ツクモ神(
付喪神)―それは年月を経た物に宿る神様である。
ツクモ「さ、いくわよ」
俺「で、でも」
ツクモ「何?まだ愚図愚図言ってんの?本当にヘタレなんだから!」
俺「でも…ツクモ神様が」
ツクモ「私は、―いいのよ」
すべてを許す慈母のような微笑み
ツクモ「恵まれない子供をこの世から一人でも救う、それが私の使命なんだから」
俺「ツクモ神様…」
ツクモ「そ、それに!
ノロマなあんたの面倒を見なくていいと思うとせいせいするわ!」
いつものように強気にでる。
もう20年の付き合いだ。虚勢を張っているのはすぐ分かる。
俺「ごめんね…ツクモ神様」
ツクモ「いいのよ、別にあんたの為じゃないし!さ、私を使いなさい!」
……
……
俺「ツクモ神様?」
ツクモ「20年も…待ったんだから…もう少し…長く使用して…欲しかったな…」
俺「ごめんなさい」
ツクモ「まったく…ヘタレ…なんだから…」
俺「ツクモ神様…」
いつも騒々しい程だったツクモ神様の思念波は悲しいほど弱まり、かすれていた。
ツクモ「お別…れ…ね…貴男に…出会え…て…私……幸…せ…だっ…た」
俺「ツ、ツクモ神様ー!」
俺は慟哭しながらツクモ神を結ぶとやさしくテッシュに包んでごみ箱に捨てた。
さようなら、ツクモ神様。
夢見る少年の時分に「必ずコイツで童貞を捨ててやるぜ!」と息巻いて購入して以来、ずっと財布の中から俺を見守ってくれたゴムは…
今、場末の風俗の一室でその使命を果たして永く安らかな眠りについた。
ソープ嬢(…オイオイ、スマタでイッちゃったよ…このオッサン))
最終更新:2011年03月04日 11:09