しさを見せていた。だが今はそんなものは目
に入ることは無く、隣に座る男の顔が気になっていた。
別に俺に男色の気があるわけではない、その顔に悪戯を思いついた子供のような笑顔を浮か
べていたからだ。そしてその心配は現実の物となった。

06-583 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/28 01:10:31 ID:PG4zsrVC
車を走らせること10分、車は串揚げ屋『海』の駐車場に止まった。そして吉岡に引っ張られる
ように店に入ると卒業アルバムそのままの友人たちの姿がそこにあった。
おせっかいだった雄太、臆病だったのに見栄っ張りの豊、そして俺たちを半ば無理矢理連れてきた
ガキ大将だった吉岡、みんなあの頃と変っていない、変ったのは俺の後ろからついてくる明だけだ。
その明は嬉しそうな笑顔を浮かべみんなを見つめていた。その気持ちは鈍感と自認する俺にでも容
易に想像できた。
以前の"明"の記憶を取り戻したのが最近とはいえ16年の歳月は長かったのだろう、俺と会って昔の
話をするたびに明は愉しそうな表情の中に寂しさを見せていた。

「へぇー、その娘が篤志くんの彼女?・・・・・・うーん、犯罪だよ~」
「そうだそうだ、33歳のおっさんが現役女子高生と付き合っているって・・・反則だ、罰としてとりあえず
飲め。」
「そうだそうだ、飲め飲め~~」

06-584 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/28 01:11:13 ID:PG4zsrVC
雄太を皮切りに冗談交じりの非難が浴びせられる、それと同時にグラスになみなみと注がれた日本酒
が目の前に差し出された。
酒が余り得意でなくためらう俺に目の前の3人は兎に角、他のグループからも"飲め"コールが浴びせ
られ、明に助けを求めるも明もまた笑いながらその輪に加わっていった。

「裏切り者・・・」
恨めしそうに呟くと俺は手に持たされた透明の液体を一気に身体の中に流し込んだ。それと同時に俺は
酔っ払い達の歓声と軽い目眩に襲われた。
靴を脱ぎ座敷席に腰を降ろすと4杯のビールと1杯のウーロン茶が運ばれ乾杯の声と供に昔話がそれぞ
れの口から溢れ出した。
きつね色の衣に包まれた串揚げを肴に話は大いに盛り上がった。その話題の中心はやはり明のことだっ
た。

06-585 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/09/28 01:11:46 ID:PG4zsrVC
「まったく・・・うらやましすぎる、33歳のおっさんが16歳の娘と付き合ってるだとぉ・・・俺だけかよ独り者は」
吉岡は愚痴を言いながら俺のグラスに酒を注ぐ、そして注ぎ終わるとなみなみと注がれたグラスを俺に向
かって突き出した。

「ちょ・・・勘弁してくれよ俺そんなに飲めないって・・・」
泣き言を言いながら少しずつ酒を啜るが何かが俺の中で引っかかった。
(そうだ・・・こいつ"俺だけかよ独り者は"って言ったなどういう意味だ?)
「え?俺だけって?」
「あれ?言ってなかったか雄太も豊も今度結婚するんだよ。」
「えぇぇぇあの二人が?・・・・ありえねぇ」
「なぁにがありえないんだって?」
いつのまにか俺の背後に雄太が立っていた。その顔はほんのり紅く染まりその手にはやはり酒瓶が握られ
ていた。

「ほらほら私たちの幸せを祝え」
3人の酔っ払いに囲まれ完全に逃げ場を失った俺は雄太に注がれた焼酎をグビッっと飲み干した。
・・・だが飲み干して30秒、既に限界近くまで飲んでいた俺の視界は歪み、やがて暗転した。

・・・・ To be continued

06-613 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:41:54 ID:dqQY2lZ5
夢を見ていた
あの頃幾度となく通った通学路、俺の傍にはいつも明が居た。
昨日見たテレビのこと、部活のこと、いつもくだらない話ばかりしていた。
唐突に走り出す明、俺は懸命に追いかけたがその背中は見る見るうちに小さくなってゆきやがて見えなくなってしまった。
それでも俺は明が走り去った方向へ走った。脚がもつれるほどに走った先に明が居た。だがその姿は"親友"木村明ではなく愛しい少女の姿だった。
その少女の華奢な身体を俺は迷わず抱きしめた。柔らかな感触と彼女の温もりか心地良い、その温もりに身を預けながら俺は懸命に走った自分自身を褒め称えた。だけど・・・


もしも・・・あの時追いかけなかったら・・・

06-614 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:43:14 ID:dqQY2lZ5
「う・・・ん・・・」
俺の視界に再び光が満ちてきた。気がつくと吉岡達の姿は既に無く俺は店の座敷席の一角
で明に膝枕されていた。先程まで友人たちとふざけあっていた少年のような雰囲気は影をひ
そめその仕草一つ一つがハッとするほど清楚な色気を醸し出していた。

「あっ、気がついた?」
明の白い手が俺の頬を優しく撫でる。その手の感触は俺の中に残っている"親友"木村明の
イメージを塗り潰していった。

「明の手綺麗・・・女の子なんだな」
「ばか・・・ボクは正真正銘女の子だよ」
そう言いながらおどけて俺の頭を小突くその顔はまぎれもなく16歳の少女、16年の歳月は
2人の少年を大人の男と少女に変えていた。

「あっお客さん気がつきました?よかったらタクシー呼びましょうか?」
「いや、大丈夫です。」
「本当に大丈夫?」
やっとの思いで起き上がった俺に明も心配そうに顔をのぞきこんだ。その不安そうな表情を
和らげてやる為に無理にでも平然を装って立ち上がってみせた。
店員に礼を言い会計を済まし店を出ようとしたが会計は既に済まされていた。店員に聞くとど
うやら吉岡が豊や雄太を押しのけてまで払ったそうだ。
(あいつらしい・・・・結婚祝だな)
クスッと笑い店員にもう一度礼を言い店を出た。

06-615 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:44:41 ID:dqQY2lZ5
「あ~あ、最後に出るバナナの串揚げ食べたかったな」
「ああ、あれね初めて食べたけど美味しかった。」
「だろ?初めて見た奴は嫌そうな顔するんだがいけるだろ?」
「うん、上にかかってるクリームとチョコがいい感じ」
「あ~~くそ!話してたら食いたくなってきた。吉岡の奴今度会ったら返杯地獄
を味合わせてやる。」
「あはは、そうだね」
店を出てから俺たちは俺の家へと帰る道を歩いていた。懐かしい友人達に会え
た嬉しさに2人とも笑いながらさっきまでのことをずっと話していた。

「そういえば篤志がボクの親に会ったって言ったらみんなびっくりしてたよ。」
「はは・・・そうだよな、普通1ヶ月で親には会わないよな」
「そだね、だけどボクたちは1ヶ月だけじゃなくて17年と1ヶ月の付き合い・・・で
しょ?」
「そうだったな、忘れてたよ今のお前あまりに自然に女の子してるから。」
「だーかーらー今のボクは正真正銘の女の子なんだってば、16年前の男とし
ての記憶も持っているけど・・・ってここは確か・・・」
足を止め立ち止まった明の視線の先には1本のベンチがあった。

「ねぇ篤志、ここ・・・覚えてる?」
「え?ここって?」
「ひどい、ここでボクの初めてを奪ったのに忘れたの」
「あっ!ここは、そうか」
「そうだよぉボク達が・・・その・・・初めてえっちした所・・・・だよ」
アルコールのせいではなく羞恥で頬を染める明、それでも目は真っ直ぐに俺を
見つめていた。

06-616 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:46:38 ID:dqQY2lZ5
「そ・・・それでね・・今日は・・・・その・・・新しい下着つけてきたんだ・・・」
それだけ言うと明は顔を伏せ何も言わなくなった。そして1月の寒空の下、震える明
を俺は自らの身体で包み込んだ。

強く抱きしめたら折れてしまいそうな明の身体を優しく、だけどしっかりと抱きしめる。
そして明の手も俺の背中に回された。

「明・・・いいのか?」
「いいの・・・ボク・・・初めてだけど・・・・初めてじゃないから」
「でも・・・いいのか・・・俺みたいなおっさん相手で」
「ばか・・・ボクは篤志だからいいんだよ」
「でも・・・」
「うるさい!」
明を諭そうとする俺の言葉は柔らかな唇によって封じ込められた。

「ん・・・あむぅ・・ん・・は・・・はぁ・・・んちゅ・・・んん・・」
互いの口内を嘗め回すと頭の中に粘液が絡み合う音が響く、この音を明も聞いてい
ると思うとそれだけで自分では押さえきれない何かが沸き起こるのがわかった。
唇を重ねたまま白いセーターの上から胸に手を伸ばす。柔らかで、それでいて弾力
に富んだ双丘の感触が手のひらに心地良くもっと・・・直に触りたいと雄の本能が俺
に訴えかけてきた。

「下着・・・見てもいい?」
「・・・うん・・・」
明は先程より更に顔を紅潮させながらコクリと頷き、俺は明の返事を待って裾から
右手を進入させセーターをめくりあげると淡い黄色の下着に包まれた乳房は1月の
空気に晒され少し鳥肌が立っていた。

「大丈夫?寒くない?」
「大丈夫・・・少し寒いけど・・篤志が暖めて・・・」
その言葉で俺の理性は焼き切れた。

06-617 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:48:48 ID:dqQY2lZ5
ホックを外し露になった桜色の乳首を荒々しく吸い上げる。初めての明に優しくしてあ
げたいのに・・・もう・・・押さえが利かなかった。

「あぅ・・・はっあああ・・・あっあっあっぁぁ・・・」
乳首を舌先で転がすたびに額に汗をにじませ切なげな濡れた声を出す明。俺は更な
る快楽を求め背中に回した手を徐々に降ろしていった。
口で乳房を味わいながら右手はジーンズ越しにお尻の感触を楽しんだ。ジーンズの
デニム越しにでも感じられる柔らかで、それでいて引き締まった女の子の感触、それ
らがもっと・・・もっと・・・と俺を焚きつけた。

「下・・・見てもいい?」
「・・・・・・・・・・」
俺の言葉に明は答えなかった。それを肯定と受け止め俺はジーンズに手を掛けた。
ボタンを外しジッパーを下げるジィィィというジッパーの音さえやけにいやらしく感じら
れた。

「んぁ!はっあぁぁぁああ・・・・ああっぁぁ」
下着越しにでもわかるほど熱を帯びた秘唇に指を這わせると身体を震わせ俺にしが
みついてきた。その息は荒くその目もどこか懇願するかの様に思えた。

「ボクも・・・してあげる・・・」
「えっ?」
足元に跪くと明の指はズボンに延び、既に熱を帯び硬度を増していた俺のモノを優し
く包み込んだ。

「・・・・・・・」
無言のままの桜色の唇に俺のモノが飲み込まれていく。その淫靡な光景だけで俺の
モノはより硬度を増していった。

06-618 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:50:03 ID:dqQY2lZ5
「ん・・・んちゅ・・・ん・・・んふぅ・・んん・・・ん!?」
痺れるような感覚と供に口の中に精を吐き出した。ペニスがドクンドクンと脈打ちいま
だ止まらすにいた。

「んん・・・すごい量・・・・でも・・・・ん・・・・・・えへへ飲んじゃった」
「明・・・」
「や・・・明ってばまだ元気・・・33歳なのに・・・」
「歳のことは言うな~そんな事いう奴には・・・こうしてやる」
「きゃっ!・・・」
明をベンチに押し倒し脚をM字に開かせると露になった秘唇に舌で丹念に嘗め回す。
指による愛撫で既に濡れていたそこからはにちゃにちゃと淫猥な水音がした。

「あふぅあああ・・・あはぁあ・・・ふぁぁぁ・・・」
「明・・・綺麗だよ・・・」
「ばか・・・どこ見て言ってるの・・・・ばか・・・!!はぁあああ」
「ほら・・・濡れてこんなに綺麗・・・明のここ見てたら俺のも・・・ほら」
精を放ったばかりというのに俺のモノは完全に勢いを取り戻していた。勢いを取り戻し
たそれは次はまだかとヒクヒクと更なる快楽を待ちわびているようだった。

06-619 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:51:37 ID:dqQY2lZ5
「明・・・もう入れたい・・・」
うなじにキスをして耳元で身体の欲望を素直に口にした。明はそっと「いいよ」とだ
け呟き俺に口付けを返した。

「いくよ・・・」
「うん・・・」
先端をあてがうと明は一瞬ビクッと身体を震わせたが完全に身体を預けてきた。
M字に開いた脚を抱え込むように明の膣(なか)へと侵入した。

「・・・いたぁ!?・・あああ・・んんああああぁぁああ・・・はぁ・・はぁ・・はぁ」
締め付ける秘肉を押分けてペニスが完全に中に収まり結合部からは紅い一筋の
鮮血が流れ初めてということを俺に教えた。

「明・・・おまえ・・」
「えへ・・・2度目の初めても篤志にあげられたね・・・・」
「いいのか・・・俺で・・・」
「ばか・・・たとえ何度生まれ変わっても・・・ボクは・・・篤志がいいの・・・」
俺の眉間を小突き嬉しそうに微笑む明を抱きしめ俺たちは繋がったまま口付けを
した。

「動くぞ・・・」
「うん・・・」
いままで歳の差や世間体を気にしていたことが馬鹿馬鹿しく思えるぐらい腕の中
の少女しか見えない自分がいる、そしてその少女も自分を見つめてくれている。
これ以上幸せなことがあるものか。その16年の想いを確かめるように俺は力の限
り明を抱いた。

06-620 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:52:48 ID:dqQY2lZ5
「あっ!あっ!あっ!・・・ああああはぁぁぁぁ・・・・ダメ・・・ボクもう・・ダメ・・」
「う・・・くぅ・・・俺も・・・もう・・・い・・・」
「あっ・・あふぁあ・・・くふぅ・・・ボク・・・ボク・・・篤志のが・・・欲しい」
限界を感じ引き抜こうとする俺の意思を感じ取ったのか明の脚が俺の腰を捕まえた。

「明・・・このままじゃ膣に・・・・くっ・・・出しちまう・・・うっく・・」
「いいの・・・欲しいの・・・大丈夫だから・・・篤志のが欲しい」
もはや俺に自分を押しとどめる術は無かった
「うっく・・・あっ・・・うっ・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「ああああ・・・イク・・ダメ・・・ボクもう・・・だめぇぇぇぇ」
精を搾り出そうとする蠢きに身体を預け俺は明の膣内で最後まで搾り出した。ペニスを
引き抜きそっとキスをしたその顔は安らかに微笑んでいた。

06-621 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:54:30 ID:dqQY2lZ5
身支度を整えていると明の携帯電話が光っていた。

「ん?誰からだろ?・・・・着信9時23分・・・圭子からか、なんだろ?」
着信の相手に電話を入れる明、十数秒後、相手が電話に出たようだ。明は相手の話を聞い
ているが内容は判らない・・・・だがその表情は先程までの幸せそうな顔から一変し生気の
無いものになりその場に崩れこんだ。

「おい、明!明!しっかりしろ!何があったんだ」
「メグが・・・・メグが・・・」
「恵ちゃんがどうした」
「メグが・・・事故にあって重体だって・・・ボク達があんなことやっている間にメグは・・・うわあ
あああああ」
泣き崩れる明を俺はしっかりと抱きしめ、気をしっかり持つようにと諭すように話した。

「恵ちゃんは・・・どこの病院に」
「ヒック・・・う・・・東京の病院だって・・・・ボクがこんなことやっている間に・・・」
「明!恵ちゃんが事故にあったのはお前のせいでもない、だから・・・自分を責めるな」
「でも・・・でも・・」
「とにかく、東京へ行こう。いろいろ考えるのはそれからだ。」
時計を見ると時間は9時40分を回ったところだ。今からなら夜行バスに間に合う、俺は明の
手を引き家へと走った。

06-622 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:55:40 ID:dqQY2lZ5
家へと着いたのは9時50分だった。慌てて帰ってきた俺たちに親父も母さんも驚いたよ
うで俺は親父に事情を話すと親父は黙って車のキーを取り出し俺たちに早く準備するよ
うにと急かした。
5分後、俺たちは着いた時のままだった荷物を抱え車に飛び乗った。

「篤志、しっかりね。あとこれお腹が空いたら食べなさいね」
「母さん、ありがとう。みんなでご飯食べれなくてごめん、また帰ってくるから」
母さんの渡してくれた2人分のおむすびを手に俺たちは早すぎる帰路に着いた。

駅に向かう車内、明は涙を啜るばかりで俺はそんな明を抱きしめることしかできなかった。
やがて車は駅に着きロータリーに止まった。先にあるバスターミナルを見るとまだバスは
エンジンも止まったままそこにあった。

「よかった・・・間に合った。親父ありがとう」
「親子なんだから気にするな。それより彼女を守ってやれよもし彼女をこれ以上悲しませ
たら家の敷居は跨がせないからな。」
「わかった、行ってくる。」
親父なりの励ましを受け俺は泣いていた、だがそれを悟られまいと明の手を引きバスター
ミナルへと向かった。

06-623 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:56:53 ID:dqQY2lZ5
2人分の乗車券を買いシートに腰を降ろす。明は少しは落ち着いた様子で今はただうつむ
いていた。何分か経ちバスのエンジンに火が灯りディーゼルエンジンのうなりと供にバスは
動き出した。
駅前から国道を通り高速道路へとバスは進んで行き幾つかのバス停を過ぎる頃には車内
で起きているのは運転手以外には俺と明だけになった。

「ねぇ・・・篤志・・・ボクが死んだ時悲しかった?」
突然の明の質問に俺は戸惑った。

「ああ・・・お前も見ていたかも知れないけど・・・悲しくて・・・悲しくて泣き尽くしたよ。」
「ボクはねボクが死んだ時悲しかった。好きな人と話すことも触れ合うこともできなくなって
悲しかった。」
「でも、お前には俺がいる」
「うん・・・篤志とこうやっていられるのはすごく嬉しい、だけどみんなの心の中のボクはもう
死んでいるんだ。ボクはもうみんなにとって自分が思い出の一部にしか過ぎないのが辛い
んだ。だから・・・メグにはこの辛さを味あわせたくないんだ。」
「明・・・」
目に涙を浮かべる明の身体を強く抱きしめた。

「俺も・・・明に親友を失う辛さを味合わせたくない。だから・・・せめて祈ろう、俺とお前がそう
だったように願えばきっと奇跡が起こる・・・だから今は祈ろう」
「うん・・・篤志・・・ありがとう・・・」
バスが東京に着くまで俺たちは狭いシートで抱きしめ合っていた。

06-624 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:57:58 ID:dqQY2lZ5
バスは1時を過ぎた頃到着した。すぐさまタクシーを広い病院へと向かった。
病院の待合室では明の友人の圭子ちゃんともう1人、40歳ぐらいの男が待っていた。
この男の名は杉田一樹、事故に遭った恵ちゃんの父親だ。以前明に見せてもらった
写真ではもっと若々しい印象だったのだが今目の前にいるこの男は疲れ果てそれより
もずっと老け込んで見えた。

「おじさん!メグは・・・おばさんは・・・」
「・・・妻は・・・死んだ・・・恵も・・・もう・・・生きているだけだ」
「そんな・・・」
へたり込む明、それに追い討ちをかけるように男は話を続けた。

「妻は即死だった。恵は・・・身体の損傷は少ないが・・・脳が・・・頭に受けた衝撃が元
で植物状態・・・だ」
それだけ言い放ち男もまたその場で泣き崩れロビーには2人の泣き声が木霊した。

06-625 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 00:59:00 ID:dqQY2lZ5
夜があけ街に人々が戻る頃、俺たちは恵ちゃんの病室にいた。無菌室のベッドで機械に
繋がれ眠るその姿は一見安らかに見える。だがもう彼女は笑うこともできない。

「こうしてみると実感湧かないね・・・メグがもう目を覚まさないなんて・・・メグ、ボクだよ、
いつまで寝てるの?学校行こうよ・・・メグ・・・」
うわ言のように恵ちゃんに話し掛ける明を見ていると俺まで悲しくなってきた。だから俺は
悲しみを隠すのをやめ素直に涙を流した。
次の日も、その次の日も俺は仕事の時間を見計らって明と供に恵ちゃんの見舞いに訪れ
面会時間が終わるまで彼女に語りかけ続けた。
だが数日経ったある日彼女は居なくなった。看護婦に聞いてみてもその行き先は答えて
はくれなかった。
 彼女の行方を知ろうと恵ちゃんの父親と連絡をとろうともしたが留守番電話のメッセージ
が流れるばかり、家に行ってもその門は固く閉ざされていて開くことは無かった。

06-626 :鶏 ◆PETORIs7YU:04/10/06 01:00:10 ID:dqQY2lZ5
それから2年が経ち、明が高校を卒業するのを待って俺たちは結婚をすることにした。
明の希望で親しい友人たちだけを集めてのこじんまりとした結婚式になったが心から
祝福してくれる友人たちで小さなチャペルは一杯になった。
だが、明にとってもっとも親しい彼女の姿はどこにも無かった。

「メグ・・・結局あのまま・・・」
「でも、死んでしまったと確認したわけじゃないだろ」
「うん・・・」
「だったら・・・死んでしまったと決め付けるには早いよ。あの時言ったろ、願えばかな
うって、だから今は祈りながら信じて待とう」
「うん」
「花嫁さんが泣くのはまだ早い、ほら涙を拭いて、みんな待っている」
「うん、篤志・・・ありがとう。ボク篤志のお嫁さんでよかった」


神の前で誓い、今俺は明と供に歩みはじめた。ライスシャワーが降り注ぐ中俺は明の
親友の彼女に願った。
(恵ちゃん・・・もしも俺の願いが届くのならいつかきっと・・・俺も明の笑顔を見たいから
・・・)
祝福の鐘が鳴り響く中、願いが届くよう俺はいつまでも雲一つ無い空を見上げていた

The END

最終更新:2012年01月24日 16:30