「ちょ、まてよ」
ニヒルにクールに俺は彼女を呼び止めようとした。
彼女は無言で立ち去ろうとする。

「ちょ、まてよ」
再度、呼びかける。その俺の姿はまさにクール&ビューティー害。
彼女は足早に去ろうとする。

俺が彼女を見つけたのはつい最近。つれないあの子をおとしてゲッツ。
それがマイドリームオブサクセスストーリー。
だが、それが間違いということに気づいたのはそれから、ちょっと時間がたってからだった。

「ちょ、まてよ」
「いい加減、うるさいわよ。この基地害!!」
くるりと彼女が振り向く。
おお、想像したとおりのアジアンビューティー。
俺の股間はめくるめく、ラブトレイン状態だ。
なめるように彼女を見る…。
ボンと突き出た形のいい胸。
きゅっと絞られたほどよい、ウェスト
腰はもう、超安産型の究極生物。
…と、足まで見終わって視線を戻す。
とそのとき、気づいた。
女の服の模様。

おろ。
変だ。いや、何が変って、服の半分が真っ赤。まるで血に染まったような。
「あんた、みたわね」
女が俺に近づいてくる。次第に、女に変化が起こる。
右のわき腹から血が滴りはじめて、ぴちょんぴちょん。
「ぴちょんぴちょんじゃねぇぇええええええええ!!」

うっは、こいつ、化けもんだった!!ってなわけで、俺は反転ランナウェイ。

「ちょ、あんた呼び止めといて失礼じゃない」ふふん、と嬉しそうな声が聞こえる。
「いやいやいやいや、しつれいじゃない。全然失礼じゃない!!」叫びながらはしる。
ぶちっと、なにか、後ろで音がした。
いや、おれ、ほんと、見たくないの。後ろ。でも、気になるのは気になるんだよね。
てなわけで、ほんのちょっと、ちらリズム。
で、レッツ、激しく後悔。

「ははははは…」言葉がつながらない。
「何笑ってんのよ」むっと女が叫びながら追いかけてくる。
「わらってねぇええええ、腹からなにかでてるよぉぉおお」
「うん。ちょう(腸)ね」小粋なギャグがむかつく。


走り続けること23分。結局俺は捕まった。
「で、俺をどうしようと」俺はまな板の上の鯉の心境で女に訊ねた。
「いや、あんたが逃げたから追っただけよ」
「う、うそだ、俺に執り憑く気か!!」
「ば、馬鹿なこと言わないでよ。あんたなんか興味ないわ」とそっぽを向く。
「俺に憑いて若い精気を夜な夜な…あああ、これ以上は恐ろしくいえん!!」
「馬鹿なこというんじゃないわよ、人がまるで、飢えているように…!?」
と、女が言葉を止めた。まじまじと俺を見つめる。
俺も女を見返す。
……
無意味な沈黙。
……
『やっぱり/意外と、いい女だ/いい男ね』ハモッた。

というわけで、今、俺には彼女がいる。
夜は激しく、ヒート&デストロイ。
ちょっと困るのはたまに、ベッドに血の海が出来ていることだ。
最終更新:2011年03月01日 22:37