- 04-163 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:14:56 ID:8lqXrryQ
- 宴は一時の盛り上がりからようやく落ち着きを見せ始めていた
知るも知らぬも、といった様子で笑い合っていた人々も今は旧知の者達と和やかに談笑している
だからだろうか
2人の若者がこの場にいない事に気が付く者は少なかった
戦勝の興奮と終戦の安堵にざわめくアリティア城にほど近い場所に彼らはいた
「傭兵をやめようと思ってる オグマさんの話も、アストリアさんの話も、断るつもりなんだ」
赤毛の青年──ラディがそう言うと、彼が話す相手は亜麻色の髪を揺らしてかぶりを振った
「それは、タリスにもアカネイアにも行かずにこのまま剣を置くって事なのか?」
頷くラディを見て相手──シーザは残念そうな、というよりむしろ呆れたような顔をして溜息をつく
それきり黙り込んでしまった相棒を、どこか寂しそうな顔でラディは見つめていた
「…まあ、お前の人生だし好きにすればいいさ」
暫しの沈黙の後に掛けられた言葉はラディにとって意外なものだった
「正直勿体ないとは思うけどな だがお前自身が決めた事ならそれでもいいだろう」
目を丸くするラディとは対照的にシーザの顔はひどく穏やかだった
「……止められるかかもって思ってた…説得しようとするかもって…」
驚きを隠せないまま口籠もるラディに向けられた微笑みは暖かいものだった
しかし
「私はどうするかな…この機に旅に出るのもいいかもしれない…」
何でもない事のように呟かれた言葉
「じゃあ俺も一緒に」弾かれたように言いかけた言葉をシーザは静かに制する
「ありがとう…でもお前が自分で決めた道を曲げて欲しくないんだ」
離ればなれになる予感はラディを呆然とさせるには充分だった
- 04-164 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:17:04 ID:8lqXrryQ
- ワーレン傭兵隊に入ったばかりの頃、子供だった俺に何かと目をかけてくれた「お姉さん」
穏やかに教え諭したり、厳しく叱咤したりしてくれた「先輩」
同盟軍の街への到着に端を発したグルニア軍の侵攻
街は同盟軍に付く事を決め、報告と助力の為に隊を離れるという彼女が掛けてくれた言葉
『ラディ、良かったら私と一緒に来てくれないか?同盟軍には相棒だと紹介する』
「お姉さん」で「先輩」だった人はその時「相棒」になった
転戦する中で持ち場が多少離れる事はあっても、共に戦っていると思えるだけで安心できた
その「相棒」と別れる事になる 多分二度と会う事はないだろう
自分は剣を捨て去り、彼女は街を去るというのなら当然の成り行きだ
でも受け入れる事など出来そうになかった 離れたくないという思いで一杯だった
「ラディ…そんなに落ち込まなくてもいいんだ」
落胆させたと思ったのか彼女が労るように声をかけてきた
「私と離れても、また誰かに巡り会える 出会ったり別れたりを繰り返すのが人生だろう?」
言わんとする事はよく分かってるのに言葉は耳を通り過ぎていくばかりで相槌も出てこない
「『出会いこそが宝だ』と言った賢者が昔いたそうだ」
肩に置かれた手に力がこもったように感じた ふと見るとその手は随分細く華奢に見えた
「お前に…っ会えて……良かっ…私の……宝…」
声が震えていると思った瞬間、力任せに抱き締めていた
相棒から剣を置く決意を聞かされた時、驚きはしても止めようとは思わなかった
彼の才能は惜しかったがその決意を尊重してやりたかったし、枷にはなりたくなかった
だから旅に出ると口にした 正直あてなど何もなかったけれど
同行を言いかけた彼は私が止めると打ちのめされたように見えた
無理もない、と思った 彼が傭兵隊に来てからほぼずっと組んできたのだから
時には姉貴面をし、先輩風を吹かせる事もあった
同盟軍に行く事になり、その才能を伸ばして欲しいと思って声を掛けた
彼は目を見張る成長を遂げ、私にはそれが誇らしかった
だからこそ、これからは私が示す道ではなく彼自身で見出した道を歩んで欲しかった
呆然としている彼に多少訓戒めいた事を言いつつも、同じ事を自分自身にも言い聞かせていた
一番伝えたいこと「会えて良かった」そう言って別れを告げようと思ったのに
上擦った声が耳に届いて自分が泣いているのを悟った瞬間、抱き締められていた
- 04-165 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:19:36 ID:8lqXrryQ
- 抱き締めた身体が自分より細いのだと気付いて、心臓が大きくひとつ鳴った
俺の首に当たる頬が塗れているのを感じた時、血が熱くなるような気がした
そしてはっきり自覚した 俺はこの人が好きだと
自覚してしまえば伝えたくなるし、応えて欲しくなる
抱き締めたまま、ほんの少しだけ力を緩めて顔を覗き込んだ
「シーザさん、俺はあんたの事が好きだ だから離れたくない」
一息にそういって言葉を切る
琥珀色の瞳が潤んでいくのが分かった
薄く開いた唇が俺の名を刻んだように見えた
その顔が不意に歪んだかと思うと、今度は逆に抱き締められた
泣いているともむせているともつかない声で俺の名前を呼び、「ごめん」と繰り返した
何で謝るんだとか泣かないでとか言ったような気がするけど覚えていない
ただひたすら抱き締め、髪を、背中を、撫でていた
随分長いこと泣き喚いていたような気がする
私が静かになったのを見て取ったのか、彼が顔を覗き込み「大丈夫?」と聞いてきた
なんとか笑顔を作って頷いて見せ、掠れた声で何とか礼を言った
そして、もう誤魔化すべきじゃないと思った
可愛い弟分で後輩で相棒、いつか私の元を巣立って行くのだと決め付けていた
物わかりの良い大人の振りをして自分の気持ちを押し込めていた
だけど
あんなに強くはっきりと伝えられたら
こんなに強く抱き締められたら
もう自分に嘘なんてつけない、つきたくない
「ラディ、私も…お前が好きだ」
見つめ合っていたのはどれくらいだったか、どちらからともなく唇を重ねていた
- 04-166 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:21:35 ID:8lqXrryQ
- 重ねるだけだった口付けは互いを貪るように深くなり、溶け合うような感覚を呼び起こした
名残惜しげに顔を離し、少しだけ躊躇う様子を見せていたシーザだったが
ラディの顔を正面から見つめ、はっきりと告げた
「私を、抱いてほしい」
ほんの少し身体を強張らせたラディだったが、ひとつ頷くと口を開いた
「一つだけ、お願いがあるんだ …『シーザ』って、呼ばせて」
シーザは一瞬目を見開き、眩しそうに微笑んで頷いた
傷の手当てなどで見慣れていた筈の互いの身体にひどく興奮していた
剥ぎ取るように服を取り去って抱き合うと、火傷しそうな熱を感じた
普段はサラシに包まれているシーザの乳房に、ラディは顔を埋めた
くっきりした谷間に舌を這わせ、柔らかな膨らみに唇を沿わせ、赤みを帯びた先端を甘噛みする
その度にシーザの口からは吐息が零れ、ラディの髪と背中に伸ばされた指に力がこもる
左腕で身体を支えたまま、右手を両足の間に滑り込ませるとそこは既にじっとりと塗れていた
そのままシーザの秘所を指でまさぐると吐息はやがて嬌声に変わり、一撫でごとに身体を震わせた
初めて見るシーザの痴態にラディは「もっと見たい もっといやらしくしている所を見たい」と思わずにいられなかった
じっとりと湿り気を帯びたそこをもっと見ようと、足を大きく開かせ顔を近づけると
シーザは「やめろ…見るな……見ないで…」とラディの頭を手でどかせようとした
しかし普段からは考えられない程弱々しい声と力は却ってラディを煽るばかりであった
- 04-167 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:29:38 ID:8lqXrryQ
- そこは充血して赤く塗れ光り、小さく口を開けていた
ゆっくりと指を差し込むと身体は少し強張ったが、中を探るように動かし始めると震えに変わった
割れ目の上、小さな突起に触れると震えは一層大きくなり、声はもはや言葉にならなくなった
頭をどかそうとしていた手で縋り付き、制止しようとしていた口から甘い声を漏らしながら
震える身体をくねらせる様は扇情的としか言いようがなかった
シーザの身体がひとつ大きく震え、ぐったりと弛緩したのを見てラディは指を抜いた
身を起こしつつシーザをそっと抱き起こし、「俺のも…触って」と低く言った
ゆっくりと顔を上げたシーザは躊躇う事なくラディの陰茎を口に含み、舌で丹念に舐り始めた
意外な行動に驚いたラディは思わず引き離そうとしたがそれは叶わぬ抵抗だった
憧れていた年上の女が己の一物を銜え込んでいる眼下の光景と今までの興奮はいとも簡単にラディを追い込んだ
痙攣のような感覚が身体を通り抜け、ラディは自分がシーザの口内に射精してしまったことに気付いた
慌てて詫び、身体を離そうとするラディを制すると、シーザは「大丈夫」と微笑み再び口を寄せた
先端だけを含み、手で丁寧に触れると、それは直ぐに硬さを取り戻した
やがてシーザは口を離し、身を起こすと、一言だけ「来て」と言った
ラディは頷き、シーザをもう一度横たわらせると
濡れそぼった秘所を開かせ、先程まで指で探っていた場所に陰茎をあてがい、一息に埋め込んでいった
- 04-168 :その手を離す時 あの手を取る時:2007/02/18(日) 10:33:14 ID:8lqXrryQ
- 硬く瞼を閉じ、唇を噛み締めるシーザに「痛かった?」と聞くと「大丈夫」と返って来た
その返事が痛みを否定していない事に気付いたラディは一瞬顔を曇らせたが
「ごめん…止められそうにない」と言うと、叩き付けるように動き出した
シーザは自分に覆い被さるラディの腕にしがみ付きつつ、身体ごと貫かれる感覚を受け止めていた
熱く締め付ける感触はラディに焼き切れそうな快感を与え、
肉体のぶつかり合う湿った音はその耳にひどく大きく聞こえていた
ラディが一旦動きを止めて身体を抱き起こし口付けると、シーザは口付けに応えながら抱き付いてきた
シーザはラディの首につかまり、ラディはシーザの背中を支えつつ再び動き出す
シーザは動きに合わせてあられもない声を上げ、半ばうわ言のように
「離れないで…大好き…一人にしないで……」と繰り返した
ラディも段々息を荒げながら、呪文のように
「好き…大好き……ずっと離れない…」と呟いていた
シーザが一際高い声を上げて身体を震わせると、ラディは強い締め付けを感じ、己の精を放った
掠れた息を漏らすシーザを抱き上げ口付けると、その感触でさえ快感に変わってしまうのか更に身体を震わせた
ラディは自分より細く、華奢である事に今更ながら驚きつつシーザを抱き締め
かつて自分を導いてくれたしなやかな手をそっと握った
シーザはいつの間にか自分よりも大きく逞しい身体になっていたラディの背に片腕を回し
昔自分が引いた事もある手の、引き締まった指に己の指を絡めた
繋がったまま抱き合う2人に、真夜中の満月が光を投げていた
終
最終更新:2012年01月24日 09:32