Dr.オニオンの秘密
西暦2099年
Dr.オニオンは霊子力学論を確立。霊子力学論の確立より人の営みは大きく変わっていくことになる。
翌年2100年。Dr.オニオンは霊子力学論をもとに生活奉仕型人工霊ドリーカドモン壱号‐「2100」を発明させる。
それはまさに画期的な発明である。ドリーカドモンの特性は従順、そして経済的な点があげられる。
特に空気中の霊子を自動的に収集し、その存在を維持することは資源の枯渇が問題とされる地球環境にとっても大きな成果であった。
そのため、、世界各地では新たな労働力として様々なドリーカドモンを生み出していく。
ただし、知能はプログラムされたもので人格と呼ばれるほどのものを付与されたものは、2200年現在、報告されていない。
さて、特性において従順を謳われているドリーカドモンであるが、その実、壱号には謎が多い。
Dr.オニオンは壱号の発表を大々的に行ったものの、その優位性を壱号で語りはしなかった。
Dr.オニオンはわずか3ヵ月後に弐号「May-Do」の発表を行っている。
現在知られる初期型ドリーカドモンの性能はすべてこの、弐号のものである。
ここにある記録ディスクがある。
Dr.オニオン没後に彼の研究資料から発見された。ラベルには要抹消と印刷されいる。
彼が、要抹消としてまで秘匿したがりながらも廃棄できなかったこの記録にはなにが残っているのだろうか。
我々オニオン研究員会はその中身を知る権利がある。
『生活奉仕型人工霊ドリーカドモン観察記 副題:ある日の2100』
……
「2100、2100!!どこじゃ」「なによ、爺さん」
「うわ、急に壁から顔を出すな」
「ふん、自分で呼んだくせに難癖つけないでよね」
「かぁあああ、なんじゃお前は、創造主に口ごたえか!!」
「ふふん、私にだって意思はあるんだから」
「くくぅうう、なんで、こんな性格になったんじゃ!?」
……
「おーい、2100、紅茶を淹れたぞー」
「ふん、また安いパックの紅茶なのね」
「パックのものしか淹れ方を知らんからのぉ」
「…これ」「うん? コップ?」
「ちゃんと茶っ葉から抽出した本物のダージリンよ」
「お、おお。だが、わしが淹れたのはどうしようかのう…」
「これは私のでしょ。か、勘違いしないでよね、もったいないからなんだから。かわいそうだからじゃないんだから」
……
「おろ、わしの研究資料が無い、どこじゃどこじゃ」
「爺さん、爺さん」
「ちょっとまっとくれ2100。いま、大事な…」「これでしょ」
「お、おおお、それじゃそれ」
「爺さん、片付けくらい、きちんとしなさいよねだらしないわよ、まったく」
「あ、あああ。お、おお、資料がみやすくなっとる。お前か2100」
「べ、別に爺さんのために整理したんじゃないわよ。見づらいのはいらいらするからよ」
「…おまえ、中身読んだのかい?」
「読まなきゃ、整理できないでしょ。見たわよ、私の秘密」「…そうか」
「全部しってしまったのよ、私にあなたの奥さんの人格が転移されていたことも、彼女の性格とだいぶ違って破棄される予定だってことも」
「ち、ちがう…聞いてくれ、2100」
「黙って!!私は確かに人工物。人格は転移させられたもの、魂があるとはいえない。だけど、私は確かにここにいる」
「お前こそ、黙るんじゃ、2100!!」「っ…!? 」
「わしには確かに妻がおった。そして妻の人格をお前に移した。倫理的にまずい方法を使ってな」
「そ、それは」
「聞くな。わしは研究に没頭するあまり、家庭を省みんかった。その結果妻は死んだ。それだけが事実じゃ」
「だから、罪滅ぼしってわけね」
「いや、ちがう。そうせんとわしが耐えられんかった」
「わしは妻のことをよく知らん。妻の性格と違うというのもわしの勝手なイメージに過ぎんものだ」
「ど、どういうことよ」「その資料のお前に関する項目は方便ということじゃ」
「お前の資料をそのまま提出したら、世間はお前を放っておかんじゃろう。社会的にも倫理的にも」
「世間の目を欺くためにはお前は失敗作として廃棄されたことにせねばならんのじゃ」
「なるほどね。そして私は名実共に、あなたの奥さんの幽霊ってことになるのね」
「そうじゃ。そして自由を得る」「ふん、まっぴらごめんよ」
「な、なにをいうか2100」「私にかかった研究費用、いくらかかったか知ってるわ」
「む、むぅ」「このまま失敗するとその負債を誰が責任取るのかしら。あなたの名誉に傷がつくわ」
「そ、そんなもの何でもないわい」
「私に…とってはもんだいなのよ…。たまちゃん」
「は、そ、そその呼び方は…、む、むぎゅ、ぅ」
「…っはぁっ。久しぶりの口づけよ」「お、お前、記憶が…、というより、記録テープがまわって…」
「ふふ。研究は成功させて。べつに私の資料を提出する必要ないじゃない。弐号を作ってしまえばいいんだから」
「あ、そ、そうか」「たまちゃんって頭いいのに、相変わらず抜けてるのね」
「続き、しましょ…じゃまね、この撮影機…」
……
ぶつっ
……ザー
見なければよかった秘密もある。
暴いたが故に取り返しのつかないこともあるからだ。
我々オニオン委員会は確かにDr.オニオンの秘密を知る必要がある。
だが、最後のオニオンの救われたような表情をみるに…これは我々の中だけの秘密でよいだろう。
ま、まぁ、あれだ。
…人格転移は危険な技術だからな。
べ、別にオニオンの幸せを壊すからとか、そんなわけじゃないんだから。
い、いや、…ほ、ほんとですぞーー!!
-なんとなく了-
最終更新:2011年03月02日 21:15