只今、肝だめし開催中。場所は、出ると噂の旧校舎。
通常、男女ペアで行うのだが、僕はくじであぶれたために
一人で長く暗い廊下を歩いてた。
まあ、僕は、幽霊なんて信じていないから平気だけどね。
 コースも中盤にさしかかったところ、突然目の前に女の子が現れた。
年は十代後半位、シャギーの入ったボブカットの似合うなかなかに可愛い女の子だ。
問題は、その全身が透けていること。残念ながら、服だけじゃない。
          • でやがった。



「きゃーーーーーー!!!」
女の子の霊が悲鳴を上げる。・・え?そっちが?
「ちょっと、驚かせないでよ!」
「いや、それ、こっちの台詞だし。つか、幽霊の癖に悲鳴上げんなよ・・」
「ひ、悲鳴なんて上げてないわよ!ちょ、ちょっと驚いただけじゃない!」
そして、「はぁ」と息を吐いて、女の子は落ち着かせるように、胸に手を当てる。
いや、お前心臓止まってるだろ。
ようやく、落ち着いたのか、女の子が顔を上げる。
「そういえば、あんたは驚かないのね?あたし幽霊だよ?」
そういわれても、目の前にいるのは、透けているところを除けば、ただの可愛い女の子にしか
見えない。ちっとも怖くなんか無かった。
それを、そのまま伝えると、「な、何よ、それ!あたしは、怖い幽霊なんだから!
呪ったりするんだから!」と、取り乱したように大声を出す。
よくわからないが、僕は無害であると判断し、関わるのも面倒なので、先に進むことにする。
女の子の横を通り過ぎようとしたとき、『クンっ』と体を引っ張られる。
見ると、女の子が、そっぽを向きながら僕の服のすそをつかんでいる。
「・・・・・」
とりあえず、無視して先に進んでみる。女の子はあたりをきょろきょろ見回しながら、
すそをつかんだまま、とてとてとついてくる。
(なんだかなぁ・・・)



その時、遠くのほうで『ガシャン!』と音がする。先に行った誰かが、
何かを倒したかしたのだろう。
「ひうっ!!」
小さく悲鳴を上げ、びくっとた女の子が、僕の腕にしがみついてくる。
「・・・・もしかして、怖いの?」
「ち、ちがっ!な、何ゆってんのよ!」
思い付きだったのが、図星らしい。幽霊の癖に、暗闇が怖いとはね。
「じゃあ、何で僕の腕にしがみついてるの?」
「そ、それは・・・そ、そう!あんたにとり憑いたのよ。ほ、ほら、あたし幽霊だしっ」
「ふーん」
「な、なによぅ」
別に、とだけ言って、僕は再び先に進んだ。



しばらくして、僕は足を止める。
「むぎゅっ」と、彼女が僕の背中に追突する。
「何よ、急に止まらないで・・・」
そこには、校舎の出口。僕は、彼女の手を裾からはずした。
とたん、彼女は、まるで捨てられた子犬のような顔をした。
「はあ」とため息をひとつ。それから、裾からはずした手をつなぐ。
「うちに来る?ここよりは、明るいよ?」
「な、何よそれ!調子に乗らないでよ!なんで、あたしがあんたのとこなんか・・・」
言いながらも、つないだ手をほどこうとはしない。
「僕にとり憑いたんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・ぅん」
 こうして、ぼくはへんな拾い物をしてしまった。
最終更新:2011年03月01日 09:58