俺は寺社仏閣マニア
全国各地の寺社を訪れ写真を撮るのが趣味だ
時には撮影禁止の稀少(レア)仏像をパパラッチすることもある
今日も狙った菩薩をファインダーに捕らえた
「スナップ・ショット!」

現像が楽しみだ

む、そこの観音
撮影はご遠慮くださいだと
蛙のように舞い・・・今だ!
「フロッグ・スマッシャー!」
「あ、今撮影されたかた」
ゴキブリのように逃げる!

現像が楽しみだ
「ちょっと待ちなさい!」
何!? 伝家のフィニッシュ・ムーヴ
フロッグ・スマッシャーがしくじったとでもいうのか?
どこだ?追っ手はどこにいる?!
「まったくどこ見てんのよ!」
いてえ!!
ごんべえの泣き所に衝撃が

うおっ。
目線を下げるとツインテールの女の子が仁王立ちしていた。
ぬお、身体の淵が曖昧というか地面が透けてるような・・・
「なんだぁ? おまえ、透けてんのか?!」
「ちょっとぉ、じろじろ見ないでよ。どこ見てんの」
そう云って少女は胸の辺りを手で隠し、身を捩った。
なんか肩口の辺りに浮いてる青白い炎?みたいなのも一緒に憑いて動いた。


「ソレ、何だ??」
「ちっ、そんなことより、あんたよあんた。波長が合うからってコイツが云うから
見てたら、くっだらない仏像ばっか写してさ。少しは自分も写ろうとかいう気はないの」
青い炎を指差した手を払われ、舌打ちされ、眼前に指さされて、自分の肩口の青い炎を指して、
次々と国宝や重文にナカユビ立てたり舌を出したり、忙しないヤツだ・・・。
「いや、ほら、一人だしさ。俺なんか撮ったって・・・さ」
いぢいぢとカメラをいぢる。
「カノジョとツーショット! とかなら解るけどさ、ヤロー1人が仏像バックにスマイルは
ありえねーでしょ、フツー」
「ねぇ、ホントにこいつじゃなきゃダメなの?」
青い炎に向けて女の子が小声でしゃべる。
炎の中に一瞬、人の顔のようなモノが垣間見えたが、すぐにヴォワァっと燃え盛り
顔らしきモノは消えた。
「ふぅ、仕方ないわねぇ」
女の子が肩を竦めると、やっぱり青い炎もゆらゆらと上下に揺れた。
「とにかく、あんた、写真に写りなさい」
仁王立ちの女の子がビシィと指をさす。その指の先はもやもやとしている。
「え・・・?」
なんなんだろ、この娘。初対面なのにツンツンと突っかかってきて。
いくらおいらが少女スキーだからといって、ああ、でもかわいいのはかわいいねぇ。
こうファンシーなかわいさとアダルティーな美のマーブリィーなブレンド。
だけども余分なアクは一切なしみたいな。
はっ!? ひょっとして、幼い頃に生き別れた義妹なんじゃ?!
否否、それは昨晩ズルズル泣きながらハァハァしたエロゲーw
そうじゃなくてだな、アレだよ、見た目は○学生、でも18歳以上ていうry
「いてぇ! なんでまた・・・」
またもごんべえ。
「気配がした」
「はぁ?」
「ヘンなこと考えてただろ」
「ヘンなことって・・・なんですか」
いつのまにか敬語になってた。
小銭入れから30円出して線香を手に入れた。うーむ・・・あまり考えたくはないが、
ひょっとしてこの娘って・・・
「ちょつとぉ!煙が顔にかかるじゃない」
線香を突き立てようとした手が止まる。えー・・・そんなこと云ったって・・・。
足元に蹲る少女。ハァハァパンツが
「あたしさ、ずっとここにいるわけ」
パンツをハァハァ見られてるのも気付かずに*ハァハァ*少女はぼそぼそと語り始めた。

「よく解んないんだけど、ここから出られないのよ」
ボクはそっと少女に触れてみた。
!!
ゾクっと物凄い寒気に鳥肌が立った。けれど、それだけだった。ボクの手はすぅーっと
確たる抵抗もなく少女の身体の中を通過していった。
それに気付いた少女が俺にすがりついた。
「お願い!ワタシをここから出してええ」
ああああ・・・ちょっと色彩と目つき怖いけど角度によってはかわいいよ少女。
その時、少女の肩口でゆらゆらと燃える青い炎がヴォアっと膨れた。
「もし、お兄さん」
振り向くと怪訝な表情の僧侶が顔色を覗っていた。
「顔色がよろしくないですな。よほどのお悩みがおありとお見受けするが、よければ
わたくしがお話を伺いますよ」
「ちょ、なにをすrcヴぃぶおんjl」
枯れたような坊主のくせにやけに力が強く引き摺られていく。
ひそひそひそひそ。
え?なに?
「いや、あいつさぁ、仏像に向かって一人でずっとしゃべってんだよ。アブネーよ」
にげて・・・
耳元で少女の声が聞こえた。俺は立ち止まる。僧侶が振り向く。いまだ!
「スナップ・ショット!」
白光が僧侶の目を焼く。
「ぐぎゃあああああああぁぁぁぁぁlbsjんべx」
急速に日が翳る。
湧き立つ黒雲が頭を掠めんばかりに垂れ込める。
なんだ?何が起きた?
「今よ!早く
少女!? 差し出された手
うわああああああああああ
骨ばった坊主の腕がギリギリと俺の足首を締め付ける。
少女が手を握る。
随分と艶かしい感じがした。
俺は坊主の腕をカカトで思い切り踏みつけた。
さすがは3万円。攻撃力は抜群だ。

薄暗い見慣れぬ土地を俺は少女に手を牽かれ駆けた。
何時の間にか人声は彼方のモノとなり
全身に纏わりつくような霧雨が俺を染め始めた。
「ちょっと待って!」
たたらを踏みながら止まると、剥き出しでぶら提げていたF60Dを仕舞おうと
方膝をついた両腕の隙間から、少女の眉根を寄せた顔がぬと出てきた。
ビビクン!!?
「だめよ。あなたが写るまで」
カメラを手にガクガクと立ち上がると、少女の眼前に股間が来たがもうそろそろエンディング


しゃくしゃくと土の道。
遠雷に顔を上げると、一面の墓。
そこで初めて嫌な予感がし、総身がぶるりと震えた。
子供の頃によく感じていたあの妙な感覚。
その道の先には猫の死体があった。
その日は遊べる友達が誰もいなかった。
あの席で**ちゃんが怪我をした。
長じるにつれそういったことは微塵も感じなくなっていったのだが。

「ねえ、どこまで行くの?」
声色の変化に気付いたのか、ゆっ・・・くりと
ふりかえり
「いや!むぐう」
よくないことだ。どうしたということだろう、これは。
だれか、だれか、
押さえつけられた全身のうち唯一自由である瞳を彷徨わす。
真っ黒い鳥が。
紅く染まる。
声が。
「写真撮るだけっつっただろハァハァ」



                        (了)
最終更新:2008年04月07日 03:25