ひな祭りに半額で売っていた豆を買っていったら
えらい事怒られた。レイポンとは以来口を聞いていない。
ハムポンの世話はしているから、とりあえず文句はないが、まかりなりにも
同居人だ。何か気まずい。

そして、こんなときは彼女の知恵を拝借だ。
「・・・・あっそう」
斜め後ろを見つつ、吐き捨てるようにいう霊感少女。

「どうにかならないだろうか?」
どうやら、僕の生活の中で、レイポンとの他愛ないやり取りが大切なものに
なっていたらしい。
「ふーん・・・ちょっと待ってね」
つと、僕の額に指をあてがう。一瞬だったのでそのまま指をあてがわれてしまった。

「・・・どう?これで話できるっしょ」
「・・・・?」
「・・・余計なことしないで」

学校でレイポンの声を聞いたのは、始めてだ。
っていうか、いるのだろうか、ここに。ハムポンの世話もせず。

「むくれてるけど?」
「レイポン?」
「ほっといて」

今まで聞いたことのない、冷たい声だった。怒ってるのだろうか?

「レイポン。すまなかった。ひなあられだったんだね」
「いいわよ別に。もうすぎた事だし」
棘だらけの声だった。いや、氷のような感じさえする。

「・・・くっだらない。帰るわよ」
「・・・いなくなっちゃったね」
後半ニヤニヤしつつ眺めていた霊感少女がいった。
「怒ってるのかな」
ポカーンとしている霊感少女。なんだというんだ。相談相手を間違えたのだろうか。

「・・・なんか買っていってやんなよ」
もういいやという感じで立ち上がり、振り返りもせずいってしまった。
「あーあ。なにやってんだろあたし」
そんな呟きは当然聞こえなかった。

「た、ただいまー」
気まずいながらもいつものように家に帰ると、ちゃぶ台に紅茶が入れてあった。
「あ、あのね。安かったから・・・」
レイポンが唐突に話しかけてきた。ほっとしつつも僕もスーパーの袋を出す。
「あ、ありがとう。これ・・・チョコ。・・・とハムポンのご飯。チョコ食べていいよ」
「う・・うん。ありがとう」

紅茶をすすりつつもなんか落ち着かない。でも、仲直りはできたのだろうか。
ハムポンはまだ明るい夕暮れ。新しいご飯をおいしそうに食べていた。
最終更新:2008年02月13日 03:05