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-命の恩人-
銀行のロビーで僕は泣いている。
…つい一時間程前に目の前で彼女を無くしてしまったのだ。
彼女を殺した奴…銀行強盗の犯人は僕を含む人質の三人に血塗れの包丁を向けながら何か喚いている。
…と、犯人は人質の中で一番小さい、八歳くらいの女の子を掴むと、包丁を握り直し、女の子の首すじにつきつけた。
今、こいつを取り押さえないとまた犠牲者が増える。…それに、今なら犯人を殺してしまっても、正当防衛になる。
僕は決心した。


すると、
「犯人さん、甘いわね!こういう時は力がある大人から減らしていくべきなのよ!」
…彼女だった。彼女の遺体は目の前にあるのに、犯人の前にいるのも彼女だった。
「な、何だ!アンタはさっき殺したのに!ってか、そこに死体があるのに!」
「あはは、そんなのよくあることよ!」
「うるさい!消えろ!人質を全員殺すぞ!」
「殺したらあんたを憑き殺す。」
「く、くそっ!…いたたたた!」
俺は犯人を羽交い締めにしていた。
そう、彼女は俺から注意をそらすために出てきてくれたのだ。…死んでいるのに。
「今だ!取り押さえろ!」
取り囲んでいた警官が一斉に傾れ込み、あっという間に犯人は捕まった。
僕は解放された…しかし、その時には彼女の姿はもうなかった。
その後で聞いた話によると、犯人は薬物の使用を疑われているらしい。…錯乱状態で幻覚を見ていたとかいうのが理由らしい。つまり、俺と犯人以外には彼女は見えていなかったようだ。
俺は彼女の通夜に出た。どうしようもなく泣いた。彼女を護れなかったこと、死なせてしまったことが悲しくて。あと、あの時僕に犯人を捕まえるチャンスをくれたことに感謝して。



帰り道…

「いやー、よく泣いてたね。」
「い、いつの間に!?って、どこにいたんだ!?」
「ん?ずっと後ろにいたよ?」
…そりゃ見えないわけだ。
「…あ、あのさ、護れなくてごめん…。あと、あの時は本当にありがとう。」
「ん?ああ…か、勘違いしないで!人質の女の子が死んだら可哀相だったからあんたに助けさせただけよっ!…あ、あと…あんた、私が死んじゃったとき悔しそうに見てたじゃない…復讐するチャンスをあげただけなんだからね!」
「うん…ありがとう。」
「ち、ちょっと!べ、別に私はあなたの手を血で染めたくなかっただけなんだから…って…」
「ありがとう。命の恩人だ、君は。」
「ば、馬鹿あっ///恥ずかしいよ、堂々と言われると…。」
「ありがとう、本当にありがとう。」
「…嬉しかったよ、私のためにあんなにも泣いてくれて。…大好き。」
「う…は、恥ずかしい…」
今度は僕が赤面した。
最終更新:2011年03月04日 18:39