三月十二日
先週からの正体不明な疫病は未だ鎮静化しない。
既に死者も出ている。
感染元も抗体もよく分かっていない。
村中がピリピリしている。

三月十四日
政府から医療団が派遣される。
しかし、すぐに撤退してしまった。
ワクチンを持ってくるといっていたが本当なのだろうか?

三月十六日
子供たちが森で狼男に出会ったと騒いでいる。
疫病の不安から集団幻覚でも見たのだろう。

三月二十日
隣家の夫婦が感染した。
村人の約三割が病に臥せっている。
そろそろこの村からの退去を検討しなければ。

三月二十一日
再び狼男が現われた。
村中総出で銃を撃ち追い払う。
現物は初めて見たが伝承以上の醜さと獰猛さだった。疫病に加え狼男。
もう沢山だ。
明朝村を出よう。

三月二十二日
村からの道は全て封鎖されていた。
防疫軍隊に阻まれ家に戻される。

三月二十四日
村中の牛が姿を消した。
この村は呪われてでもいるのだろうか?

三月二十五日
森で牛の死体が見つかる。
傷跡から判断するにあの狼男の仕業に間違いないだろう。
喰うわけでも無しにただ殺すだけというヤツの残忍さに戦慄した。

三月二十七日
ついにあの狼男が人を襲い始める。
向かいの末娘と靴屋の息子がヤツに噛まれた。
幸い軽傷だが疫病とほぼ同時に出現したあの悪魔。
感染元はヤツなのではないか?

三月二十七日
狼男の被害がさらに増える。健全者のみを狙っているのを考えるとヤツが疫病を広める意志を持っているのは間違いないだろう。
村の男達で山狩りするも不発。

三月三十日
政府より通達が届いた。
医療の為防疫部隊を明日派遣するので
村人は全員待機しておくようにとの事。
狼男の駆除を要請するも一笑に付される。
とにかくこれで疫病の方がなんとかなりそうだ。

三月三十一日
いつまで待っても防疫部隊は到着しない。
我々は見捨てられたのだろうか?

四月一日
村に続く道の途中で防疫部隊が壊滅しているのが発見された。
傷口を見ればあの悪魔の仕業なのは一目瞭然だった。
再び山狩りの準備をする。

四月二日
ついにあの狼野郎を仕留めた。
昨日の戦闘で傷を負い動けなくなったヤツが森で見つかる。
全員で鉛玉をブチ込んでやったがなかなか死なないので火を放ち灰にしてやった。

四月三日
政府と連絡し明日再び防疫部隊が来る。
これで災厄の日々も終わる事だろう。

 ―四月四日、某所

C「出立準備、整いました!」
A「ご苦労、ではこれより滅菌作戦を開始する。各自、持ち場に戻れ」
B「火炎噴出機の数は大丈夫かね?」

C「問題ありません。しかし少佐…村人は全て処置…しなければならないのでしょうか?」
A「止むを得んのだ。あそこまで感染が広がってはな」


C「…はい」

A「…」
B「まぁ、我々の研究室から漏疫したウィルスが原因とは言えんわな」
A「マスコミもうるさい。村ごと無かったことにするのが一番いい手段だ」

A「で、隊員に射つ予防ワクチンの方は?」
B「なんとか間に合ったよ。陰性質のフォロノギアから期成できた」
A「?」
B「極軽微な狂水病の元体だよ、極端に言えばその辺りの犬に噛まれれば抗体が出来て疫病への免疫が強まるって訳だ」
A「もっと早く分かっていれば!」
B「仕方なかろう時間が無さすぎた」

B「ああ、それと少佐。あのウィルスは畜牛を媒介として感染しヒトウィルス化する。予防しているとは言え、あの村の牛には近寄らん方がいい」

A「ご忠告どうも。ところで、四日前の滅菌作戦を阻害したあの人型生物もまさか…?」
B「いや、あれは知らんよ。出来たら死体を回収してきてくれんかね?」
A「出来たら、な」
最終更新:2008年10月02日 18:08