- 08-438 :名無しさん@ピンキー:2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:xMd1yxsJ
- 思いつきネタ、エロは全然ない。
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公園のベンチに座る少年ら数名に、一人の男子が駆け寄る。彼の名前は長谷川勇樹、名前に反して非力な男子で、所謂いじめられっこのパシリでる。その手にはコンビニ袋がぶら下がっている。
「山田君。言われた通り、コーラ買って来たよ」
「遅いんだよ、鈍間!」
「うぐっ」
長谷川は、ベンチに座る少年たちに飲み物を手渡したところで、少年たちのボスの山田健司に殴り飛ばされる。
「ご、ごめんなさい。でも、あんまり急ぐとコーラが噴き出ると思って」
長谷川が殴られた腹部を抑えながらそう弁解する。彼らは中学生であり、その若さゆえイジメも手加減を知らないキツイものであった。
「まぁ、その点は評価してやる。」
山田の言葉を聞き、長谷川は薄ら笑いを浮かべながら立ち上がる。そして、談笑を続ける山田達をただじーっと眺めていた。
「そんなに見てくるんじゃねぇっ、気色わりぃな。」
「ご、ごめん……」
少年らの一人に怒鳴られ、長谷川が視線の向きを変えた。
(なんで、こうなっちゃうんだろう。僕はただ、友達になりたいだけなのに。)
自然と溢れた涙をふき取り、数十分間長谷川はそこに立ち続けた。会話の内容は、「女とヤりたい」だとか、「○○は最近エロい体つきになった」とか、性欲の鬱憤をただ愚痴るだけのものだ。
「ふー、んじゃぁ、そろそろ帰るか」
山田がそう言って、他の少年らも立ち上がる。皆、次々に飲み終わった空のペットボトルを長谷川に投げ当て、去ってゆく。数分そこに立ち尽くした後、長谷川は散らばったペットボトルをかき集め、ごみ箱へと捨てに行く。空は夕焼けに染まり、公園には長谷川しかいない。
- 08-439 :名無しさん@ピンキー:2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:xMd1yxsJ
- のそのそとゴミ箱にペットボトルを入れた長谷川は、なんとなくゴミ箱の中をのぞいた。
ペットボトルを通してピンクの冊子が透けてみえる、気付けばその冊子を手に取っていた。何故そんな行動をとったのか、長谷川自身わからない。不思議と身体が動いたのだ。
表紙も背表紙も何も書かれていない冊子を、ぺらぺらと捲る。パッと見た限りでは、ゲームの説明書のようであるが、その実態は中二病ノートであった。「ふふふ」と笑いながらそれをポケットに忍ばせ、長谷川は帰路に着いた。
長谷川の両親はすでに他界しており、現在は親戚の家で暮らしている。親戚の家には親戚のおばさんと、その娘であり長谷川より2歳年上の女子高生が住んでいる。
長谷川は、親戚のおばさんと娘から邪魔者扱いをうけていた。
おじさんはまるで長谷川を息子のように思っており、とてもよくしてもらっていたが、数年前におじさんは転勤となり、単身赴任をし始めたのだ。
それからというもの、現在のような長谷川の生活は始まった。
それについて長谷川は、おじさんには黙っているので今ではおじさんは半年に一回帰ってくるか来ないかという具合になってしまったのだ。
おばさんは長谷川を召使いのように扱う。それでも長谷川はおばさんを恨んではいない。
曲りなりにも育ててくれた恩があるし、召使い生活のおかげで家事全般を身に付け、明日にでも一人暮らしをできるだけの能力は身に付けていた。今日の夕食だって長谷川が作ったハンバーグである。
「明日から、旅行に行くから」
食事中、唐突におばさんが口を開いた。長谷川は「わかりました」と返事をし、一人だけ白米と味噌汁、そして漬物だけの夕食を食べ続ける。
親戚の娘は今日から夏休みであり、こういった長い休みにはおばさんと二人で旅行へ行くのがお約束であった。因みに長谷川は明後日から夏休みである。
「生活費はこれを使いなさい、足りなくなっても私は知らないから。」
「あと、私らの部屋に勝手に入らないでよ。洗濯も、洗濯機は使わない事!」
おばさんから封筒を受け取ったあと。何度も注意事項を聞かされ、その都度何度も返事をする長谷川。その心の中は明日からは家事全般の半分から解放されることを想像し、とても晴れやかであった。
部屋に戻り、公園で手に入れた中二病ノートを読みだした。まるで図鑑のようなその中身は、なかなかに手の込んだものであった。1ページに一つ、「体力を上げる方法」だとか、「自己治癒力を高める方法」だとかが載っている。
「へぇ、「呪文」+「何か」で効果を発揮するのか」
感心しながら、中二病ノートをめくる。中盤に差し掛かり、内容が少し破廉恥な無いようになってくる。ふと「女性のパンツを食い込ませる」ページを開き、長谷川は口を押えて小さく笑う。
(もし、本当に可能なら……?)
そう思って、ページに書かれていることを真似てみる。その内容は「モッキョ」と言うおかしな呪文を呟き、パンツを食い込ませたい女性をイメージするだけである。標的は親戚の娘である。
「……やっぱり、何も起きないか。馬鹿らしいや。」
数秒耳を澄ませるが、なんの反応もない。笑いながら冊子に視線を戻す。何気なく「女性のパンツを食い込ませる」ページを再び読む。長い説明文の最後の行に、長谷川の視線は集中した。
【……である。因みに、この効果はじわじわと時間をかけて発揮するものではなく、数分後に急に、且つ、一気に発揮される】
「……もしかして」
長谷川はゆっくりと目を閉じ、耳を澄ませた。
「きゃぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!!」
長谷川が目を閉じてから数秒後、娘の悲鳴が夜空に響いた。
「……嘘。本物?」
はっとして、冊子の初めの目次を見る。娘の絶叫がなりやまないのだ。
「解除の方法、解除の方法。」
長谷川は解除の方法を確かめ、それを実行すると。娘の悲鳴は鳴りやんだ。
「すごい、本物だ。……そうだ、これを使えば山田君たちと友達になれるかもしれない!」
長谷川は目次を上から順番に確認するがその内容はどこか限定的なものが多く、「友達にする方法」は見当たらない。ただし代わりに、「男を美少女性奴隷にする方法」を発見した。
「「男を美少女性奴隷にする方法……?」
【……上記の方法で対象者は貴方の性奴隷となる。時間をかけて淫乱な性格になるが効果は3週間しか続かない。再び効果をかけることで美少女性奴隷にできるが、淫乱になった性格は一度元に戻る】
「……いや、僕がしたいのは復讐なんかじゃないんだ。」
長谷川は冊子を閉じ、鞄の中へしまった。部屋に置いていればおばさんに見つかる可能性があるからだ。
- 08-440 :名無しさん@ピンキー:2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:xMd1yxsJ
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次の日、学校の屋上にて。現在は放課後。
「おい、長谷川のやつ痛々しい物持ってるぜ」
冊子が見つかってしまった。山田の子分の少年が長谷川の鞄を勝手に漁ったためである。
「山田さん、長谷川のやつ、金は隠してなかったけどこんな恥ずかしい物を持ってたんですぜ」
「なんだこれ?・・・まじかお前、長谷川」
「それは、拾ったんだよ」
「へー、拾った・・・ねぇ。」
山田がにやにやとしながら冊子をめくる。とあるページでその手が止まった。
「「男を美少女性奴隷にする方法」~~?お前、本当に馬鹿だな」
「それはっ」
長谷川が弁解をする暇もなく、皆が一斉に笑い出す。
「へへへ、えーと。【「カムヌエ」と言いながら、対象者の額に手を当てる】か。」
山田が笑いながら長谷川に近づく、長谷川は必死に逃げようとするが少年たちに腕をつかまれて逃げられない。そんな必死に抵抗する長谷川にまたもや少年たちに笑いが起こる
。山田が「こいつ、頭イっちゃってるな」と笑いながら長谷川の額に手を当てた。
「あー、オホン。カムヌエ!!……なんちって」
「嫌だぁぁぁああああ!!!!!」
山田が笑うと、他の少年たちも笑う。長谷川だけが絶叫する。その絶叫が、何ともかわいらしいアニメ声に変化しはじめ、皆の顔が強張った。
ぼさぼさの髪は艶のある長く美しい物へ変化する。華奢な体は、白く柔らか味のあるものに変化し、元々よりも華奢な女の子らしい身体へ変貌した。
長谷川の絶叫が終わった時、そこにいたのは中学生離れした、グラビアアイドルにも劣らないプロポーションに、そこら辺のアイドルなどよりも、はるかにかわいい顔の美少女であった。
長谷川は、正真正銘の美少女になってしまったのだ。
「マジかよ……!?」
皆が口々に驚きの声をだすが、山田だけは冷静に、ゆっくりと泣き崩れる長谷川の手を取って無理やり立たせた。そして冊子をめくり、長谷川の額に手を当てた。
「歓迎するぜ、性奴隷の長谷川ちゃん。……カンゲンヒーマ」
「あ・・・あう・・・?」
気付けば、驚きの声を上げる少年は一人としていない。皆おもむろに自分の一物を取り出している。長谷川からは今、男性を興奮させるフェロモンが大量に放出されてるのだ。
「どうやら本物らしいな。」
山田が長谷川を押し倒す。無理やり服を脱がし、そそり立つ肉棒を一気に差し込む。
行為が終わり、皆が屋上で仰向けになっているとき、長谷川はむなしく笑うのであった。そして、隣に寝転がっている山田にとある提案をした。
- 08-441 :名無しさん@ピンキー:2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:xMd1yxsJ
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次の日、夏休み初日。
美少女となった長谷川は、親戚の娘の服を勝手に拝借したものを着て公園にいた。きょろきょろとあたりを見回し、目的の人物たちを見つけて大きく手を振った。その先にいる目的の人物――少年たちも手を振りかえす。
「遅れてごめんね、いろいろ試したんだけど下着のサイズが合わなくて。」
「気にしないでいいよ、長谷川ちゃん。」
「そうそう」
「つか、ノーパンノーブラ!?そのミニスカで?」
何時もの調子で話す長谷川だが、少年たちはこの前までとは打って変わって、クラスのマドンナと話しているかのような態度である
「うん、下着はつけてないよ。・・・あと、僕としては一番かわいい物を選んだつもりだけど、変じゃないかな?」
くるくると回って服を見せる長谷川。丈が30センチほどのミニスカートに、胸元と、背中の露出した刺激的なシャツ。何よりそれを着ているのがトップアイドル並みの美少女であるのだから、昨日童貞を卒業したものが大半の少年たちには効果は絶大である。
「よう、集まってるな。」
遅れて山田が登場する。長谷川を含めたみんなが待っていましたと出迎える。
「長谷川、お前めちゃ無茶エロいな。」
長谷川の肩に腕を回し、耳元でささやく。その声を聴いただけで、長谷川の顔は赤面する。その太ももに流れる透明な液体を、山田は指先でふき取ると。
「今度下着を買わないとな。まぁ、ひとまず今日はカラオケに行こうぜ。……予定通り、楽し~いパーティーといこうじゃねぇか」
皆の歓声が上がり、全員でカラオケ店へ向かう。
「しかし、いいのか長谷川?」
「・・・何が?」
山田が尋ね、長谷川が返事をする。
「あのお願いだよ」
「え?・・・あぁ、あれ?」
二人でそんな会話をしている間に、他の少年と数メートルの間が開いてしまった。
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山田の回想。時は、昨日長谷川の身体を皆で楽しんだ後。
「ねぇ、山田くん」
長谷川が口を開く。
「なんだ?男には戻さないぞ」
「……よかった」
「は?」
「ううん、なんでもない。……ねぇ、お願いがあるんだ。僕をね――
***
―――僕を、一生性奴隷にしてください。って言ったことでしょ?」
「ああ、そうだ。」
「いいんだ。……僕、友達がほしかったから」
「友達?性奴隷は友達じゃないぜ」
「ううん、友達だよ。」
長谷川が「えへへー」と特徴的な笑いを上げ、数歩分山田の前に出る。そして、長谷川が振り返る。
「性的な意味で!」
長谷川は満面の笑みでそう言ったあと、少ししてから真っ赤に赤面し、それを隠すように足早に他の少年たちを追いかけた。
「・・・おぉ。………おぉ!?」
山田はそう言い、胸を押えた。
「な、なんだよ畜生。この感じはよ」
顔を赤らめて山田は呟く。それが恋だとは気付かずに。
- 08-443 :名無しさん@ピンキー:2013/08/07(水) NY:AN:NY.AN ID:xMd1yxsJ
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十年後、日本のとある場所にて。
「んじゃ、行ってきます」
スーツを着た男性が玄関先でそういうと、門をくぐって道に出た。
「あー待って、ケンジさん!忘れ物」
慌ただしく、女性が出てきて男性に弁当を手渡す。
「ああ、すまん。ありがとう、ユウキ」
「んもう、ユウキって男の子っぽいから、ユキって呼んでっていつも言ってるでしょー」
「ははは、悪い悪い。それじゃあ、本当に行くよ」
男性はそう言って再び歩き出そうとするが、女性に腕をつかまれて引き留められた。
「これも忘れてるよ……」
瞳を閉じて、柔らかな唇を出す女性に、照れながらも男性は応じる。それを、近くを通りかかったおばあちゃんに茶化される
「あらあら、新婚さんかい?仲がいいねぇ。奥さんなんか、随分とべっぴんさんじゃないかい」
「あ、いえ。籍は入れてないので夫婦じゃないんですよ。ちょっと訳ありでして」
男性が恥ずかしそうに返事をする。唇を離され、「むー」と頬を膨らます女性だが、すぐに人差し指を立て、満面の笑みを浮かべる。
「私達、らぶらぶのオトモダチ……なんですよっ!」
「バッ、おい、ユキ!」
男性が赤面する。「えへへー」と特徴的な笑い方で女性は笑う。
「おやおや、本当に仲がいいねぇ」
おばあちゃんがにこりと笑う。
「私たち、夫婦より仲のいい友達だよね」
女性が男性を見つめながらそう言う。男性は目をそらし、「フッ」と笑うと。「ああ、そうだな」と呟き、女性の方を見た。そして、二人同時に口を開く、呟くは――二人の間の合言葉、いつからかその言葉は意味を失ったけれど、二人の間では大切な言葉なのだ。
「「性的な意味で……ね」」
END
最終更新:2014年03月19日 14:45