夜半。一心不乱に回し車で走るハムポン・・・を見つめながら
僕はぽつりとつぶやいた。
「ハムちゃ・・・ハムポン。レイポンが全然答えてくれないんだ」
もう一週間がたとうとしている。どんな事があろうと、喧嘩しようと
晩御飯の洗物は翌日には綺麗に洗われていた。
「ふ・・ふん。気になっただけよっ」
朝目覚めると聞きもしないのに、そんな答えが返ってきたのに・・・
「レイポン・・・そんなにいやだったのかなぁ」
一心に回し車を回すハムスターを見つめていると
「・・・なにやってんだか♪」
背後から弾む声がかかった。
「レ・・レイポンッ」
「レイポンいうなっ」
いつものあの声が返ってきた。僕はほろりと流れた涙を見られたくなくて、
ゲージに顔を向けた。
「・・・ふふ。ちょっと事情があって留守にしたの。寂しかったでしょ?ねぇねぇ」
たぶん僕の情けない顔を見たのだろう。悦に入った声が響く。
「あ・・ああ。帰ったんだ?ふーん」
ハムスターが沈黙の中、たまに様子をみながらカラカラと回し車を回した。
夜半にその音だけが響いた。
僕は事情は聞かなかった。レイポンもいわなかった。
ハムポンはひたすら走った。
それでいい。それが僕たちだったから。
最終更新:2007年05月01日 04:01