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「こんばんわ」僕はその少女に声をかけてみた。
いつも、公園で一人ブランコに乗っている少女。
寂しげで、いつも一人きこきこブランコをこいでいる。

「私にちかよらないで」少女はそういった。
「だってさびしそうだったから」僕は素直にそういった。
「私は死んでるの」
そう、その少女は幽霊だった。
僕はいわゆる「見える」人。俗に子供の霊は恐ろしいという。
それは、子供の霊は寂しさと無邪気さをもって、心を許したものを死の領域に引きづりこむからだ。
だが、僕は声をかけてしまった。
「ね、なんで、成仏しないの」
「私の勝手でしょ。あっちいって、のろうわよ」
「のろわれたくはないけど…でも放って置けないんだ」
「うぬぼれやね…。あなたに何ができるの」
「話し相手」
「……」少女はそれきり無言でまた、きこきことブランコをこぐ。
僕はとなりに座って同じようにブランコをこいだ。

「僕ね、妹がいたんだよ」「…」無言の少女にかまわず僕はしゃべりだした。
「ちっちゃいころ、親が離婚してね。俺は親父に引き取られ、妹は母さんのほうさ」
「妹はまだ、赤ちゃんでさ。僕の顔なんて覚えていないんだろうけど」
「でさ、自分の母親を悪くいうのもなんだけど、本当にひどい人だったんだ」
「妹を連れて出て行ったものの、新しい男をつくってさ、妹の面倒を見なくなったそうだ」
「僕はそのころ、親父のおかげで学校を通わせてもらい、幸せにぬくぬくと育ったんだよ」
「僕はおぼろげながら妹のことを覚えてて、それで会いたいと思っていたんだ」

きいこ、きい…こ、きぃ…

少女のブランコの音がとまった。僕はそのまま言葉をつなぐ。
「で、僕は母さんを探してさ、妹に会うつもりだったんだ」
「いろいろ手を尽くして都内はもちろん県外も飛んだよ。うわさを頼りに自分の足を使ってね」
「そして、見つけてみたら、母さん、僕の近所に住んでたよ。わらっちゃわない?」
「…妹さんにはあえたの?」初めて少女が僕にたずねた。
「…う…ん、会えたといえば、会えたし、会えなかったといえば会えなかった」
「…どういうこと?」少女がブランコから降りて、僕の横に来た。
「妹は事故でもういなかったんだよ」
「母は妹を置いて、家を空ける日が多かった。妹はさびしくて、さびしくて、それで、父親に会おうとしたんだね。」
「それで、家を飛び出して当てもなく歩いて、車に引かれた。この公園の目の前でね」
「軽かった妹は大きく跳ね飛ばされて、このブランコのところで倒れていたそうだよ」
「ひどい事故だったはずなのに、体はきれいだったんだって。母さんはそれが救いだと言っていた」

「勝手な母親ね…」
「母さんはそれから改心して今でも妹の冥福を祈っているよ」僕は少女に手を伸ばし、ひざの上に乗せた。
「ち、ちょ…、ちょっとなにするのよ!!」僕はぎゅっと抱きしめる。
「僕は知らなかったんだ。妹がそんな寂しさを感じていたことを」
「こんな近くでずっと、寂しくブランコをこいでいたことを」
涙があふれてきた。
じたばたしていた少女は僕の涙をみて静かになった。


「妹の…」

「え」

「妹の名前は?」少女は僕を仰ぎ見た。


「…あさみ…。おまえだよ…」


「いつまで抱きついてるのよ!! ロリコンのシスコン!!」少女は僕を振りほどき僕のひざから飛び降りた。
「のろわないであげる!!」「え」少女は僕にぴたっと指をすえて言い放った。
「その代わり、あなたにとり憑くんだから」「え」
「な、なによ、文句あるの? あなたが語りかけてきたんでしょ。私は成仏の仕方忘れてるんだし、責任持ちなさいよ」
「あ、ああ」つい、うなずいてしまった。

あさみは僕の背中を押し、ブランコから降りると僕の手を握った。
小さな手。もう、未来をつかめない手。
僕はその手をぎゅうっと握り締め、帰路についた。

-END-
最終更新:2008年04月07日 04:08