01-530 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:44:11 ID:YJM//A+B
◆close by dune――ゆびきり――◆




「んで、俺に何の用だ?お姫様」
ロトの剣を磨きながら、その刀身にレイは息を吹きかける。
その仕草は先代のロトと同じ。

「お前は、あの二人と違って変わらぬ男なのだな」
「ああ、オカマとリトルのことか?最初はちょっとびっくりしたけど慣れれば気になんねーし」
レイの腕の中、剣は気高く笑う。

「ロト、この旅が終わったら儂と一緒になってはくれぬか?」
竜の血と、ロトの血脈をあわせることが出来るならば。
この監獄の中から魂だけは出られるのかもしれない。

「早急な求婚だな、お姫様」
日に焼けた手は、何かを確かめるように銀色の髪に触れる。

「でもさ、俺……隠し事されんの好きじゃないんだ。どれだけ綺麗だって綺麗じゃなくなるしな」
男の言葉は残酷だ。
無意識だからこそ、心に突き刺さる。

「選民意識っていうんだぜ?竜族のお姫様」
腕は干からびてうっすらと鱗が浮いてきて、金髪に褐色の肌は彼女が人外であることを語った。
伸びた爪。この爪で何人かの人間を殺してきた。
みな一様に彼女のことを『化け物』と罵ったからだ。
それでも、あの光の中の世界に触れたくて、手を伸ばしてしまう。
その光が本物かどうかなどとは、考えることも出来ないままに。

01-531 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:45:25 ID:YJM//A+B
「お前も私のことを、化け物と思うか?」
「いや。ちょっとヒス気味だがまだマシだ。キレたときのリトルなんざ多分、ハーゴンも真っ青だ。 
まぁ、キレっぷりはオカマのほうが上だけどな。あいつには我慢って言葉がないからさ」
腕に巻かれた包帯に、滲む血の色。
それは魔族も竜族も人間も同じ同じ忌まわしく美しい『赫』で。
この身体にも流れるもの。

「金髪の女は好きだぜ。アレフガルドには美人が多いって本当だな。お姫様」
自分の隣をぽふぽふと叩いて、レイは彼女を座らせる。
鱗の浮いた腕、伸びた耳。

「泣きそうな顔してんな、お姫様。俺ぁ、女兄弟も女であったことも無いからどーしたら
 いいかわかんねぇんだ」
頬に触れる掌は、傷と皸だらけ。
がさがさのそれは、酷くやさしくて涙がこぼれそうになる。
唇を噛んで、それを飲み込む。
この感情を抱いてしまえば、人間を食らうことなど出来なくなってしまう。

「リラ。俺の国に咲く花の名前だ」
「え…………」
「ロトがこの地より持ち帰りし赤き光の華。そう、聞いた」
銀の髪を持つ女勇者は、竜神を切り裂き英雄となった。
そして、彼女は剣を置き静かに余生を過ごしたと言う。
神殺しをしたものが、何故に勇者と謳われるの?彼女はそれを繰り返した。

01-532 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:46:32 ID:YJM//A+B
遥か離れた大地、彼女と王子、そして、その子供たち。
やがて血は分かれて三つの国を作る。
それが、彼らの祖国なのだ。
後悔と、懺悔に苛まれた勇者。それを担ぎ上げる人間。
『一つの幸せな家庭を、壊してしまった。神様、私をお許しください』
それが、ロトと名付けられた少女の最後の言葉だった。

「リラ。俺が死ななかったら」
頬を包む手。

「俺の国にある、お前の花を見に来いよ」
「……私は、醜い化け物だ。男にも、女にもなれぬ……」
レイの手を取って、リラはそれを自分の胸に当てた。
上向きで張りの在る乳房。それは布地越しでもはっきりと分かる美しさ。

「おぞましい身体だ。男であって女でもある。私は竜族の出来損ないだ」
「得したと思えよ。人生二倍楽しめるんだ。オカマだって二倍以上楽しんでんぞ。
 そんなことくらいで悩むな」
ぽたり。こぼれる涙。
そのあたたかさは、人間も竜も同じなのだ。

「……私を、抱けるか?ロト」
「ロトなんてたいそうなもんじゃねぇよ。俺はレイアルド。ローレシアの出来損ないさ」
黒髪にそっと触れた指先。ゆっくり、ゆっくり、距離が縮まっていく。

「俺の名前はレイ、ロトじゃない」
「……レイ……」
目を閉じて、息が掛かる距離まで顔を近づけて。
そっと、触れるだけのキスをした。

01-533 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:47:27 ID:YJM//A+B
「……続けても、いいか?お姫様」
こくん、と小さく頷くのを見て、今度はもう少しだけ深いキスを。
唇を挟むように重ねて、そっと舌を入り込ませる。
分け合える体液と、その甘さ。
同じように彼女も舌を絡ませて、吸い合う。

「……キスだって、ちゃんとできる。何が不安だ?」
「この手も、身体も、何もせずとも皆が私を異形の目で見る……っ!!ただ、私たちは
 静かに暮らしたいだけなのに……どうして、どうすれば…っ!?」
胸に顔を埋めて、小さく震える竜神を、彼はそっと抱きしめた。
誰かを殺すのは、剣ではなく、無神経な言葉。
刺さって抜けない永劫なるその棘。

「ごめんな……馬鹿ばっかしでよ。悲しい思い一杯させちまった」
さらり、と指をその髪に通す。金はゆっくり光に溶けて眩い銀に変わっていく。

「傲慢な人間ばっかじゃないんだ。リトルとかオカマとか。ちょっと頭悪いけど俺とかさ」
「……人と、共存したいと願うことは愚考か?」
「すっげぇ、いい考えだ。俺もそう思うよ、リラ」
互いの上着を落として、その身体を抱きしめあう。

「……ぁ……」
耳に触れる唇に、震える肩口。
静かにベッドに身体を倒して、覆い被さる。
傷一つ無いその肌は、触れることを躊躇う色合いで。
鼓動が、早まるのが分かった。

「あ……っん!!」
両手で柔らかい乳房を揉みながら、その先端を舐め嬲る。

01-534 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:48:30 ID:YJM//A+B
ぬるりと舌が這い回り、くりゅ…指先がそこを捻って。
その度に生まれる疼きに、彼女は頭を振った。
下着に手を掛けて、そっと引き落としていく。

「待って!!嫌!!」
「まぁ、きっちり責任は取るから」
すらりと伸びた脚、なだらかな腹部。そして――――本来あるはずのない生殖器。
唇を噛んで、リラは嗚咽を殺した。
性を選ばぬままに卵は割れ、この世界へと身体は這い出てしまったのだ。
その結果がこの身体だ。

「両性具有か……初めて見たぜ」
そり勃つものは、無視してその下にある入り口へと指をしのばせる。

「醜いとは……思わぬのか?」
「あー…ちょっとびっくりしたけど、こっちも修羅場潜ってきてっから」
「!!」
入り込んでくる異物の感触に、声が掠れる。

「大丈夫だ。ちゃん濡れてるし」
喉元に触れる唇。誰も触れたことの無かった肌に、咲き始める赤い花。
曇った音と、湿った空気。
感じる体温の熱さに、自分の身体が女でありたいと叫ぶのを感じた。
誰かの魂を抱き、癒せるからだが欲しいと。

「ふぁ……ぁあ、んっっ!!」
くちゅ、ちゅぷ。指先が動くたびに零れてくる水音。
それは半分だけの女の喘ぎ。
(さーて、普通に挿れんのは難しいよな……)
つぷ…指を引き抜いて、そのまま腰骨を撫で摩る。

01-535 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:49:41 ID:YJM//A+B
「力抜いて……そう……んな感じ」
膝を抱えるようにして座らせて、そのまま抱き上げて。
とろりと零れる愛液が、光る糸のようにシーツを濡らした。
前に手を付かせて、後ろからゆっくりとその先端を沈めていく。

「……ぁ……く…ぅ…ッ!!」
腰に手を掛けて、牛から抱きしめるようにして一気に置くまで沈めた。

「!!!!」
ずきん、と走る最初の痛み。それに付随するように鈍い痛みが子宮を中心にして
全身に走り抜けていく。
動くことさえ儘ならないのに、それでも反り勃つ陽根。
己の痴態に、リラは顔を覆った。

「……悪ぃ……初めてだったか……?」
耳朶を噛む唇の優しさ。

「……気に……病むな……ん!!」
「もっと別のとこ弄って、気持ちよくさせてやりたかったんだけどよ、見つかんねぇから……」
レイの手にすっぽりと包まれたそれは、びくびくと脈打つ。
やんわりと扱きながら上下させると、その度に膣内がきゅんと絡んでくる。

「あぁ……!!や…ぁん!!」
「痛いの……少しは消えたか?」
「あ…うん……!!」
繋がった箇所はじんじんと痛むのに、与えられる快楽で身体は溶けそうに熱い。
背中に掛かる男の湿った息にさえ、胸が震えた。

「あ…ア!!あぁっっ!!」
ずく、ぢゅく。腰が動くたびに、赤と白の混じりあった体液が二人の腿を濡らしていく。

01-536 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:50:48 ID:YJM//A+B
「こっち向いて」
向かい合わせで抱きしめあって噛み付くようなキスを重ねた。
憎かったはずの『人間』は、詰まらない維持を取り払うキスをくれる。
竜と、人の血が混ざり合う。
絡まって、この世界に新しい血を起こすために。

「……レイ……」
震える指が、胸板に走る傷に触れる。

「ああ。これか?ちょっとな」
「……酷い……」
「酷かない。俺たちがお前らにしてきたことのほうがよほど……」
この思いが、もしも叶うのならば。
気高い竜族の王として、ロトの血にその加護を。
自分を抱くこの腕が、贖罪ならば。
この半端で忌まわしい身体を贄にして、男を守りたいと思った。

「ああんっっ!!」
痛みと、甘いうずき。何度も揺さぶられて、レイの手の中でそれはとろとろと涙をこぼす。

「俺も……イキそう……」
「……?……ふ…ああんっっ!!」
ぎゅっとしがみついて、引き離されないように必死に腰を振る姿。
室内に響くのは喘ぎ声と、荒い息だけ。
絡まった影が二つ、壁で淫靡な絵を描く。

「あ……あああっっん!!!」
振り乱れた銀の髪と、重なる黒髪。
飛び散った飛沫と、内側ではじけた男の精に、この身体の不条理さを感じた。
それでも、満たされたことと、開放されたことの幸福感。
そして、受け入れられたことに至福感に、リラは涙をこぼした。

01-537 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:51:56 ID:YJM//A+B
繋いだ手を離すのは、嫌だと彼女は小さく笑う。
この手を離したら、二度と会えなくなるからと。

「全部終わったらまた来る。リラの花見せてやるからよ」
わさわさと髪をなでられて、彼女はくすくすと笑った。

「その方がいい。リラ、笑ってろ。俺とゆびきり」
小指を絡ませて、そっと離す。

「あの二人にひどいことを言った……取り返しのつかない言葉を……」
「人間も、リラに酷いこと言ったろ?その人間に俺らも色々言われてきた。名ばかりの
 勇者とか、偽善者とか。まぁ、事実だけどな。俺らの場合は」
それでも、その人間を守るために彼らはその命を差し出すのだ。
どれだけ、言葉の刃を向けられても。

「魂には響かない。ご先祖様の言葉さ」
「魂……」
「リラの魂も、そんな罵詈雑言には汚されないだろ?」
一つ一つの言葉が、優しく光りながら心の海に沈み行く。
それは、ちいさな宝石だった。
きらきらと沈む、蒼い輝石。

「竜は、ロトの道を守る。この先に何があろうとも」
「もっと簡単な言葉で言ってくれ。俺、肉体労働専門なんだ」
「お前に惚れた。それではダメか?」
ちゅ、と喉仏に触れる薄い唇。

「了解。意地でも死なずに帰って来るぜ」
「私も、本物の姫になれるように……待つよ、レイ」
それぞれの思いは、一筋の光になる。
この世界を、救うことになる強い光に。
守るべき『約束』は、戦場でこの先彼を示唆することとなり、その命を何度も救う。
それは、二つの血が混ざり合って生まれた新しい命のように。

01-538 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:53:39 ID:YJM//A+B
「もう行っちゃうのかい?ロト」
ドラキーはくるくると、リトルの肩に止まって声を上げる。

「レイ」
手を取って、握らせたのは小さな宝玉。

「どうにもならないときは、これを大地に打て。援軍を送れる」
「遠慮なく使わせてもらうわ、リラ」
まっすぐ、逃げずに彼女は後ろの二人に視線を向けて。
深く深く、その頭を下げた。

「非礼を、許してくれ。ロトよ」
「あ……いや、いいんだ。俺は……」
意外すぎる行動に、アスリアはおろおろとリトルに視線を返した。

「こっちこそ、ごめんね。必ず人と竜の間に光を繋げるようにするから」
「リトリア王子」
「はい」
「サマルトリアのことは心配するな。竜の騎士団を遣わそう」
ハーゴン軍と熾烈な攻防をしている祖国に。
彼女は力を貸すというのだ。

01-539 :KINO ◆v3KINOoNOY :04/09/30 20:54:13 ID:YJM//A+B
「人間は、かようにも優しいのだな……光は対岸の物のみに在らず、大いなるものと……」
「ありがとう。リラ王女」
少女二人の手が、ゆっくりと触れ合う。
小さな、小さな、融和は。
この世界を変える大きな一歩だった。

「約束は守るよ。ねぇ、レイ、アスリア」
「ああ。女との約束は特にな」
「それは俺の台詞だ。オカマ」
ぎゃあぎゃあと言い合う姿に、笑い出すのも女二人。

「リトル、おぬしが国王になったら竜と和平を結ばぬか?ここと、おぬしの国は近い」
「いいね。それ。そしたら毎日みたいに騒げるよ」




小指は、約束を描く。
離れても、心はいつも側にいると。

最終更新:2012年01月24日 08:54