序章
今日もなんてことないいつも通りの一日だった。
起きて、飯食って、高校行って、授業を受けて、食堂で飯食って、
授業を受けつつ寝て、帰宅する。
つい先日二年になったばかりだが、
どうやら変化は望めそうに無い。元からあまり期待はしていなかったが。
俺は、この後家に到着してから自分が取るであろう行動をぼんやりと考えていた。

ドンッ
女性と肩がぶつかった。どうやらぼんやりしすぎたようだ。
「あ、すいません」
「あんた…見えてんの?」
「え?えぇっと、考え事してたもんで、すいません」
何か怖いなこの人。
「…気ぃつけなさいよね」
それだけ言って、彼女は歩き去った。

…そんなに大勢人が居る訳でもないのに、何であんなおっかない人とぶつかるかね?
まあ、俺が悪いんだが。
その後俺は、自分で考えた通りに家で過ごした。
今日みたいな変化は余り歓迎しないぞ。後に続かなさそうなのが救いだが。

次の日。
「ふーん。それは災難だったね。でも、その人もよっぽどぼーっとしてたんだろうね。
 人気の無い所でぶつかるなんてさ」
俺はいつものカレーを、こいつはいつものチャーシュー麺を頬張りつつ、
昨日起こった事について話していた。
こいつは森口昇。一年・二年供に同じ組になったクラスメイトだ。
「まあ、二度目が無い事を祈るさ。……ふう、食った食った」
森口のラーメンに目をやる。…まだ半分ぐらい残ってるな。

「相変わらず食うの遅いなお前」
「君とは違ってね、ちゃんと味わって食べてるんだよ」
「味わいすぎてるとラーメン伸びちまうぞ。…ちょっとトイレ行ってくる」
「うん、ごゆっくり」

あの食事の遅さはラーメン好きには致命的だと思うのだが…気にしてないのかあいつは?
トイレに行く途中そんな事を考えていたら、聞き覚えのある声が聞こえた。
「やっと独りになったわね。とりあえず、黙ってついて来て」
…二度目は意外と早かったよ森口。

屋上入口前。周りに人は居ない。何だろう、この状況。カツアゲ?
「…この学校の生徒だったんですね」
「そうよ。さて、今更確認するまでも無いけど、あんた見えてんのよね?」
何だ?昨日の続きか?
「それは昨日謝ったじゃないですか…」
「そうじゃなくて、あたしが見えてんのかって聞いてんの」
…はい?
「視力なら悪くないつもりですけど」
こういう意味では…ないな、多分。俺は何を聞かれてるんだ?
「にっぶいわね…いい?一回しか言わないからよく聞くように。
 あたしは幽霊です。ほとんどの人にはあたしは見えてません」
これは困った。俺は今非常に帰りたい。何なんだこの人?
「…信じてない顔してるわね」
「そんなことほいほい信じられるほどお花は咲いてませんよ。俺の脳味噌には」
「じゃあこれならどう?」
そう言うと彼女は壁に手をあてた…と思ったら、その手がどんどん壁に埋まっていった。
そのまま、彼女の身体は壁に半分まで埋まってしまった。
「え?…え?な、何これ?どうなってんの?」
彼女と同じように手を伸ばす。俺の手は壁に当たった。当たり前だが。
「信じる気になった?」
壁から半分だけ出た顔で彼女が問う。

…どうやらマジらしい。これはとんでもないことになった。
だってそうだろ?俺は今幽霊に絡まれてるんだぞ?
「わ…解りました、信じましょう。その上で質問です。俺に何の用ですか?」
壁から出てきて答える。
「ただの挨拶よ。あんたみたいに見える・聞こえる・触れる
 全部揃ってる奴なんて初めてだし。幽霊からすればかなり貴重な人材よ」
挨拶だけか…よかった。にしても俺すげえ。今まで全く気がつかなかった事がすげえ。
「あの時だって、まさかぶつかるなんて思ってなかったから避けなかったんだから」
「ってことはあの時の質問もそういう意味だったんですね。
 俺はてっきり『どこに目ぇつけとんじゃゴルァ』的な意味かと…」
「…そんなにガラ悪く見えるわけ?」
今のあなたを鏡で見せてあげたいですよ。万人が納得する顔してますから。
「…まあいいわ。あたしは霧原瑠奈。三年よ。あ、『今の』三年だから」
「俺は深道悟。二年です。…そういえば、幽霊でも服着替えるんですね」
昨日遭った時は私服だったが、今は制服だ。
「そりゃあ学校来る時に制服なのは当たり前でしょ。カモフラージュにもなるし」
「カモフラージュ?する必要あるんですかそれ?」
「バカ?見える人と見えない人は見分けられないのよ?
 学校に私服で入ったらどうなるかぐらいちょっと考えれば解るでしょ?」
「えーっと…見える人が居た場合、凄い目立ちますね」
「そう。そんで『あの人何だろうね?』ってなって『え?誰の事?』ってなって
 ちょっとした騒ぎになるわね。ハイ正解」
「俺殆ど答えてない…」

「でも制服着てれば見えたとしても話題になんかならないでしょ?そういうことよ」
聞いてないな。まあいいや。
「…顔知られてる人とかいたらまずいんじゃないですか?三年とか」
「ああそれは…幽霊になってすぐの頃に、深く考えずに教室まで行っちゃったのよ。
 でも特に何もなかったから、知り合いに見える人は居ない筈よ。…危なかったわ」
「それって…」
言いかけたその時、チャイムが鳴った。
「ああっ!教室戻らんと!」
「急げ急げ」
言われなくてもスタコラサッサだぜい。

「…本当にごゆっくりだったね」
違うぞ森口。まだ何も言ってないが多分違う。
「色々あってな」
「色々?」
「ああ」
何かは言えんがな。…しかし、チャイムに感謝だな。
思わず言いそうになったが、言わなくても良い事だ。

知り合いに見える人は居ないなんて、さらっと言ってたけど相当辛いはずだ。

「それって、何か寂しいですね」



午後の授業が始まった。
いつもなら食後は眠くなるのだが、流石にあんな事があった後では…

「悟、悟起きて。」
…前言撤回。なんという適応能力だよ俺。
「森口…俺って凄いよな」
「え?まあ、凄いんじゃない?尊敬はしないけど。よくもまあ毎日眠れるよね」
ああ、その時点で凄い事だったのか。グレイト俺。
「じゃあ、帰ろうか」
「ああ、ちょっと待っててくれ。トイレ行ってくる」
あのカツアゲ紛いのせいで行けなかったからな。
「今度はゆっくりしてると置いてくよ?」
「大丈夫だ」
多分な。あの人が居ても無視するから。恐らく無理だが。

トイレに向かう途中、何人かとすれ違う。
もしあの中に幽霊がいても、俺には判別できないんだよな…
なんとも勿体無い。何か目印とかあればいいのに。

「おし、帰るぞ」
「今回は早かったね。良かった」

校舎を出て、校門にさしかかった。
「今日はあのおっかない人、居ないといいね」
「だといいがな」
だがな森口。もう手遅れだ。
「…変な事聞くぞ?今、俺等の前に誰か居るか?」
なんで居るんですか霧原さん。
「え?仲良さそうな男女が一組。誰か居たの?」
その二人だけが見えてるんだな。ほっとしたような、そうでないような。
「いや、多分見間違いだ。気にするな」
見間違いであって欲しい。でも居るんだなこれが。
「おっかない人って、誰の事かしらね?」
耳元で囁かれる。しかし返事は出来ない。
ので、森口から見えないように小さく霧原さんを指差す。
…無言で小突かれた。でも声は出せない。
ああ、何ともややこしい状況になった。
右からは森口、左至近距離からは霧原さんが俺に話し掛ける。
「ちょっと、歩くの遅すぎない?さっきからガンガン抜かれてるわよ。
 もうちょい早くなんない?」
「でも僕も一回見てみたいな。そのおっかない人」
左には指でバツを作りつつ、
「俺は二度とゴメンだ」
と右に答える。また小突かれた。

この歩くペースは森口に合わせた結果だ。
こいつは基本的にのんびり屋なんだな。あの食事ペースのことも考えると。
別に俺自身、それに文句は無い。
早く帰るつもりもないし、こいつのラーメンが伸びても別に気にならんしな。
「それじゃあね。あの人に気をつけるんだよ」
「ああ、じゃあな」
森口と別れる。そしてまた小突かれる。

「あの人、どうやら見えてないようね」
「みたいですね。それよりも、勘弁してくださいよ。
 ただの下校でこんなに疲れたの初めてですよ」
何も無い下校よりはいいかもしれんが、毎日はきつすぎる。
多分、毎日なんだろうな…
「えー。だって今のところあんた以外に誰も居ないし、あたし暇なの嫌いなのよね」
「…俺みたいな奴ってどのくらい居るもんなんですか?」
「さあ?そんなに試す機会も無いし…まあ、そんなに多くは無いと思うわ。
 むしろ少ない?」
「せめてもう一人いれば会話とかしててもある程度ごまかし効くと思うんですけど」
「まあ観念するのね。いや、むしろ喜ぶべきなのよ。
 幽霊が見えるなんてラッキーにも程があるわ」
貧乏くじのような気もするが、観念せざるを得ないようだ。
「あ、あたしこっちだから」
「何処行くんですか?」
「は?家に決ってるじゃない。独りで何処行けっての?」
「家…ですか」
「あんた今、『幽霊が家に帰るのか?』とか思ってるでしょ」
正解。
「幽霊だろうが何だろうが家は家よ。それにうちの家族、
 あたしの部屋そのままにしてくれてるから。…それじゃね」
「はい、また明日」
あ、また明日とか言っちゃった俺。…まあいいやもう。どうにでもなれ。

で、その明日がやってきた。
「で、あの人には会ったの?」
お前はやけにその話を振るな森口。
「ああガッツリ会った。多少会話もした」
「会話したの!?勇気あるねー。どんな感じだった?」
お前も隣に居たんだがな。その時は会話っつーか手振り身振りだが。
「小突かれて、『家に帰る』って言ってたな」
「…怒らしたの?それ」
「怒っては無いと思うが」
「変なの」
「変だな」

さて、つまらない授業はすっ飛ばして昼食だ。
いつものように食堂で席を探す。
「あ、隅っこ空いてるよ」
その席に着き、また俺はカレー。森口はチャーシュー麺を食べる。
そろそろ食べ終わるかという頃、俺の隣に誰かが座った。俺はそちらを見る。
「――っ!」
米を吹きそうになるのを堪え、水で流し込む。
「ど、どうしたの?」
森口は気がつかない。この事態に。またも、霧原さん登場。
何しに来たんだ?
「あたしの声が聞こえるかしら?」
ちょ、何普通に喋ってるんですか。こんな人多いとこでフォローなんか出来ませんよ?
「悟?」
いや、俺は大丈夫だ森口。カレーはなんとか食いきった。
それよりも霧原さんは何考えてんだ?
「今、女の人の声したよね?」

…森口?



まさか、聞こえたのか?いや、今この食堂は人で一杯だ。
女性の声だってあちこちから聞こえてくる。
「どの辺から聞こえた?」
「えーっと…悟の居る辺りから…だと思う」
「何て言ってた?」
「『声が聞こえるか』って…」
これは確定だな。霧原さんは…うわ、すっげえ嬉しそう。
「話したい事があるから急いでラーメン食え。場所変えるから」
「え。う、うん」
ラーメンを食うスピードが上がる。…それでもやっと普通の速さと言った所だが。
「ふう…で、何処行くの?」
「とりあえず人目につかない所だ」
「何か怖いね」
念の為、詳しく伝えるのは控えた。
まあ、盗み聞きして着いてくる奴なんか居ないだろうが。場所は勿論、屋上入口前。

「一応確認しとくけど、声は聞こえてるのよね?」
「えっわっ。は、はい」
森口はきょろきょろしている。無理も無いな。
「あー、この人今ここに居るから」
隣の霧原さんの肩に手を置く。…すぐに振り払われたが。
「さ、悟には見えてるの?」
「ああ。…それでは、説明どうぞ」
「えー、おほん。あたしは霧原瑠奈。三年よ。きみは?」
「森口昇。二年です」
そこから先は、俺にした説明とほぼ同じだな。
幽霊だと言われた時は、驚いてはいたもののこいつはあっさり信じた。
見えない奴に話し掛けられてるんだから仕方が無いと言えば仕方が無い。

「ちなみに、例のおっかない人ってのはこの人だ」
また小突かれた。
「え、そうなの?ってことは悟、幽霊に触れるの?
 ああ、そういえばさっきポンってやってたね」
察しがいいな森口。お前から見たら変な一人芝居だったろうに。
ところで、俺には気になる事がある。
「さっきは驚きましたよ。あんな人ごみの中で普通に喋っちゃって。
 大丈夫だったんですかあれ?」
「人ごみだから大丈夫なのよ。授業中じゃあるまいし、皆それぞれ喋ってたでしょ?
 そんな中であたしの声だけ聞き分けるなんて不可能に近いわ。
 目の前にでも居ない限りね。そんくらい考えなさいよバカ。
 …ああ、森口くんはいいのよ。悟にだけ言ってるんだから」
ぐっ…初めて名前で呼ばれたと思ったらバカと同格ですか。
「俺と森口で随分扱いが違うじゃないですか」
「え?だって森口くん、見るからにいい人そうだし。あんた只のバカじゃん」
森口がいい人なのはその通りと言わざるを得ないが、これでは俺が余りにも不憫だ。
森口も照れてんじゃねえよ。友達がバカにされてんだぞ文字通り。

ここでチャイムが鳴った。
「またか!」
「また?ってことはあの時の色々ってこの事だったんだね」
察しがいいのは解ったが今は急ぐぞ森口。
「頑張りたまえ学生諸君!」
あんたも学生でしょうが。くそう、なんだこの敗北感。

まだ先生は来ていない様だな。間に合ったか。
…まあ間に合った所で寝てしまうんだが。

「悟…あれ、今回は起きてたの?珍しい」
「いや、30秒前に起きたばかりだ」
「なんだ。…ところでさ、霧原さんってどんな人なの?」
「どんなって…見た目がか?」
「うん」
まあそうだろうな。…一応あの人が居ない事を確認して、
「まあ、普通に美人だ。あと、髪がすげえ長い。腰ぐらいまであるな」
普通にっていうのはバカ扱いへの僅かながらの抵抗だ。
敗北感が増した気がするが気のせいだ。
「ふーん。で、どうなの?」
何聞いて来るんだお前は。
「どうって言われてもな。あのさんざんな言われようじゃどうもこうも無えよ」
「そう?仲良さそうに見えたけど。いや見えてないけどさ」
「アホ。代われるもんなら代わってやりたい位だっつーの」
「いやいや、それはもったいないよ。実際、凄いロマンチックじゃない?
 自分にしか見えない女の子、なんてさ」
「あのな、むしろはっきり見えすぎてロマンも糞も無いんだよ。
 なんたって普通の人と幽霊の見分けがつかんのだからな」
「え、そうなの?」
「そうなの。じゃあ行くぞ」

で、校門にはあの人が。
「お、来たわね。じゃあ帰りましょうか」

いつも通りのゆっくりペースで歩く。そしてガンガン追い抜かれる。
自転車乗ってる奴、何か知らんが急いでる奴、一人の奴、果てはカップルにまで。
そんな気分までゆっくりになりそうな時間の中で、森口が口を開いた。
「霧原さんは、幽霊と普通の人の見分けつくんですか?」
…そう言えばどうなんだろうな。よく気がついた森口。
「え?うーん…解んない。今まで他の幽霊に遭った事が無いだけなのか、
 遭ったけど見分けられないだけなのか…」
要するにこないだまでの俺と同じってことか。
「じゃあ、二人に見えて僕に見えない人が居たら幽霊って見分け方しかなさそうですね」
なるほど、その手があったか。しかし…
「それも難しいだろうな。いちいち見えてる人間全部報告する訳にはいかんしな。
 それにそんなにほいほい幽霊が居てたまるか。戦場じゃあるまいし」
「まあそうなるわよね。いいんじゃない?別に気にしなくても」

と言う訳で、余り気にしない事に決定した。

偶然幽霊+αが見つかるのはそれから一ヶ月ほど後の話。



…慣れというのは凄いものだ。
毎日幽霊に会うという素晴らしくファンタジーな日常も、
俺と森口にとっては当たり前のことになってしまった。
この事を除けばただの高校生活にそうそう事件など起こる訳も無く、
特に何も無いまま一ヶ月が経過した。
そしていつもの帰り道。
森口の一言から俺たちの日常はもうちょっとだけファンタジー色が濃くなる事になる。

「ねえねえ、二人とも気付いてた?」
「何だ?」
「何?」
俺と霧原さんが同時に答える。
「ほら、いつも帰りに抜かされるカップル」
「ああ、さっき抜かれたな」
それがどうした?と言う前に森口が続ける。
「あの人たち、別れちゃったのかな?」
俺と霧原さんは顔を見合わせる。そして遠くの方に小さく見える彼らを見る。
「…別れた?」
そんな風には見えないが…
「え、だって最近ずっと一人で帰ってるみたいだし…」
また俺と霧原さんは顔を見合わせる。…霧原さんの顔つきが変わった!

「…霧原さんは走って行ってしまいました」
一応、森口に報告する。
「え?…あれ?…もしかして、二人には見えてた?」
ホントに察しがいいなお前は。て言うか落ち着きすぎだろ。俺もだが。
「見えてるのはどっちだ?」

遠くの方で、霧原さんが二人に襲い掛かっている。
「女の子の方」
「そうか」
しばらく遠くでの霧原さんの犯行を観察する。
霧原さんがこっちに何か…多分俺等を呼んでるんだな、あれは。
「呼ばれてるな。走るぞ」
「不謹慎だけど、楽しみだね」
「両方に同意だ」

「いやーまさかこんな近くに同じ境遇の人達が居るとはな!」
「いきなり飛び掛られたのはちょっとびっくりしましたけど…」
霧原さんの被害者ABは語る。
「ごめんごめん。興奮してたもんでつい…それにしても、
 幽霊になっても彼女と一緒に下校なんてやるじゃないの彼氏ぃ~」
「いやあそれほどでもないですよ!ハッハッハ!」
声でけえな。なんて元気な幽霊だよ。
「かれ…?ちょ、え?ちち、違います!兄さんは私の兄さんで…
 ちょっと、兄さん!」
ん?兄さん?
「落ち着け里美!意味解らんぞ!」
「…え?あんたら兄妹なの?」
あんたさっき名前とか聞かなかったのか?
「そうとも言いますな!」
「そうとしか言わないよ兄さん…」
大変そうだな妹さん。

「はい、一旦落ち着いて。…霧原さん。説明はどこまでしたんですか?」
「えーっと、どっちが幽霊か聞いて、あたしの自己紹介しただけ」
うわ、すげえ一方的だな。
「…すいませんね、うちの先輩様がお騒がせしたようで。
 俺は深道悟。二年です。幽霊については見えるし、聞こえるし、触れます。
 …ちなみに俺は生きてます」
「僕は森口昇。同じく二年です。幽霊については声が聞けるだけ。
 僕も生きてますよ」
「長谷川一志!俺も二年だ!奇遇だな!ちなみに俺は生きてません!」
元気よく言うことじゃないだろ。
「長谷川里美。一年です。幽霊については、えーっと、深道さん?と同じです。
 私も生きてます」
「あたしは「さっきしたんですよね」…むぅ~」
膨れるような事じゃないでしょうが。
「あの…」
妹さんが不安そうに尋ねる。
「はい里美ちゃん」
不安そうにさせた原因であろう人はそんなことおかまいなしだ。もうちゃん付けかよ。
一瞬ビクッとする妹さん。ほんとにゴメンなさいね。
「えぇっと…どうして兄さんが幽霊だと…?」
「ああ、それは僕が見えなかったからだよ。いつも二人だったのに一人だねって言ったら
 この人達には見えてたみたいでさ、そしたら霧原さんが走って行っちゃったって訳」
「そうだったんですかぁ…」

「はいはーい。あたしもしつもーん」
…なんか不安になる。はい、霧原さん。
「一志さあ、あたしが見てた限りじゃ毎日里美ちゃんと帰ってたけど、
 死んだ日にも学校来てた訳?根性あるわねー」
確かに疑問だが、死んだ当日の事をいきなり聞きますか?

「いやあ恥ずかしい話なんですがね!」
答えるのかよ。しかもトーンそのままかよ。
「あの日車に轢かれそうになりましてね!
 やばいと思って目ぇ閉じてたんだけど、何とも無かったんでそのまま学校行ったら
 誰も俺に気がつかねえでやんの!はっはっは!」
どう考えても笑いどころじゃないだろそこは。
「つまるところ、あの時ホントは轢かれてたんですな!全然気がつきませんでしたよ!」
…マジなのかこいつは?
「ホントなんですか?えーっと、里美さん」
「えっ?いえ、行きは別々なんで解りませんけど…多分、本当です。
 兄さんは嘘がつけないタイプの人ですから」
…バカ正直なのだな。バカ:正直が9:1ぐらいの。
「…つまり車に轢かれた時に身体だけ吹っ飛ばされて、
 魂は目を閉じたまま棒立ちだったと?」
「多分そんな感じだな!なんか身代わりの術みたいだな!」
身代われてねえよ。どっちもお前だっつーの。
「そんで一応里美の所に行ったらこいつだけ俺が見えてたと!で、今に至る!」
ちゃんちゃん。

こうしてまた、俺等に楽しい仲間が増えました。

わーい。



さっさと次の日の放課後。
「しかし、やかましい幽霊はともかく生きてる女の子の加入は大きいな」
帰り支度をしながら森口に言う。まだ少し眠い。
「惚れっぽいねぇ悟は」
「…そういう意味じゃねえよ。里美さんが居れば
 霧原さんの声を誰かが聞いてても里美さんの声だと思うだろ」
まあ用心に越した事は無いのだが。
「ああそっか。…僕は逆の事考えてたよ」
「逆?」
「一志ってさぁ、普段静かにできるのかな。僕等二人じゃ誤魔化し切れないよあれは」
「…確かに」
そもそもあいつの場合、できるできない以前に静かにする気があるのかどうかすら怪しい。
いやでも霧原さんと同じく制服着て来てるし…どうなんだろうな?
帰りに聞いてみるか。

「あの二人は…まだみたいですね」
いつもの様に俺等を待っていた霧原さんに聞いてみる。
「そりゃそうでしょ。いっつも後ろから抜かれてたんだし」
まあそうだよな。そうか俺等も今日から待つ側か…
……
……まだか?なかなか暇なんだな誰かを待つってのは。
「霧原さん…よく毎日こんなのやってられますね」
「あんた…まだ二分と経ってないわよ?いくらなんでも短気すぎじゃない?」
「そうなんですかね…」
沈黙。…いつもこんな静かだっけ?何か足りないような…
「あれ?森口くんは?」
「え?居ま…せんね。多分あの二人呼びに行ったんじゃないですか?」
「いつの間に…全然気がつかなかったわ」
「ま、すぐ来るでしょ」

……
……
……おかしい。いくらなんでも遅すぎる。
抜かされるどころか先に家着いちまうぞこんだけ遅いと。
「おっそいわね…」
どうやら今度は俺が短気なだけって訳ではないようだ。何やってんだあいつら?
「俺も行ってみましょうか」
いいかげん待ってるのにも飽きたしな。
「すれ違いになったら面倒だからここに居なさい」
「はあ…」
……暇だな。そういえば、こうなる前は霧原さん何してたんだろうな。
「霧原さん」
「何?」
「霧原さんは俺を見つけるまで、どんなことして過ごしてたんですか?」
「何よ急に?…そうね、学校には来てなかったわ」
そう言や初めて遭った時私服だったな。
「映画のタダ見とか色々したけど…一人じゃ何やってもつまんなかったわね。
 そうなって初めて解ったわ。人と一緒に居るだけでどれだけ楽しいかって。
 だから正直、凄い嬉しかったわよ。あんたに遭った時は」
「お褒めに預かり、光栄です」
…なんか恥ずかしい展開になりつつあるような…
「もっといい男だったらもっと良かったんだけどね。蓋を開けたら只のバカだし」
「…ご期待に添えず、申し訳ありませんね」
やっぱこうなるんだよな。おーい三人。早くしてくれー。
「でも」
…まだ何か?
「あんたじゃなかったら森口くんに遭えなかっただろうし、
 森口くんが居なかったら一志と里美ちゃんにも遭えなかったかも…
 そこだけ、感謝してあげるわ」
「つまり霧原さんにとって俺の価値はその連れにあると。
 俺はおもちゃ付きラムネのラムネだと」

「上手い事言うわね。正にそれよ」
少しぐらい否定してください。自分で言っちゃってホントにバカじゃないですか俺。
などとたそがれラムネ野郎が思っていると、やっとこさ三人がやってきた。

「何やってたんだお前ら?暇で暇でラムネになっちまったぞ」
「…何それ?」
意味は解らんだろうが事実なのだ森口。
「す、すいません…図書室に忘れ物しちゃって、取りに行ったら鍵かかってて…」
と、里美さん。
「…取って来れたんですか?」
「はい、兄さんに中に入ってもらって…でも、見つけるのに
 時間が掛かっちゃって…」
便利だな幽霊ってのは。
「いやー実は「兄さあぁぁぁん!」ムゴモゴゴ!」
兄の口を塞ぐ妹。何やってんですか?
「あは、あはははは…何でもないですよ…」
それで何でもない訳ないでしょう。よっぽど恥ずかしい忘れ物だったとか?
…多少、気になる。
「さて、行きましょうか!」
あんた気にならないのか?霧原さん。

「いやあ実にゆっくりだな!結構結構!」
まあ最初はそう思うんだろうが、結構って何だよ。
「で、忘れ物ってなんだったんですか?里美さん」
「えっあっあの、筆箱を…」
あれ、別に普通だな。じゃああの奇行は何だったんだ?
「いやー実は「兄さあぁぁぁん!」ムゴモゴゴ!」
そうその…って、何でまたやってんですか?
「なな、何でもないですよ、本当に。ね、兄さん」
「ね、兄さん」の部分に怒気を感じた気がした。

「いやーすまんすまん!どうにも俺は嘘を「兄さぁぁぁん!」ムググ!」
…嘘をつけないタイプね。確かに。
「はぁ、はぁ…。そ、それはいいとして」
見てて可哀想なのでいいことにしておきましょう。
「明日映画見に行くつもりなんですけど、皆さんも一緒に行きませんか?」
映画か。久しく見てないな。…明日は土曜だな。
「俺は大丈夫だぞ」
「僕も」
「あたしも行こうかしら」
「じゃあ5人全員で決りだな!」
その後、集合場所と時間を決めて長谷川兄妹と別れた。
そして森口との別れ際、森口が俺に囁く。
「二人っきりの時間はどうだった?」
俺の返事を待たず、「それじゃあ」と歩き去る。お前の仕業だったのか!
「何て言ってたの?森口くん」
「…明日の映画、何見るんだろうなって」
「あ、そう言や聞いてない」
「まあ、明日のお楽しみって事で…それじゃあ、また明日」
「うん」

…あ、一志に質問すんの忘れた。まあいいや。



「…そろそろ行っとくか…」
向かう先は昨日決めた、隣の駅前のデパートの映画ホールのチケット売り場。
「の」が4つも付くやたらと説明的な集合場所だ。
…まあ、集合場所っつーより目的地だな。解り易いからいいけど。
駅前故に電車に乗ればすぐなのだが、一駅程度の距離なので自転車で行く事にする。

チケット売り場に到着すると、長谷川兄妹と森口が既に来ていた。
「お!来たな悟!」
「に、兄さん声大きい…」
「まあ僕が居るから大丈夫でしょ。多分」
多分な。あ、忘れるとこだった。
「今日見る映画ってどれですか?」
壁に貼ってある様々な映画の広告を指して里美さんに尋ねる。
「え?あれ、言ってなかったですか?えーっと…あ、あれですあれ」
…純愛感動モノか。病魔がどうのこうの書いてあるが、治るんだろうな最後は。
などと身も蓋もないことをつい考えてしまう。
いやいや、つまらなそうとかそういう意味ではないのだが、
誰だってこれぐらいの予想は
「あ、私チケット買ってきます」
…俺の誰に対してか不明な言い訳はこの一言で終了した。
俺と森口からチケット代を受け取り、チケットを買いに行く里美さん。
「後は瑠奈さんだな!」
「まあ別に急ぐ事はないけどね」
しばし、待つ。

里美さんが戻ってきた。
「今日は人が空いてるみたいです。次の上映から見れますよ。はい、チケット」
「どうも」
「有難う」
「俺と瑠奈さんはタダ見だ!いいだろう!」
「羨ましいねぇ」
特にお前はな。幽霊である事のデメリットなんか気付いてすらなさそうだし。
現に「タダ見」とか言っちゃってるしな。チケット売り場の前で。
「兄さんタダ見はちょっと…」
「ん!?金出したほうがいいか!?」
「いやそういう意味じゃぁ…」
…ストレスには気をつけて下さいね里美さん。

「映画始まるまであと10分ぐらいだね」
「…ホントだ。霧原さん間に合うのか?」
「あ、来ましたよ霧原さん」
霧原さん到着。
「皆揃ってるわね。で、今日何見んの?」
「あれだそうですよ」
森口が先程の広告を指差す。
「面白そうね。あとどれくらい待つの?」
「もう10分前です」
「え、もうすぐじゃない。じゃああたしと一志は先に入っとくから、
 あんたらそこに並んで」
壁際に並ばされる。成る程、俺等に隠れて壁を抜ける訳だな。
…里美さんは隠れるには少々小柄な気がするが。

「何番ホール?」
「あ、3番です」
「席は?」
「J‐21、22、23です」
「じゃあそこら辺に座ってるわ」
見つからないように気をつけて。
「通り抜けフープ~!」
黙れ。

「俺ちょっとトイレ行っとくわ」
「あ、僕も。里美さん先に入っといて」
「はい」
…期せずして森口と二人きりになった。ちょうどいい。聞いておきたいことがある。
「森口。昨日の件だがな」
「ああ、どうだったの?何かあった?」
「おかげでバカからラムネにランクアップした」
「…意味解らないんだけど。それってランクアップなの?」
「知らん。それよりもだな」
「何?」
「お前、あの二人に有る事無い事吹き込んでないだろうな」
「無い事なんか吹き込まないよ。有る事だけ」
「有る事って何だよ」
「え~。本人の前ではちょっと…」
…つまりはそういう事なんだな。
「お前最近性格悪いぞ?」
「そう?親切のつもりなんだけどな」
「大きなお世話だよまったく…」

その後トイレで済ますべき用を済ませ、飲み物を買う。
…文句言われる前に霧原さんの分も買っとくか。
席についてから買いに戻らされるのは面倒だしな。
「あれ?それもしかして霧原さんの分?優しいねぇ」
「お前の分なんか絶対買ってやらねえからな」
「うんうん。邪魔しちゃ悪いしね」
…両手がジュースで塞がってなけりゃ殴ってやれるんだが。残念だ。

さて、3番ホールに到着…うわ、ホントにガラガラだな。人気ないのかこの映画?
とりあえず、指定の席につく。これだけ空いてるとどこでも良さそうだが。
「…飲み物、要ります?要らないなら俺が飲みますけど」
くそ、にやつく森口が頭に浮かぶ。…実際ににやついてるのが更に腹立つ。
「何これ?」
「コーラです」
「ふーん…ありがと」
さっそく少し口をつける。…そういえば。
「森口。お前にはあのコーラどう見えてるんだ?宙に浮いたりしてんのか?」
普段霧原さんも一志も何も持ってないからな。必要無いからだろうが。
「いや、いきなり消えたね。…あ、また出てきた。
 …多分霧原さんが持ってる間は幽霊の一部ってことになるんじゃないかな」
「そりゃそうでしょうよ」
と霧原さん。
「じゃなかったら服とか靴とか見えたまんまでえらいことになるじゃない」
そりゃそうだ。しかも学校行く時着替えてるしな。

しばらく経って、上映開始のブザーが鳴り始めた。



…映画の内容は見事に予想通りだった。
まず、男と女が出会う。
で、さっさと恋に落ち、暫らくは仲良さげに話が進む。
が、ある時女が病気になる。なんでこういう事になるのって高確率で女なんだろうね?
…まあそれはいいとして、その事で二人は悩んだり何だりする訳だ。口喧嘩とかね。
でも最終的には二人で頑張ろうみたいな事になって、病気が治ってめでたしめでたし。

こうして纏めるとありがちでつまらなそうだが、実際は凄く良かった。
気ぃ抜いてたら泣いてたかも知れん。が、そんなことになったら
隣の霧原さんに何言われるか解ったもんじゃないからな。それはなんとか堪えた。
…堪えるのに集中しすぎてコーラがまだ残ってるな。
氷が溶けて薄まってる上に炭酸がほぼ抜けたそれを飲み干す。不味い。

「いやー良かった!里美ちゃん、ナイスチョイスよ!映画見る目あるんじゃない!?」
一志ばりの声でそう言うのは霧原さん。よっぽどお気に召したようだ。
霧原さんが里美さんに話し掛けるとフォローする人間が居なくなるのだが、
そんな事忘れたとでも言うような興奮振り。まあ、ガラガラで人居ないからいいけど。
…泣いた、という感じではないな。まあこの人が泣いてるとこなんか想像できんが。
「僕もそう思うよ。できたらまたいい映画紹介してね」
目が潤んでるぞ。いいねえ隣の人に気を廻さなくてもいいってのは。
「何だ森口。デートのお誘いか?」
「ええっ!?森口くん、そうなの!?」
「なな、何言ってんの二人とも。僕はまた五人で…」
「安心しろ森口。お前がなんと言おうと五人揃うからなこの暇人集団は」
「だ、だからそういう意味じゃ…」
ふん、お返しだ。俺の気持ちが解ったか森口。
で、色々と大人気の里美さんだが。

「うえっ、えっ…えぅ…み、見に来て…よかっ…」
泣きすぎです。てか今の会話聞こえてないなこりゃ。よかったな森口。
さて、最後に意外なほど静かだった一志だが。
「……………!」
どういう発音だそりゃ。
…ギャグ漫画の川のような涙を俺は初めて見た。
涙はいいけど鼻水は何とかしろ。顔が凄い事になってるぞ。
…こうして並んで泣いてるとこ見てるとやっぱ兄妹なんだなこいつら。
普段全く似てないけど。いや、普段っつってもまだ遭ってから二日しか経ってないけど。
「にぃっ、に、兄さん…ティ、ティッシュ…」
兄にポケットティッシュを差し出す妹。いや、まず自分に使いなさいよ。
あなたも相当えらいことになってますよ?
「………!」
謎の発音と共にティッシュを数枚取り出し…妹に渡す。
お前それ今妹から受け取ったんだろ。
「あ、あり、がとう。兄さん」
普通に受け取る妹。…仲いいなお前ら。

「落ち着いた?二人とも」
霧原さんが尋ねる。
「はい、もう大丈夫です」
「俺もだ!恥ずかしいとこ見られたな!」
面白かったから気にするな。
「ところで里見さん。さっきの俺等の会話、聞いてました?」
「え?…いえ、すいません。何の話でしたか?」
「何でもないよ。気にしなくていいから」
森口が止めに入る。

「はあ…」
「何だ!?何だ!?気になるな!」
「な、何でもないったら」
「ぬぬぬ…!隠し事とは卑怯な!お前はあの時も「兄さぁぁぁん!」モガー!」
いや、それはもういいんですけどね。
「さて、そろそろ出ましょうか」
「そうですね」

「ありゃ。もう暗くなってるわね」
「ホントだ。…どうします?解散にしますか?」
「そうするか!夜道は危ないしな!」

さて、解散の流れになった訳だが。
「…霧原さん、ここまで何で来たんですか?」
「電車タダ乗り~」
「お転婆ですねぇ」
「…文句あんの?あんたは何で来たのよ」
「自転車です。一駅程度、電車賃が勿体無いですからね」
「じゃあ、あんたの後ろに乗せなさい」
なぬ!?しまった、自爆だこりゃ。
「も、森口も自転車だと思いますけど…」
「一番うちに近いのあんたでしょうが」
「解りましたよ…」
にやにやするな森口。

電車で帰る長谷川兄妹を見送り、俺達は自転車をこぎ始める。
終始嬉しそうに俺の方を眺めていた森口と別れ、またも霧原さんと二人きりになる。
「ねえ」
「何ですか?」
「森口くんのあれ、本当なの?」
「いーえ。口からでまかせです」
「なんだ。つまんないの」
「里美さんが聞いてたらもう少し面白かったかもしれませんね」
「あそこまで激しく感動できるってもう特技よね」
「ですね」
「しかも兄妹揃って。あの二人ほんと仲いいわよね」
「俺、あんな兄が居たら一緒に行動なんかできませんよ。絶対に」
「あたしも。本当里美ちゃんっていいコよね」
「ホントよく気が保ちますよ。毎回振り回されっぱなしだし」
「…惚れた?」
「何言い出すんですか。もしそうなら森口にあんなこと言いませんよ」
「あはは。口からでまかせ」
「…嫌がらせですか?」
森口みたいなこと言わんで下さい。
「ちょっと聞いてみたかっただけよ。
 まああんたじゃもしそうでも相手にされないでしょうけど」
「…やっぱり嫌がらせでしょ」
「あんたからかうの面白いからね。…ああ、この辺でいいわ」
「じゃあ、また明後日」
「…うん。また明後日」
最終更新:2011年03月04日 11:00