エピソード0


 宇宙………。
 森羅万象を含む天地の全体、そして世界の意味と、哲学等の何らかの視点から見て、秩序をもつ完結した世界体系、コスモスの意味を持つ。
 しかし、それは広義の中での意味である。
 天文学的に見る場合、宇宙は全ての天体、そして空間を含む領域を言う。銀河のような小宇宙も存在すれば大宇宙も存在し、それは遥かに大きいと考えられる。
 我々の住む地球は太陽系と呼ばれる領域に存在する惑星の一つであり、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星を含む惑星が太陽を中心として、周辺を回っている。
 太陽とその周りを回る惑星、その周りを回る衛星、そして小惑星や彗星が太陽系を構成している。
 太陽のように自ら光っている星も存在するが、それらは恒星と呼ばれている。
 恒星が集まって星団を形成し、恒星や星団が集まって銀河を形成している。銀河は単独で存在する事もあるし、集団で存在する事もある。
 銀河の集団を銀河団と言い、銀河団や超銀河団の分布が網の目状の宇宙の大規模構造を形成している。
 そんな説や意味をも持つ空間の中にある太陽系の中に、二つの光が高速で入り込んだ。
 一つは灰色に輝く光、もう一つは緑色に輝く光。灰色の光は、緑色の光から逃れるかのように飛び、緑色の光は、灰色の光を追うかのように飛ぶ。それらは直に地球が存在している周辺にまで飛行、それを一つの地球衛星ステーションのレーダーが捉えていた。



―――3月27日 日本時間 午後8:00 地球衛星ステーション“コウノトリ2号”

「チーフ!  ――――これを見て下さい!」

 オペレーターはそうを呼びかける後、そのチーフと呼ばれる人物は、オペレーターの右隣まで近づく。

「……如何した。何かあったのか?」
「レーダーに未確認飛行物体を二つ確認、真っ直ぐ此方に向かっています!」

 オペレーターの知らせを受け、チーフは彼の顔の右隣に移りつつもレーダーに顔を近づけ映る二つの未確認飛行物体の動きを目に通す。その反応の動きは後に、彼の眉間に皺を徐々に寄せていく。

「……オイ、ちょっと待て。何だこの速さは! それにこの動き、互いにぶつけ合ってるみたいに進んでいる。如何言う事だ?」

 チーフは視線をレーダーに合わせ続ける。しかし、その最中に別の乗組員が窓の外に顔を上げ、まるで幽霊を見たかのように目を丸くする。

「―――チ、チーフ! あ……アレを!!」
「如何した! ………――――!!?」

 彼が窓の外を見上げた後、皆の視線が窓の外に集中。
 後、二つの光がこのステーションに急速接近する。それを確認した彼等は身を伏せるかのような体勢を急ぐ。
 しかし、その光はこのステーションにはぶつからず、その周辺を通り過ぎるだけであった。
 二つの光はこの場でスピードを止め、互いにその身をぶつけ合う。それはまるで、地球とこのステーションを背景に一つの戦いを繰り広げているようにも見える。
 だとしたら、この戦いを見届けるのは、ステーション内の彼等しか居ないのだが……。
 二つの光は、ある程度ぶつけ合った後、互いに距離を取り、灰色の光からは赤く輝く光弾のような物を射出。
 しかし、緑色の光はそれを回避。
 そして光弾を回避し続ける中、緑色の光から、まるで何かの真空波を象った光波が多数射出される。が、しかし灰色の光はそれを全てかわす事に……。
 後に、灰色の光は今射出した光弾よりも、多少大きめの光弾を放出した。
 それに続くかのように緑色の光は光波を何度も射出。後、それらは二つの光の間でぶつかり、爆発を起す。
 その戦のような光景をステーションから目の当たりにしているチーフはこう呟く……。

「………一体、何をしているんだ。あの二つの光がやっている事は………まるで戦いじゃないか……。」

 後、灰色の光はステーションを目掛けて光弾を射出。その直撃を食らったステーション内は、強い振動に襲われる。

「左部アンテナ、全て破損! 右部損傷率40%オーバー!」
「………何をする気だ、あの光は……!」

 チーフは焦りつつも、自分達のステーションを攻撃する灰色の光を見上げる。
 だが、灰色の光は次にブリッジを目掛けて光弾を発射しようとする、それを目にした彼等は、遅かれ退避行動を急ぐ。
 勿論、間に合いそうにも無い。
 そんな中、ステーション内で彼らが絶望寸前の瞬間である。
 緑色の光がその間に入り、ステーションを発射された光弾から庇う。その直後、ステーション内の人間の目線は、緑色の光に集中する。
 そんな中、チーフだけが緑色の光の中に居る者の存在が見えた。

「―――緑は……巨人なのか……?」
「……チーフ?」
「……? いや、何でもない。それより、ステーションのカメラは無事か!?」
「はい、カメラは損傷を受けていません。無事です!」
「そうか。 ―――良し、この映像を撮れ!」
「……は?」
「聞こえないのか? この映像を撮るんだ!」
「し、しかし……この映像を撮って、如何するつもりなんですか?」

 オペレーターはチーフに疑問をぶつけるが、「良いからッ!」の返事で返されてしまう。
 疑問の表情を浮かべつつも彼は此処の機械を操作し、カメラ撮影に取り掛かる。
 緑色の巨人はその位置に居る状態で、灰色の光に再度光波を射出。後、灰色の光はそれをまたしても回避し、距離を取る。そして、緑色の光は上昇。後、灰色の光の頭上まで飛行後、灰色の光はまるで特攻を仕掛けるかのように、猛スピードで緑色の光に急速接近。
 しかし、緑色の光はそれを回避。後に光波を射出。そして、その直撃を確認した後、灰色の光に目掛けて体当たり。最後に項は射出の連続攻撃を仕掛ける。
 その攻撃が直撃した灰色の光は、地球の引力に引かれ、下に存在している日本に落下して行く。
 落下速度が上がり、やがて摩擦熱が出てくる。
 それを確認した緑色の光は、落下する灰色の光を追って、地球の引力圏に入って行く。
 その光景を、ステーションの人間はただ黙って見ているだけであった。

「………チーフ。これは、UFO同士の戦い………なんでしょうか?」
「―――いや、緑色は巨人だった。これは………何か前触れなのかもしれない。」
「前触れ………ですか?」
「……そうでなければ、之を如何証明すりゃ良いんだ!? さっきのヤツ………カメラに収めたな?」
「はい、大丈夫です。」
「良し、直に地上と回線を繋げ。それが終わったら、私の指示で今撮った映像を送信するんだ!」

 チーフの指示を受けたオペレーターは「了解ッ!」の返事後、いそいそと手元の機器の操作のスピードを上げる。後、彼は他の乗組員にも指示のコールを出すのであった。


―――3月27日 午後8:00 鹿児島県薩摩半島南東部“池田湖”

 激しい暴風雨等が続いているこの湖の付近で、灰色の光が落下し、後にそれは道路付近の山中に激突。
 その振動と崩れによって、周辺を走っていた1台の車が生き埋めになる。そして、ある程度時間が過ぎた後、灰色の光は起き上がるかのように動き出す。そして、その光は近くの湖へと沈む。
 その中で、灰色の光はこの湖の中に何かを残し、姿を徐々に消して行く事に……。
 後、暴風雨は1時間くらいで止み、その直後に緑色の光がこの湖の付近に到着。周辺を見回すかのように、その付近を飛び回っていた。
 それがある程度続いた後、緑色の光は何かを感じ取ったのか、崩れによって埋れがある道路の方に飛び、緑色の光の中に居る巨人は、其処から泥を取り除き、生き埋めになった一台の車を救い出す。
 気を失っているが、中に居る一家が全員無事である事を確認すると、車を抱え、その道路から離れる。
 後、付近の宿泊施設を発見し、其処の施設の駐車場に着地。
 そして、抱えている車を駐車場に置く。
 その後で、緑色の光の中の巨人は、車の中で気を失っている14歳くらいの少年を見る。巨人は後にその身体を縮小していき、やがてその光も消え、車の中の少年とほぼ酷似する姿に変わって行く。
 少年はその後、歩いてこの駐車場から去り、車は後に、宿泊施設の付近で勤務している従業員によって発見される。
 ある程度の時間が経って行く中、少年は灰色の光が沈んだ湖を見つめつつも、こう呟く………。

「―――逃ゲ…………ラれタ…………。」

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最終更新:2010年03月06日 18:38
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