ブレーンバスター

ブレーンバスターとは、ブレインをバスターするものである。

有り体に言えばプロレス技で、かつてはバックドロップ、パイルドライバー、ジャーマン・スープレックスなどと並べて四大必殺技としてその名をとどろかせるメジャーな技であった。まぁもちろん、いわゆる古き良きプロレスというのは後世になって、レスラーたちの身体技術の向上やレスリング、柔道、アマレス等との融合によりより多彩、より繊細になっていったので、現在でのブレーンバスターは完全に繋ぎ技のひとつとして扱われている。しかしそれでも学生プロレスなどの場面においては、とにかく高々度まで人が持ち上がるという派手さから、未だに大技として扱われているものでもあり、日本などではプロレスリングノア所属の齋藤彰俊などが、相手を垂直に持ち上げてからしばらく落とさない、いわゆる「滞空式」のブレーンバスターなどを得意技としている。

技の形としては、相手を前屈させ、相手の頭を自分の片方の脇で挟み、空いた方の自分の手で相手のタイツの腰を持ってそのまま持ち上げ、相手の身体が上空を経由して背後に落ちるというものである。当然のことながら、この際に相手がリングにたたきつけられるのは背中から腰にかけてであり、全然ブレーンをバスターしていない。先に挙げたバックドロップ、パイルドライバー、ジャーマン・スープレックスのように、古からの代表的な技であったために、数々の派生系が生み出され、今日に至る。

その中でも「垂直落下式」というのはブレーンバスターの本懐であるところのブレーンをバスターすることに特化した形であり、技の入りは同様であるが、相手の身体が逆さまに垂直になったところで、自分の身体を真下に崩すようにして相手の脳天をリングにたたきつける、非常に危険度の高い技である。

しかしプロレスにおいてはもう一つ、代表的な技として「DDT」というのが存在する。これはそもそも、相手の頭を自分の脇に挟み、そのまま自分自身が背中をリングに向けて落とし込むことで、相手の頭を巻き添えにし、脳天をリングにたたきつける技なのだが、 こ れ に も 「垂直落下式DDT」というのが存在する。垂直落下式DDTは、技の入りは同じで、ブレーンバスターと同様に相手のタイツを空いた手で持ち、相手を逆さづりの垂直状態にして、自分の姿勢を落として相手の脳天をリングにたたきつける。垂直落下式DDTの代表的な使い手としては、橋本真也、プリンス・デイビッドなどが挙げられる。

この垂直落下式ブレーンバスターと垂直落下式DDTの違いは一言で言うと「足さばき」らしいのだが、記者もよくわかっていない。この違いがわからないままに安易な気持ちで「ブレーンバスターってなんか面白い響きじゃね、とりあえず文字列としてつかってみようぜ」と使用するとプロレスファン初心者は歓び、プロレスファン中級者は聞いてもいないのに語りだし、プロレスファン自称上級者は烈火の如く顔を真っ赤にして怒って詰め寄りまくし立てている間に肩を叩かれ振り向きざまに禿で髭の男にスタナーを浴び、プロレスファン玄人は黙ってあなたに両国国技館のチケットを手渡して「当日、空けておいてね」と語ることだろう。触らぬ神にたたり無し。にわか知識ほど恐ろしいものはないのである。



 

最終更新:2011年11月11日 00:16