今日こそ御祓いに行く。
今までさまざまな妨害に遭い、実行できなかった。だがこれ以上、訳の判らないモノに
振り回されるのは耐えられない。今日こそ、必ず―――
「……またおかしなこと考えてるわね?」
きた。
だが俺はもう負ける訳にはいかない。
「ああ。今日こそおまえを祓ってやる」
「どうかしらね―――」
中空に、不敵に微笑む女が現れた。
その、姿。
白いワイシャツ。男物であることは丈で判った。
「どう?」
女はふわりとその場で回ってみせた。裾が危うい位置までめくれ上がる。
「そうきたか……その、下、はいてるのか?」
「どうかしらね。確かめてみる?」
「そんな手にこの俺がひっかかると思うか?」



今日こそ御祓いに行く。
昨日は男物ワイシャツの破壊力に負けたが、本来俺はそんな意思の弱い人間ではない。
「暑いわね」
女は胸の前にデカデカと5-2と書かれたスク水姿で現れた。
勝った。その瞬間、確信した。
俺は競泳水着派なのだ。もし、競泳水着だったなら、と思うとゾッとする。
女は股間の辺りの布地を引っ張っている。
「何のつもりだ?」
「ココ…ね。穴開いてるって知ってた…?」
「マジで!?何で!?どうして!?」
「……知りたい?」
「そんな手にこの俺が」



もう負けない。
ネコミミだろうがメイドだろうが何でも来いや!今日の俺は気力が漲りまくりだ。
「おはよう」
女が台所から挨拶してきた。
どうやら、俺の気合は空回りしそうだ。こいつはちょっと、地味すぎないか?
「割烹着かー……」
正直残念な感じがしたので、トーンダウンしてしまう。
女は俺の前に正座し、ふっと目を眇めた。
「今まで隠していてごめんなさい。私があなたのお母さんよ」
「な、なんだって―――っ!?」
「……本当に。大きくなったわね」
「う、ウソだ!お母さんは俺が小さいころに死んだって……死んだ……?」
「そう。あなたのことが心配で成仏できなかったの」
「そんな手にお母さぁぁ―――――――ん!!!!」



戦いの日々は終わった。
「お母さん」
「………………」
「ねぇ」
「何よ?」
「うわ!」
「何よ?」
「あ、あの、子供の前でブルマはありえないと思うんだ」
「……? ああ、あれウソだから」
「え!?」
女はブルマのズレを直しながらとんでもないことを口走った。
だって昨日あれほど親子水入らずの語らいをしたっていうのに!
「そんな……」
「大体、実の母親に欲情全開の息子ってどうなの? 終わってるでしょ」
「………………………ハイ……」



今日こそ樹海に行く。
俺みたいな人間は死んだほうがいい。
俺みたいなクズの死体処理で他人の手を煩わせないよう、人の来ない所で死にたい。
今までさまざまな妨害に遭い、実行できなかった。だがこれ以上生きていくには
自分自身が恥ずかしすぎて耐えられない。今日こそ、必ず―――
最終更新:2011年03月03日 21:28