迂闊だった。大失態といってもいい。
最近料理に凝っているレイポンに頼まれ、調味料を
探していてすっかり忘れていた。今日は
『ワクテカ ハムスター!~ウプレカス読者投稿特大号~』
の発売日だったのだ。
自分は食べるでもないのに、料理に凝った挙句こんなややこしい
買い物をさせるとは・・・もし買い逃したらレイポンだって怒るはずなのに。

実は今回も僕はハムポンを投稿していた。今回は今までにない
写り栄えだったといっていい。
ハムポンの愛くるしさが余すところなく写されていた。
撮ったのはレイポンだが。

すっかり遅くなってしまった。なにぶん発行部数が少ない。
マニアな雑誌なので、一度買い逃すと注文でも手に入らない事もあるのだ。
焦りつつ、駅前の小さな本屋に僕は走った。

交差点もそのまま走って抜けようとしたとき
僕は跳んだ。

「・・・・?」
ブレーキを軋ませながら滑るように止まるダンプトラック。
「危ないわよ?右見て左見てわたりなさい」
「・・・レイポン?」
「遅いから迎えに来てみれば・・・どこいこうとしてたの?まったく」


見事な背負い投げだった。
しかし、レイポンを触感したのは初めてだったかも知れない。

「本屋さん」
「うん。でもまだ閉まるまでは時間があるから、気をつけないと」
「うん」

ダンプは既に走り去っていた。運転手は、キテレツな飛び方で
飛び去った妙な奴がいたとみんなに吹聴するだろう。

「じゃあ、先に帰ってるから・・・あ、調味料は買えた?」
「うん」
「よかった。あんまり話すと独り言を繰り返す危ない人になっちゃうから、
帰るわよ。ほら、立って」

そうだった。座り込んでぶつぶついってるようにしか見えないだろう。
僕を社会的に抹殺する気だろうか?

「じゃ、気をつけて帰るのよ」
「うん」

レイポン・・・柔道の腕は確かなようだ。しかもいざとなったら手が出せるのか。
あまり、以後は逆らわないほうがよさそうだ。
最終更新:2011年03月01日 20:02