「来週の月曜日は何の日でしょーかっ!」
「平日」
「だったら聞くわけ無いでしょうが!もっと真面目に考えなさいよ!」
「………」
「真面目に考えた結果」
「うんうん」
「お前がここに来た日」
「…どう考えてもまだ三ヶ月しか経ってないんだけど…」
まあそんなとこだな。そうかもう三ヶ月か…
「解ってるよ。誕生日だってんだろ?」
うんざりするほど聞かされたからな。
「そうそれ!解ってるじゃないの照れちゃってもー。
さあ私を崇めなさい称えなさい敬いなさい媚び諂いなさい!」
俺は他人の誕生日に照れるような妙な性癖は持ち合わせていない。
しかも何だその二行目。何処の国の誕生日だよ。つーかまだ誕生日迎えてないだろ。
いやいやそれ以前に
「死んでる奴が誕生日祝うってどういうことだよ」
そう、俺の目の前で異国の文化を語るこの半透明女は既にお亡くなりになっておられます。
「何よなんか問題ある?私がこの世に生を受けてからむにゃむにゃ年経ったという
歴史的事実には何の支障もないわ!」
むにゃむにゃ年ってなんだよ。いいだろ別に身体はもう年食わねーんだし。
「なーにが歴史的だ。俺にしか見えねえくせに」
「だからこうしてここに居てあげてるんじゃない。私を見ることができるなんて、
何て幸せな奴なのかしら。…もっといい男だったらよかったのに」
「間食抜きにすんぞコラ」
て言うか幽霊が食事すんなよ。金がかかるんだよ。泣くぞ。
「じょ、冗談よ。全くすぐムキになるんだから。ほんとガキよね」
フォローの直後にまた貶す意味を教えてくれ。間食抜き賛成ってことか?
「じゃあ来週の月曜日期待してるわよー。おやすみー」
「あんまり期待しなくていいぞー」
…ちなみに今日は土曜日。つまり来週の月曜日ってのは二日後だ。
今の時刻を考えれば明日といってもいい。さて、どうするかね誕生日。とりあえず就寝。
誕生日前日。日曜日。
起床&時刻確認。
11時…こんな時間まで眠れたのはどのくらいぶりだろうか。
もともと俺の休日はいつもこんなものだったのだが、
あいつが来てからと言うもの朝っぱらから騒々しくてとても寝てられない。
早起きなのは勝手だが、そのまま俺に特攻するのは勝手じゃない。
朝ぐらい静かにしてくれ。で、そのあいつだが。
「んぁ、おはよう…ふぁ~」
目をこすりこすり、あくびをしながら登場。
どう見ても今起きたばかり。その上寝足りないといった感じだ。
「珍しいな。お前がこんな時間まで寝てるなんて…
もしかしてお前、誕生日が楽しみで眠れなかったとか?」
「…そんなんじゃないわよ。うっさいわね…こっちにだって準備があんのよ」
声にまで眠気たっぷりだな。祝われる側に何の準備があるんだ?
「そんな夜更かししなくても朝になってから準備すりゃいいだろ」
「まだ見られるわけにはいかないの」
「ふーん…じゃあ、俺ちょっと出るから。腹減ったら勝手になんか食っといて」
「いってらっしゃーい…」
「誕生日プレゼントねぇ…」
俺は歩きながら考えていた。あいつ食い物以外に欲しい物なんてあるのかね?
うーむ…やっぱアクセサリー類?かね?
あれでも一応女だしまるっきりハズレって事も無い筈…だよな?
疑問符が多すぎて自分でも不安だが、他に何も浮かばないので取り合えず買いに行く。
「むぅ…多いな…」
なんせ俺は普段こういう店とは縁が無い。どれを買えばいいのやら。
あいつの好みが解らん以上、下手に飾りが付いてる物よりシンプルな物の方がいい。
そう考えた俺はベスト・オブ・シンプルなペンダントを購入。
…安上がりで済ませようとしたわけでは断じてない。ないぞ。ないったら。
学生がバイトで稼いだ額の限界なんてこんなもんさ。泣けるね。
さて、プレゼントは買った。
あと準備する物と言えばケーキ、その他食い物、飲み物と言ったところだが、
これは当日の学校帰りにでも買えばいいだろう。買い置きなんてしたところで
あいつが平らげるに決ってるからな。じゃあ適当に昼飯食って帰るか。
「ただいまー」
「おかえりーっ!」
ドタドタドタッ!
あいつが凄い勢いでお出迎え。なんだ、熱烈歓迎か?中々いい気分ではないか。
「おやつっ!」
そうか、三時なのだな。そんなこったろうと思ったよ。がっかりなんかしてないぞ。
「残念ながらそのようなものは俺の手荷物の中には含まれておりません。」
期待に満ちたスンバラシイ笑顔が見る見る引きつる。
「昨日言っただろ?間食は抜きだ、と」
「あれ本気だったの!?ハァ…ほんっとガキなんだから…」
その一言がなけりゃたぶんお前はおやつにありつけてたと思うぞ。
まあ、おやつ代はこのプレゼント、あと明日買う予定の諸々に使われたと思ってくれ。
どうせ納得しないだろうから口には出さんが。
「なんだ、今日はやけに大人しいな。あれか、嵐の前の静けさって奴か」
「だれが嵐よ失礼ね。別に誕生日がどうこうって訳じゃないわよ」
「じゃああれか。間食抜きがそんなに堪えたか」
「あんたと違ってガキじゃないから」
「はいはい」
この日はこれっきり。寝に入るまで黙り込んだまま。
静かな日もたまにはいいが明日この反動が来ると思うと今から疲れる。とっとと寝よ。
誕生日当日。月曜日。
起床&時刻確認。
7時半。あいつはまだ寝ているのだろうか?
まあ、寝てるならわざわざ起こす必要もあるまい。
適当に朝食を済まし、俺は学校へ向かった。
さて放課後。ケーキその他諸々を買い、家に帰る。
あいつプレゼント探し出して勝手に開けたりしてないだろうな。持って来りゃよかった。
俺のそんな心配は無意味だった。
「居ないのか…?」
そう言えばなんか準備があるとか言ってたよな。たぶんそれ関係だろう。
ケーキと飲み物を冷蔵庫に入れ、テーブルにつく。
テーブルの上に何やら手紙があった。
「あいつが書いたのかこれ?」
俺とあいつしかいないこの家でそうじゃなかったら問題だが。
読んで…いいんだよな?読むよ?
2006年10月15日 (日)
あーもう色々考えてたら日付変わっちゃった。とりあえず、書く気
があるうちに書いてしまいます。あんたがこれを読んでるって事
は私はやっぱり最後まで面と向かっては言えなかったんだろうね。
明日は私がこの世に生を受けて18年目を祝う日であり、同時に
今の私の一回目の誕生日でもあります。二つも祝い事がある日
なんだから頑張れると思ったんだけど、やっぱ駄目だった?情け
ないね私。
好きです。
たったこれだけなんだよね文字にしちゃうと。ごめんね手間取らせ
ちゃって。
…なんだこのこっ恥ずかしい手紙は。
あれか、どっかで俺のこと見てて反応見て楽しんでるのか?
…やっぱ居ないよな。じゃあもう一枚あるしそっちを…
2006年10月15日 (日)
一気に両方書くのは辛いけど、ここまできたら引き返せないので
書きます。一枚目の手紙で気付いたかもしれないけど、私は去
年の誕生日、2005年10月16日に事故で死んでしまいました。
あんたに出会ったのはそれから9ヵ月後です。この3ヶ月間、と
ても楽しかった。本当にありがとう。あんたがこれを読んでる今、
私はそこにいないでしょ?そういうこと。人が幽霊としてこの世に
残れるのは一年きっかりなのよ。できればあんたが学校から帰っ
てくるまでなんとか留まりたいけど、これを読んでるってことは駄
目だったってことなんだよね。学校に行かないでって、それすら
言えなかったんだね。どうでもいい言葉は無意識にでも出てくる
のに、どうしてだろうね?もっと早く会えたらよかったのに。死ん
ですぐ、できれば生きてる内に。好きだなんて書いた後にこれは
ないよね。ほんとにゴメン。
…なんだよこれ?嘘だろ?どっかから見てんだろ?
「おい!!出て来いよ!!洒落になってねえんだよ!!こんな…!こんな…
返事する暇も無いじゃんかよ…これじゃ…」
「じゃあ、返事する暇あげる」
「……!おま…」
「始めよっか。誕生会」
「お前…くそっ。かっこ悪い…完璧に嵌められてやんの、俺」
「これ、いいの?」
「いいも何もお前宛のプレゼントだっつの」
「ありがとう…絶対、大事にするから」
「そんな安物でよけりゃ…まあ、半年に一回は買ってやるよ」
「ふふ…無理しなさんなって。それでその…返事は?」
「ああ…俺もおまえの事、好きだよ」
「……ありがとう。ほんとに、ありがとう…」
「お、おいおい泣くほどの事じゃ「ごめんね」…え?」
「このペンダント、絶対大事にするから」
「お前、消えて…おい!あれ、嘘だったんだろ!?」
「なんとか返事が聞けるまで頑張れたけど…もう…
あの、ほんとに、大好きだから!絶対、忘れないから!」
「嘘だって言えよ!どうにもなんないのかよ!
……俺だって忘れるもんか!忘れられる訳ねえだろ!好きな奴とこんな別れ方して、
どうやって忘れろっつうんだよ!」
「ありがとう…またね」
…あいつと、あいつのペンダントは消えてしまった。
あいつは最後にまたね、って言ってた。
ああ、探し出してやろうじゃないか。簡単さ。
死んだ後にあの世であのペンダント付けたやつを探せばいい。
見つけ出したら毎年祝ってやるさ。なんたって歴史的事実だからな。
それまで間食抜きなのは我慢しろよ?
最終更新:2011年03月04日 10:33