ハムポンがその日は巣に引きこもったまま出てこなかった。
折りしも日曜日。僕は家にいて、レイポンと他愛ない会話を楽しんでいた。
誰もいないはずの台所から鼻歌まじりに洗物をする音。
台所に追いやられ、誰もいないはずの居間から鼻歌まじりに聞こえる洗濯物を干す音。
いつもの風景だった。何も変わらない。
だけど・・・
「あら?ハムポンがキャベツ食べてないわ」
ただ、ハムポンのためだけに昨今高いキャベツを買わされていたのだ。
「え・・・そう?ああ、何も食べてないね」
僕は見えないレイポンと顔を見合わせた。これはおかしい。
いやしんぼのハムポンがこの時間、食べ物に手をつけないなんて。
「・・・病気なのかしら」
すっかりしょげかえった声が響く。僕の胸もすっかりそれで一杯だったが、
声をからして。あえて陽気にいった
「な、何言ってんだよ。ハムポンにかぎってそんな事あるもんかっ」
根拠なんて何もなかった。本当は胸が張り裂けそうだった。
ハムポン・・・どうしたんだハムポ
プーゥゥゥ
高音が響いた。沈黙の部屋の中に。
それにともない、あわわっと巣から顔を出すハムポン。
鼻を両手で何度もこする。その姿はまるで
『くっちゃーいっくちゃくちゃっっ』
といっているようだった。巣の綿から顔を出したハムポンは、鼻をくんくんさせると
エサ箱のキャベツ、固形のエサに突進し、食べ始めた。
「・・・・なんだよ」
「・・・あはは」
確かに、僕たちは顔を見合わせて笑った。
最終更新:2007年05月01日 04:07