私はこの部屋でひとりの少女と暮らしている。
はじめて少女と出会ったときのことは覚えていない。
おそらく中学生ぐらいだろうか。幼さの残る顔立ちをしている。
前日の雨のせいか、室内は妙に蒸し暑い。
にじんだ壁の染みが、訳もなく不安を煽り、少女に語りかけてみる。
この少女に関する記憶は一切ないのに、よく知っている気がするのは何故だろう?
ろくに会話もしないのに、少女の言わんとしていることが伝わってくる。
さきほどから少女は無機質な瞳で私を見つめている。
れいせいであろうと努めるが少女の表情、容姿、そして無機質な瞳が私の心をかき乱す。
たまらず私は少女から顔を背けた。

ふと部屋にかかった日めくりカレンダーが目に入る。
何もない部屋にある唯一の装飾品。日付は6月14日で止まっている。
そのとき何かが私の記憶を刺激した。6月14日……ああ、そうか。
私はすべてを思い出した。そして私を見つめる少女の瞳に隠されたメッセージを理解した。
少女はうっすらと笑みを浮かべていた。
最終更新:2011年03月03日 21:17