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「起きろ。朝飯できたぞ」
「…んう~…」
まあ、これぐらいで起きる訳ないのは百も承知だ。
「おい起きろ。味噌汁冷めるぞ」
肩をゆする。
「う~ん…」
肩をゆする手を掴まれた。起きたか?反撃か?とりあえずもう一方の手で顔をガードする。
掴まれた手は…掴んだ本人の頬にあてがわれた。
「んへ…えへへへへ…」
起きてないか…こら、さするなさするな。何の夢見てんだこいつは気色悪い。
「…すき…」
…ああもうなんてストレートな寝言だよ。
起きてる時にストレートなのは悪口と拳だけのくせに。起こしたくなくなるではないか。
しかし!食卓には我が息子かっこ味噌汁と目玉焼きが待っているのだ!
息子の為だ。許せ。あてがわれた手でそのまま頬をつねる。
「起~き~ろっつってんだろ~が~」
「痛らららららら!」
流石に起きたようだ。

「せっかくいい夢見てたのになんてことすんのよ!」
「『もう食べられな~い』とか言ってたからな。余程いい夢だったんだろうな」
「…あれ、あたしそんなこと言ってた?」
「ああ言ってた言ってた。だからとっとと飯食っちまえ」
俺と、なんとも不思議そうな顔をしたままのこいつはとりあえず食卓に着く。

「いただきま~す」
「おう、存分にいただけ」
いつもの様に朝食をとる。こいつはいつものようにテレビの占いコーナーに釘付けだ。
「ふぅ…」
「ん?どうしたのよ魂抜けたような顔しちゃって」
魂に言われたかねえよ。…そう、こいつは死んでいる。死んでいるのだが…
「いや…平和だなーと思って」
「はあ?いきなり何言い出すのよ。朝からいきなり危険だったら疲れるっての」
それはそうだがそうじゃなくて。
「いやほら、お前幽霊だろ?そんなのと同居してる割には平和だなーって」
「誰がそんなのよ失礼ね。…まあ、別にいいじゃないの平和なら」
「まあ…それもそうだな」
俺は、あの日の事を思い出していた。今の生活が始まったあの日の事を。

仕事から帰ると、家の前にこいつがいた。
こいつは俺を見つけると、泣きながら聞いてきた。「あたしの話は聞いたか」と。
俺は「何の事だ」と返した。するとこいつは頼み込んできた。「匿ってくれ」と。
とりあえず家に入り、事情を聞いた。
こいつは、自分がもう死んでしまっていることを告げた。
「だから、家族や知り合いに見つかる訳にはいかない。
そんなことになったら大騒ぎになる」こいつは続けてこう言った。
こいつの家族から電話がかかってきたのはその直後だった。こいつは本当に死んでいた。

「始まりはあんなに騒がしかったのになぁ…」
「じゃあ、誰かに見つかってみようか?」
「おいおい」
「冗談よ。…でも、最初に見つかったのがあんたでよかった…」
「ああ、親にでも見つかってたらえらい事だったろうからな」
「…そういう意味じゃないわよバカ」
「恥ずかしいこというなバカ」

あー平和だ。
最終更新:2011年03月04日 10:45