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幽霊の呪い


俺「ただいま…ってまだやってんスか。飽きませんねぇ」
霊「五月蝿い。今に見てなさいよ」
彼女は幽霊。とは言っても物をすり抜けたりポルターガイストを起こしたりは出来ず、
生きてる人間と違うのは普通の人には見えない、鏡に映らないの二点だけ。
どうやら俺には彼女が見えるようなので、鏡の前で確認させられる羽目になった。
そんな彼女が家に上がりこんでから早一週間。ずーっと紙に物騒な漢字を書き続けている。
俺「ホントに呪いなんか掛けられるんスか?」
霊「あたしは幽霊なのよ?出来たっておかしくないじゃない」
俺「確証は無いんスね…」
呪いの対象は俺。理由は
霊「あたしが死んでるのに同居人のアンタが生きてるなんて不公平じゃない」
…だそうだ。最初は恐怖したものだったが現在は見ての通り。
あからさまに成功しなさそうな「呪い」にいちいち付き合うのも疲れるだけなので、
とりあえず好きなようにしてもらっている。
俺「メシできたッスよー」
霊「あああちょっと待ってあと三文字…よっし!」
ホントに呪う気あるんだろうか?

霊「不味い」
俺「毎回そう言うけど食うの速いッスよね…」
霊「体力使うのよ呪いは」
俺ん家の食事は毎回この会話で始まる。
俺「一回くらい幽霊さんが作ってくれません?」
霊「出来るならとっくにやってるわよ」
俺「料理苦手なんスか?」
霊「…何か問題でも?」
じわ~っと嫌なオーラが彼女から流れ出てる気がする。
俺「いやいや無いッス無いッス」
普段からこうなら呪いも成功しそうなもんだが…


次の日

俺「おはようございますッス」
霊「ん」
朝早くからまたも呪い。
俺「もう諦めたらどうッスか?」
霊「うるさい死ね」
俺「死なないからこその提案なんスけど…」
霊「無視!」
休日はヒマだ。特にやることもないので彼女の呪いの儀式を眺める事にする。
小さなテーブルを挟んで向かい合う俺と幽霊さん。俺はこの時間が好きだったりする。
霊「…気が散るんですけど」
俺「そりゃ結構ッスね。一応俺を殺す為の儀式だし」
霊「…」
俺「…」
霊「ボーッとしてる暇があるなら朝ごはん作ってよ」
俺「りょーかい…ッス」
立ち去り際、俺は言った
俺「幽霊さんが羨ましいッス。毎日ずーっとそうしてるだけでいいんスから」

俺「メシできたッスよー」
霊「…」
いつもの席につく俺と幽霊さん。
毎度おなじみの会話の後しばらくして、
霊「さっきの話だけど」
俺「さっきの…?」
霊「あたしが羨ましいとかどーとかの」
俺「ああ、あれスか。そりゃ羨ましいッスよ。楽そーッスもん」
霊「あたしはあんたら生きてる人間がうらやましいわ」
俺「なんでッスか?」
霊「やらなきゃならないことがあるんですもの」
俺「それのどこが…」
霊「死んでみれば判るわよ。ずーっとやる事もなく気付いてくれる人もなくただ居続けるだけってのがどんなにつらいか」
俺「成仏したらいいんじゃないッスか?」
霊「やり方知ってるんなら教えてよ」
俺「そうくるッスか」
霊「それに出来たとしても今は成仏するつもりないし」
俺「何でッスか?」
霊「とりあえず気付いてくれる人は見つかった訳だし」
俺「それっておr」
霊「まあ若干不満もあるけど。あとはやる事があればねー」
俺「…あの呪いの儀式は?」
霊「あれは只の実験よ。ホントに呪いとかあんのかなーって。ないっぽいからもう止めるわ」
俺「ホントにあったら俺死んでたんスけど」
霊「無くてよかったじゃない」
俺「酷いッス…」
 視線を落とした先にあるのは冷めつつある味噌汁。
俺「あ…そうだ」
霊「何よ」
俺「やることッスよ。料理作ってみたらどうッスか?」
霊「だからできないっての」
俺「だからこそッスよ。大丈夫、ちょっとくらいなら教えられるし」
霊「なッ…そんな恥ずかしいことお断りよ!やるなら一人でやるからほっといてちょうだい!」
俺「やるんスか?」
霊「…何か問題でも?」
俺「いやいや無いッス無いッス。むしろ歓迎ッス!」


それからしばらく俺は
俺「ぶぼぉっ!」
…より直接的な呪いを食らい続ける羽目になった。
霊「い…今に見てなさいよ!グスッ…」
最終更新:2011年03月02日 21:54