- 03-705 :Mirai∞Ryu:2006/11/01(水) 22:22:43 ID:kbhJA8b3
- 【scene1:ある日の教官室】
「メビウス、地球への次期赴任候補にキミを推薦しようと思う」
「えぇっ、本当ですか、タロウ教官!」
「…ただ、キミが訓練生の中でいくら最も優秀であっても、
大隊長は『女子』を従来通りのやり方で派遣する事に、懸念を感じている。
体力的な問題はもちろんだが、女と言う事で人々の無駄な好奇の目に曝されたり、
凶悪な宇宙人に付け入られたり…つまり、だ。
過去の前例に倣い、 『男のウルトラ戦士』として地球上でも男性の姿を借り、
通常の生活や敵との戦いに於て、ウルトラ一族だという事はもちろんの事、
決して『女』である事を悟られる事なく任務を全うする事が出来るなら、
地球への派遣を許可しても良い…と」
「わかっています教官!僕、地球担当に志願した時からそのつもりでした!」
「そうだなメビウス…キミは普段から自分の事を『僕』って言ってる位だから、
大丈夫かもしれないな。体付きも少年そのものだし」
「タロウ教官!(どうせ、僕は胸小さいですよ…)」
「いや、変な意味じゃない、むしろ好都合だと言う事だ。
…問題なのは、ウルトラ一族が性差を超えて別星人の姿態を模した時の弊害だ。
いくら体の隅々まで完璧に再現出来たとしても、”ある感情”を持つ事によって、
バランスが崩れてしまう可能性がある・・・」
「…どういう…事です?」
【scene2:森林コース】
「おい、何ぼーっとしてやがる!置いてっちまうぞ!」
ハッ、とミライは我に帰り、小走りにリュウを追う。
最近は怪獣出現の報告がしばらく途絶え、GUYSは出動待機状態の続く日々である。
「こんな時こそ体を鍛えるチャンスだ。ミライ!暇ならちょっと付き合え!」
リュウにロードワークに誘われた時、妙に胸が高鳴った。
二人きりでトレーニング出来る。その事が嬉しくて、幸せな気分に包まれていた。
同時に胸の奥に、今まで感じた事のない鋭い痛みを一瞬感じたが、
別段気にも止めなかった。いや、少し前からその痛みには覚えがあったのだが、
光の国でも恋愛経験のなかったミライ=メビウスには、それが教官の言う所の
「禁忌」である事に気付いていなかった。
リュウとの距離がどんどん開く。以前にも一緒に走った、傾斜のきついコース。
その時は彼よりずっと速いペースで走りきれた筈なのに、今日は体が付いていかない。
胸が、重く、しくしくと痛む。 (何でだろ…僕…おかしいな・・・)
- 03-706 :Mirai∞Ryu:2006/11/01(水) 22:24:02 ID:kbhJA8b3
- 『…異性に恋愛感情を持った場合、肉体と精神のバランスが取れなくなると、
擬態した体の一部が、一時的に本来の性に戻ってしまうとの報告がある。
性差復元の際に、かなりのエネルギーを消耗し免疫力も低下する…』
どうして今日に限って、教官の言葉ばかり思い出しちゃうんだろう。
さっきからぐるぐると、ミライの頭をループしている教官の声。
胸の動悸は激しさを増し、目が霞んできた。体が火の様に熱いのに、震えが止まらない。
リュウの姿がどんどん遠くなる。
そして、目の前の林が、ぐるんと一回転した後、暗闇に包まれた。
【scene3:変化】
・・・前回はこの辺りであいつに抜かれて、その後もぶっちぎられたな…
そんな事を思い出し、リュウがスピードを上げようとした時、後方で何かが崩れ落ちる音がした。
ミライが倒れている。眉間をひそめ、荒い息を吐き、体を震わせている…
(何だ何だ!?こないだは涼しい顔して追い抜いていきやがった所だぞ…)
慌てて駆け寄り、抱き起こして額に手を当てる。すごい熱だ。
(バッキャロー、調子が悪いなら悪いって最初から言いやがれ!)
とにかく、休ませなければ。腕を肩に回し何とかミライを立たせると、
すぐ先に見えている無人休憩所へ向かった。
リュウに支えられ、朦朧と引きずられるように何とか歩を進めるミライの頭に、
より厳しい教官の声が響く。
『…つまり、異性に擬態した状態での恋愛感情は、
非常時に於いては死をも招きかねない危険なものだ。
メビウス、君が本当に地球を守りたいと思うなら、
絶対に恋は許されない ・・・』
(誰かと一緒にいるのが楽しい、ていうのは・・・恋愛感情じゃないですよね?)
苦しい夢の中で、メビウスはタロウに問い掛けるが、声は届かないようだ。
- 03-707 :Mirai∞Ryu:2006/11/01(水) 22:25:20 ID:kbhJA8b3
- 「おいミライ、大丈夫か」
休憩所のベンチにミライの体を横たえ、リュウは呼び掛けてみる。
ミライは答えない。目を堅く瞑り、額に滝のような汗を吹き、
相変わらず苦しげな息を吐き続けている。
(やべぇな…この汗じゃ、体冷えちまうな)
自分のデイパックからタオルと替えのシャツを取り出し、冷たい汗に濡れた
ミライの上着に手をかける。まずは体の汗を拭き取ってやらないと。
上着の裾を少しめくり、タオルと共に右手を胸元へと差し入れる。
(…ん?)
違和感があった。少なくとも、男の胸板に触れた時には決して感じる筈のない感触が、
リュウの手のひらから鼓動をもって伝わってくる。
(何なんだ?この手触りは……)
慌ててシャツをたくしあげる。(……これは……)
微かだが、やわらかになだらかに盛り上がった、二つのふくらみが
衝撃を持ってリュウの目に飛込んで来た。
まるで第二次性長を迎えた頃の少女のような青い果実が、震えながら波打っている。
かつて性に目覚めた頃、悪友らとこっそり更衣室の窓から盗み見た
女子中学生の裸身を思い出し、リュウの心臓は早鐘を打ち始めた。
(ちょっと待て…こいつ、…まさか!?)
確かめたかった。好奇心もあった。少し恐ろしくもあった。
だが、男の本能が勝手に次の行動を起こしてしまった。
おずおずと、ジャージのパンツに手を伸ばし、震える手をゆっくりと、あてがう。
・ ・ ・ な ・ ・ い ・ ・ ・ !
(こいつ…こいつ、女・・・?マジかよ!)
その瞬間、ミライが苦しげな声をあげた。 (・・・目を覚ました!?)
心臓が脳天を突き破るかと思う程吃驚し、リュウは慌てて手を引っ込めた。
- 03-708 :Mirai∞Ryu:2006/11/01(水) 22:26:37 ID:kbhJA8b3
- 「ミライ…起きたのか?」
(いや、お前があんまり苦しそうだったから、服緩めてやろうと思って…)
下手な言い訳をあれこれめぐらせながら、リュウは思い切って声をかけた。
返事はない。いまだ原因不明の高熱にうなされながら、
言葉にならない言葉を漏らし続けているだけだ。
(良かった…いや良くはねえけど)
一瞬安心してしまった自分が情けない。
(何だっていい、まずはこの汗なんとかしてやんねーと…)
大きくかぶりを振って己の頬をはたき、リュウは震え続けるミライの上体を
静かに起こし、背後に回りこむと、上着を一気に脱がした。
真っ正面から向き合うのは、やっぱり何か気が引けてしまう。
改めてタオルを手にすると、首筋や背中は至って平静に、胸から腹にかけては
一所懸命違う事に意識を飛ばしながら、丹念に汗を拭き取る。
しかしどうしても、何度か小さく柔らかな丘に触れてしまい、
雑念が呼び起こされてしまう。
まだ、成熟するには時間と経験がたっぷり必要な、少女のような胸…
不覚にも自分の体の中心に熱いものが疼き始め、リュウは愕然とする。
(バカか俺は!何でこいつ相手に…あー、ワケわかんねえ!)
無理矢理、替えのシャツをミライにかぶせると、自らも上着を脱ぎ、
背中から震える体をしっかり抱きしめた。
(寒そうだからあっためてやるだけだ、やましい事なんかじゃねえっつーの!)
さっきから言い訳じみた事ばかり考えてしまうのはなぜだろう。
やがてリュウの体温で暖められたせいか、ミライの震えが落ち着いてきた。
こいつが目を覚ましたら、何て言ってやろうか。
「今まで何で黙ってやがった!」って怒鳴ってやろうか…
(いやいや、病み上がりの相手に怒鳴るのは大人げないか…)
それじゃ、「お前…女だったのか?」って、
優しく聞いた方がいいのか…(何かガラじゃねえな…)
「何で知ってるんですか!?見たんですか!?」って、逆に
セクハラだなんだと騒がれちまうなんて事ねえだろな…
(こいつが黙ってたのが悪いんだろが…)
あれやこれや逡巡しているうちに、疲労感とミライの温もりのせいで、
リュウもいつの間にかうとうとと眠りに落ちてしまった。
- 03-710 :Mirai∞Ryu:2006/11/01(水) 22:37:08 ID:kbhJA8b3
- 【scene4:数時間後】
「…はい、僕はもう大丈夫です。だけどちょっとリュウさんが疲れてるみたいなんで、
もう少し休んでから戻ります、明日はいつも通り…」
…あれ?ミライ、もう起きてんのか…?あんなに苦しそうだったのに?
「あ、リュウさん起こしちゃいましたね、すみません…本部にシフト確認してました」
…何なんだこいつ?ほんの何時間か眠っただけで、もうそんなにピンピンしやがって。
しかも何ナチュラルに業務連絡してんだよ…
「…おい、ミライ」
「はい?」
「何か…俺に…言う事ないか?」 とりあえず、遠回しに本題を切り出す。
一瞬、しまった…という顔をするミライ。さあ、話してみろ。
「…すみません!何か急にすごく気分悪くなっちゃって…
あ、でももう全然平気です、僕、回復力すごいですから」
いや、そーじゃなくて。
「…あ、ここまで運んでくれたんですよね?重くなかったですか?」
いや、そんな事どーでもよくて。
「あのな、ミライ…」
「…まだ、何かあります?…あ!僕、一番肝心な事言ってなかったですね」
そうそう、さあ聞かせてもらおうか。
「・・・明日からセキュリティ番号変わるから、暗証番号間違えないように。
先月もリュウさん番号忘れて大変でしたよね…てワケで、以上です!
…え?リュウさん、どうしたんです?他に…何か?」
(…完全にいつもの不思議ちゃん全開モードに戻ってやがる…)
問いただす気が完全に失せた。
ここにいるのはいつものミライだ。
思えば、見たのも触れたのもほんの一瞬だ。確信は・・・持てない。
俺もこいつに負けたくなくて飛ばしすぎて疲れてたし、
いきなりぶっ倒れたこいつに慌ててたから、
ヘンな妄想しちまっただけだ。そうだ、そうに違いない。断じてそうだ。だけど・・・
(いつか、確かめてやる・・・。)
手のひらの微かな感触を思い出し、リュウは思った。
一方ミライは。
帰宅後、着替えようとした際にやっと己の体の変化に気付き、
一人あたふたと焦っていた。
(え、これって、もしかして教官が言ってた・・・僕、恋、しちゃったんだ・・・)
いつの間にかリュウのシャツを身に着けていたことに気付くのは
もう少し後の話・・・。
Mirai∞Ryu ~beginning~
終わりです。お詫びにどじっ子メビを特板に落としますので許してください(汗)
最終更新:2012年01月24日 09:28