んじゃ、佐賀小話をひとつ。




又一郎、又一郎。ほれ、見てみ? むく鳥を捕まえたぞ。のろまなお主には無理じゃろう?

又一郎、又一郎。この家も随分人が減って寂しくなったのお。柱で爪を研いでも、怒るものもおらん。

又一郎、又一郎。ねずみが多いのは楽しいが、これでは荒れ屋ではないか。どうしたんじゃ、一体。

又一郎、又一郎。何ゆえお主は泣いておる。「くちおしい」とはなんぞや。……泣かんでくれ、なあ、又一郎。

又一郎、又一郎。ふん……まだお城から帰ってこんのか。さても要領の悪い男じゃの。

又一郎、又一郎。

又一郎。

またいちろう。


なあ……どこ、いった? 母者はお主が心配で臥せってしもうたぞ。
用人どももおらんようになって、世話もままならん。はよ、帰ってこい。





あ……又一郎の、匂いじゃ。
なんじゃあ、お城に居ったのかや……あの阿呆め。
使いくらい寄越せばよかろうに……。


又一郎、又一郎。…………………………………………お主、井戸の底なぞで何をしとる?

又一郎、又一郎。帰ろう、家に帰ろう? なあ、そんな水底じゃあ寒かろ?

又一郎、又一郎。帰ろう。早く帰ろう。それでな、お主にな、撫でて欲しいんじゃ。

又一郎、又一郎。にゃあ、みゃあ、みゃああああ、みゃあああああああああああん。



…………みゃあ



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やがて佐賀藩主鍋島光茂の元に、お豊と名乗る正体不明の美女が愛妾として召抱えられることとなる。
世に言う「鍋島の猫騒動」の起こりであった。





ほぼ適当に佐賀ネタを書いてみた。佐賀の人ごめん。
最終更新:2011年03月04日 10:24