05-140 :女マーテル受け:2007/08/23(木) 21:32:15 ID:TZEEpP6S
 処刑の途中で何か勘違い(?)した水島に庇われるという、突然の展開を前に、マーテ
ルは呆然とその場を見守るしかできない。

「なにか森の中でぎゃーぎゃー騒ぐ声が聞こえてくると思ったら…………よりにもよって、
こんなコトをしてたのか!」

 どうやら本気で怒りを感じているらしく、ものすごい形相でしっと団の面々を睨みつけ
る水島。

「いくらモテないからって、アベックをひがんで襲撃するだけじゃ飽きたらずに、か弱い
女性に大勢で暴力まで振るうなんて…………もともとカケラも評価したことはないが、ま
すます見損なったぞ!!」
「み、水島! 違うんだ、これにはワケが…………こいつは今はこんな姿だが、元はさっ
きの爆破魔の変質者で…………」
「なにワケのわからないことを…………! この状況で言い訳が通用すると思っているの
か!!」

 吹っ飛ばされて転がったしっとマスクが、起きあがって必死に弁明しようとする。
 しかし、水島は聞く耳持つ様子はなく、無言のまま手近にあった木を両腕で掴むと、そ
の怪力で根本からそれを引き抜いてしまう。

「さあ、覚悟しろ、変態ども…………!」

 怒りのオーラを発しながら、水島はその超重量の凶器を、男達に向かって振りかざす。

「ひいぃぃぃぃぃぃっ…………待て、話せばわかる…………! に、2号、お前もなんと
か…………」

 水島の剣幕に怯えるしっとマスクが、助けを求めるようにマーテルに視線を向けるが…
………マーテルは、無言でさっと目を逸らすのみだった。

「地獄で反省してこい!! 外道集団!!」
「ぎみゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっ!!!」

 その瞬間、しっと団の男達による阿鼻叫喚の叫び声と、骨の砕ける生々しい音とが、森
中に響き渡ったのであった――――。

05-141 :女マーテル受け:2007/08/23(木) 21:33:39 ID:TZEEpP6S
「――――あの、大丈夫ですか?」

 しっと団を全員倒した後、水島は改めてマーテルに声をかけてきた。

「は、はい…………」

 しっと団員たちの返り血を浴びまくりながら、爽やかな好青年風の表情で近付いてくる
水島に、いい知れない恐怖感を覚えつつ頷くマーテル。

(絶っっっっ対ぇぇ正体バレねぇようにしよー…………)

 そう、心に深く刻むマーテルであった。

「怪我とかは? 一人で立てますか?」
「え、ええ、大丈夫です」
「――――あっ! でも、あちこち痣があるじゃないですか。それに、縛られた痕まで…
………」
「ああ、これは…………なにしろ、宙づりにされとったのでねー…………」

 ちなみに痣の方はどちらかというと、まだちゃんと男の体だったときにリンチでつけら
れたものである。

「宙づり!? それは酷い! そんなことしたら、大事な神経が傷付いて手足に麻痺が残
ってしまうことだってあるのに…………後でちゃんと病院で見て貰った方がいいですよ」
「いえいえ、私こう見えても体は丈夫なんで、平気っす」
「いや、そういう問題ではないんじゃ…………」

  マーテルのズレたフォローに、思わずツッコむ水島。
そしてマーテルの場合「丈夫な体」なワケではなく、「どんな状態になっても奇跡的に
元に戻れる体」なだけなのだが。(そっちの方がすごいが)

「とにかく、あなたをうちの隊で保護しますので、この近くにある我々のテントまで来て
下さい。――――あ、申し遅れましたが、私はパッパラ隊所属の軍人で、水島といいます。
本当はこの近くにパッパラ隊基地があったんですが、生憎、今日の昼間、変質者に跡形も
なく爆破されてしまって…………とりあえず今は、テントを張って凌いでいる状態なんで
す」
「へ…………へぇぇ~…………それは大変ですねぇ…………」

 誰が変質者だ…………と言いたいところだが、ここはとりあえず調子を合わせておくし
かない。

「じゃあ、行きましょう。…………えぇと、なんてお呼びしたらいいですか?」
「な、名前? …………そ、そーですね…………」

予想外のことを聞かれ、咄嗟に思い浮かばずしどろもどろになるマーテル。

「マ…………マー子でっ! マー子でお願いしますっ!」
「マ、マー子さんですか? というか、お願いしますって一体…………」
「まあまあ、細かいことは気にせずに」
「細かいことか…………?」

 テキトーすぎるネーミングと態度の挙動不審さに、水島は訝しげな表情を見せたが、そ
れ以上の詮索はして来なかった。

「それじゃ、行きましょうか。私達のテントはこっちです」
「はい~」

気を取り直したように、野営基地の方向を指して歩き始める水島に、マーテルはとりあ
えず素直について行った。

最終更新:2012年01月24日 09:39