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「またずいぶんと遅い帰りだねえ……」
「あー、うん。ちょっとサークルがあったからさ」
「さあくる?」
「えーと、なんて言えばいいかな……」
「ああ、別に言わんでええ。どうせ聞いてもわかんねし」
「なんですぐ拗ねるんだよ……」
つまらなそうにコタツに潜りなおしながら少女はじとっ、とした目でこちらを見る。
一人きりでつまらなかったのは分かるが、俺にあたられても困るというものだ。大学だってあるし。
だいたいそんなに暇ならば本来いるべき場所に帰ればいいだろうに。

「退屈なら昔みたいに猫抱いて縁側でひなたぼっこしてたら?」
「この部屋のどこに縁側がある? どこに猫がおる? おるのは背が伸びた悪ガキだけさね」
「そんなことない。たまにゴキブリもいる」
「威張れることかいっ!」
があっ、と大きく口をあけて少女は凄んでみせるが、如何せん迫力が無い。
黒々とした髪を三つ編みにしたままドテラを羽織っている姿はいっそ微笑ましいほどだ。
昔はこの人に怒られるとすげえ怖かったんだけどなあ……。

「でさ……まだ帰らないの?」
「ふん。あの宿六が頭下げてくるまで許すもんかね」
「やどろく?」
「ああ、今の子ぉ等にはわからんか。そうかそうか、わからんかw」
「さっきの仕返しかいっ」
意地悪そうに微笑む表情は、不思議なことに俺の記憶と一致する。
俺はこの人の年若い頃の姿を知らないはずだが、そこはやはり同一人物ということだろう。

「じゃあ、じいちゃんが来たら適当なところで折れてあげなよ? ……ばあちゃん」
「その呼び方はやめい」

というわけで。祖母、絹さん(享年78歳)の現状をお送りしました。
最終更新:2008年04月07日 02:50