雪女の災難


私は雪女だ。

この雪山に迷い込んだ遭難者を幻惑するのが私の仕事。
遭難者が男前なら凍り漬けにして住みかに飾る。
醜男ならそのまま殺して雪の中。

まぁ、気分が良い日なんかは麓の町まで案内して帰してやる。
その辺は気分次第だ。

しかし、今日の来訪者達は随分変わっている。
全員がノボリとハチマキを締めて旗まで持参している。

…ツンデ霊ハンターズ…?
一体何なのだろう、気味悪いほどの熱気を放っているが。

とりあえず面倒だから殺してしまおう。
私は彼らの前に姿を現わす。

『ツンデ霊キタ―――(゚∀゚)―――!!』
一様に歓声を上げる彼ら。(何だ!?)
「ツインテールはッ!?金髪のツンツンは?」
「モフモフ!モフモフ!」

奴らは口々に意味不明なことを叫びながらぐるりと私を取り囲むと

   ∩
(゚∀゚)〃ツンデレ!
  ⊂ツンデレ!

ナチスもかくやと言うような熱狂ぶりで腕を振り上げ大合唱。

(…何こいつら…すごくキモい…)

本能からくる生理的嫌悪感を感じた私は氷漬けにしようと奴らに氷の息吹を吹き掛けた。

『ツンキタ―――(=゚ω゚)ノシ!!』
なぜか歓喜する彼ら。

「ツン大好き!俺、ドM!むしろ萌えー!」
「うはWちょW、これツンてかS」
「何このクーデ霊、激モエスW」

最大出力をお見舞いし、何とか凍りつかせる事が出来たが
処分はどうしよう?
その事に思い至り私は途方にくれた。

①住みかに飾る。
論外だ。見るのも汚らわしい!

②粉々にして雪の下に葬る。
しかし触るのも嫌だし、埋めた後何か変なモノが生えてきそうだ。

③テリトリーから追放
これが良いだろう、さすがに懲りただろうし…本音を言えば
これ以上この気持ち悪い生き物達に係わりたく無い。

私は奴らを蹴り転がして麓の町までやってきた。
おっと、二度と来ないよう私の真意を伝えておかねば。

「別にあんた達を助けた訳じゃないんだからね!
私の縄張りで死なれても気分悪いってだけよ!
二度と来ないでね!ふん!」

よし、バッチリだ。
これで平和な日々が戻ってくるだろう。

あれから3日後。
奴らは10倍の数となって押し寄せ私の周りでツンデレ!ツンデレ!の大合唱をしている。

最終更新:2009年09月29日 22:42