「この桜を一緒に見るのもこれで最後だね」
風に舞う花弁が彼女の身体をすり抜けて――
「……もしかして泣いてるの?」
楽しげな笑みを浮かべて僕の顔を覗き込む――
「メソメソおっとこらしくないな~、最後ぐらい笑いなさいよ」
そう言って桜の木の下を踊るように歩くその頬に――
「約束! もう二度とわたしのために泣かないで!」
流れる雫を見た気がした――
振り向いた彼女はいつもの笑顔――
「わたしはもう側にいることはできないけれど」
可愛いと言えばいつもみたいに怒るのかな――
「大丈夫よ、あなたはわたしが愛した人だもの」
あれから五年が過ぎた
君を失ってからの僕には、この世界はとても色褪せて見えていた
でも、きっと大丈夫
君がくれた笑顔を、僕はまだ憶えているから
最終更新:2008年01月03日 06:12