○月×日
本日、居住者を部屋から追い出すことに成功する。これで幾人目になるか。
気の強い、やかましい女であった。が、わたしにかかればなんのことはない。
強がったところで、心は、ぽきり、と折れた。

決まり手:風呂場を血塗り



○月▲日
早くも新しい入居者が来る。くだらん。
小手調べに“ぽるたぁがいすと”一発。男のくせにこれだけで泣くか。呆れた。
どれくらいもつやら……。見物だ。



○月○日
夜中、金縛りをお見舞いする。完全に引き攣っておる。
こいつは、情けなさ過ぎる。この分なら、2~3日中に退去か。

決まり手:金縛り



○月■日
こいつがまだ部屋にいるのはどういうことか?
そわそわと周りを窺って、間違いなく怯えておるが。
壁から腕を数十本程突き出して見せる。大泣きで警察に電話しておる。馬鹿かこいつは。



○月○日
極端に怯えるくせに、まだ退去せぬ。
部屋中、血塗りにしてやろ。朝、起きた瞬間に気絶しおった。つまらん。



○月△日
部屋中にお札を貼っておる。阿呆。貼ったそばから剥がしてやろ。
涙目で震えておる。本物の馬鹿、か。



○月□日
なかなか本格的な霊媒師を連れて来た。こいつにも脳味噌はあったらしい。賢明な判断ぞ。
が、こいつの馬鹿の“きゃりあ”が段違いなように、わたしの幽霊の“きゃりあ”も段違い。
「わたくしでは如何ともし難く……」だと。当然じゃろ。



×月×日
枕元に“ふらいぱん”を置いて寝ておる。何がしたいのかこいつは。
……武器のつもりだろか。その“ふらいぱん”でちょっと小突いてやろ。また泣くか。

気は弱いが心は折れぬ、か。



×月▲日
部屋の隅に神棚。“しゅうくりいむ”は供え物のつもりか。
馬鹿は馬鹿なりに、わたしを祀るか。こんなことをした奴は初めてか。殊勝な心掛けぞ。

『供え物は、胡桃餅が良い。洋菓子は好かん。よく覚えておけ馬鹿が』

壁に血で注意書きしておいてやろか。気絶しておる。まあよい。よく読んでおけ。



×月○日
馬鹿が神棚の前で独り言、かと思えば、わたしに言っているのか。

「怖いことしないでくださいぃ……」

こいつは馬鹿ぞ。



×月■日
早々に胡桃餅を供えたな。愛い奴。



×月○日
恋人に振られたか。当たり前ぞ。お前のような馬鹿。
あんな女にはもったいなかろ。
めそめそと情けない。いつまで泣いておるか。男なら、女の十人や二十人、なんでもなかろ。



×月△日
まだ泣くか。

『胡桃は飽きた。餡を持て。漉餡が良い。いつまでも泣くなこの馬鹿が』

慌てて買出しに行ったか。
甘やかしが過ぎると男子は育たぬと言うが……どうしてもな。



×月□日
「失恋なんかに負けるものか!!」

偉そうに一人で何をほざくかこの馬鹿は。
しかし、男負けぬのは良いことぞ。良い面構え……ましにはなった、か。



結(某月某日)
………………この馬鹿にするか。丁度、背中は空いておるようだしの。

わたしに憑かれるのだからこいつも文句ないだろ。
ふふ、わたしが憑くからには、どんなことにも負けぬぞ。
健康、学業、仕事、何にでも勝つ。
そこら中に蔓延る悪神・悪霊の類なんぞ、わたしが一睨みもすれば土下座じゃ。
安泰も安泰じゃ。

まぁ、……ふふっ。恋人は、できんだろがな……ふふふ……。
わたしがおるから……良かろ?
最終更新:2011年02月28日 22:42