今日は家で今月の「かわいいハムスター」をごろんと横に
なって眺めていた。
いつ見ても素敵な雑誌だ。小さかった頃、まだハムちゃんだった
ハムポンを写メで撮り、投稿したりした。
掲載された雑誌は今も宝物だ。
「ふむぅ・・・むー?・・・・ふむふむ・・・・」
さっきから、耳元で鼻息が荒いのは、レイポンだ。
僕の後ろから雑誌を見ているらしい。
すぐ耳元でふむふむ言われるのは、何か気恥ずかしい。
だが・・・それ以上に僕には気がかりな事があり、実は雑誌にも身が入らなかった。
もうすぐバレンタインデーなのだ。レイポンはどう思っているのだろう・・・
「レ、レイポン?」
「レイポンいうなっ・・・なに?」
あまり気のない返事なのは、読者投稿コーナーのハムスターたちに心奪われている
からだろう。
「・・・ん。いや・・・なんでもない」
「・・んー。ん?・・・・んんー?んふふ・・・何よ?」
まずいな。とてもいやな雰囲気だ。気づかれたのかも知れない。
「な・・・なんでもないよ」
ページをめくる指が自分のものではないようにぎこちない。
顔が熱いのがわかる。
「んー?んんー?気になるじゃないよ、いいなさいよっ」
含んだ笑いで声が弾んでいる。意地の悪い奴だ。
「レイポンはさ、その・・・桃の缶詰ありがとね」
「レイポンいうな。・・・んー?ああ、たまたまあったからね。で?」
カラカラ・・・・カラカラ・・・・
沈黙の降りた部屋に、ハムポンが回し始めた回し車の音が響く。
「でって・・・それだけだよ」
「・・・ふふん。そういう事にしておいてやるわ」
含み笑いの中に勝ち誇った響きを残し、レイポンは引き下がった。
レイポンは多分、女の子だろう。声から察するに同年代だと思っていい。
今まではハムポンの世話をしてくれる、便利な存在くらいにしか思っていなかった。
だけど・・・レイポンは僕をどう思っているのだろう。そして僕は・・・
「・・・・これが答えかっレイポンーっっ?!」
「なっなによっっきなこチョコなのよっっ」
もうレイポンとは2日口を聞いていない。きなこチョコっていわれても困る。
最終更新:2007年08月30日 16:54