――――4月6日、午後1時 東京
日曜日のこの時間帯、東京にある一つのコンサート会場では、絶大な人気を獲得しているアイドル歌手のライブコンサートの真っ最中であった。
天井にあるスポットライトが歌手に集中し、10代の若さが感じられる歌声が観客を魅了。後ろの大画面のモニターが彼女の歌に合わせた映像を 映し出す。
彼等は目の前の若い女性の歌を堪能し、それと同じくして彼女の可愛さに見とれる者も少なからず居る。
彼女の歌が終わりに近い所に行くに連れて曲はペースを上げ、歌が終わった直後に観客から盛大な拍手と歓声が飛び込んだ。
客席の反応に感動したアイドル歌手は観客達に手を振るという形でそれを返す。それをしつつ、彼女はステージから一旦姿を消した。
彼女は専用の控え室に篭り、ステージに上がった時に緊張していた疲れを解していた。ソファーに座り、マネージャーから差し出された缶ジュースを飲んでいた。
「お疲れ様、ライムちゃん。前半は良かったわよ?」
「あ、有難う御座います。この日の為に練習して来ましたから。」
缶ジュースをテーブルの上に置き、そのままリラックスを続ける。
そんな彼女の達成感が感じられる表情を見るマネージャーは、短期の微笑と笑顔で返し、コンサートの成功を祝う。
これからライブの後半に移る時間が迫っているにも関らず、二人の時間はお互いを祝い合うという形で潰していく事になる。ほんの少しだが、ある程度の時間が経つにつれ、アイドル歌手は時計を目視し、ライブの後半の時間が迫っている事を確認する。
「ぁ、そろそろ時間ですから私―――行きます。後半戦ですから、思いっきり弾けて来ます。」
「そう、その意気よ。頑張って行きなさい!」
マネージャーの返事を、背を向けつつ聞くアイドル歌手は片手を振って返し、この部屋を後にした。
やがてアイドルはまたステージに戻り、観客の歓声を浴びる。彼女は手を振って観客を魅了し、またしても多数のスポットライトの照明を集中的に浴び、その状況下で手持ちのマイクを口に近付け、歌い始めようとするその瞬間である。
客席の中に含まれている一人の男が右壁側の席に向かって片手で合図を送る。その周辺に座っていたもう一人の男はその合図に気づく。後に席から立ち上がり、ポケットから銃みたいなものを取り出し、ステージ側のアイドルに向ける。宇宙戦争映画で見かけそうな形状を象った銀色の拳銃だ。
其処から発射された光輪は次々と彼女の手足を拘束し、その光景を前にマネージャーと観客は驚きを隠せなかった。
「――――ちょっ、何これッ!?」
歌手が暴れる最中、銀色の拳銃を持った男とその仲間達がステージに上がった。そこで彼等が彼女の近くに集まった瞬間、紫色の光粒子に包まれ、彼等を異型の姿へと変貌させる。その姿は全身を金色に塗装され、瞳は緑色。顔は幻想的な物語に出てくるゴブリンを連想させる。
この姿こそが、彼等の本来の姿なのである。
その容姿を見た観客達は彼等を異星人と判断し、その一人は愛用していると思われる重火器のような物を天井に狙いつけ、撃つ。
光線が直撃した場所は天井に穴を開け、其処から出る瓦礫は客席に向かって落下する。それに恐怖を覚える観客達―――特に落下する瓦礫の下の位置に居る方―――は慌ててこの場から離れ、多数の瓦礫と電気はそのまま客席を直撃する。
「地球人類よ、この星の全ての防衛組織に伝えよ。この歌姫の命を救いたければ、大人しく我々からの連絡を待て。そしてその連絡に応じよとな!」
異星人はその言葉を残し、拘束したアイドル歌手と共に自分達が空けた天井の穴を抜けてこの場を後にした。
ある程度の時間が立つにつれ、パトカーが何台も会場前に止まり、警察の人間達は観客に此処で起こった事を聞く。後にこの事実はニュースの話題として日本中に広まって行くのであった………。
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最終更新:2009年05月02日 00:40