「そこに居るんだろ?」
俺はいつもの場所に声を掛ける。
「…なぁ」
視線を定めて同じ調子で声を掛けると
「…‥‥なに?」
という返事で空気が揺らいだ。
「…帽子」
「な、何?帽子って?」
空気が濃くなり、顔を赤くしたアイツが現れる。
「右手…前に出してみて」
「どうして?!」
「いいから」
「なんで?!」
「…いいから」
「どうしてあたしがアンタの言うことなんか聞かなきゃいけないわけ?!」
「…」
「…」
「…」
「…‥なによ?」
「…見せて」
差し出された右手にはしっかりと俺の白いキャップが握られていた。
「別に欲しかったわけじゃないからね!たまたま持って来ちゃっただけだから!」
「そう」
「こんなの返すわよ!!あぁー変なのに触っちゃった!!」
「…おう」
「はい!どーぞ!」

バシッと帽子を叩き返してきた。

「もう少し丁寧に扱ってよ」
「え?あ…ごめ…‥」
「くすっ…」
「ふん!また何か取ってやるんだから!」

顔を背けてアイツは消えた。
俺はそのキャップをかぶって大学へ向かう。今日もいい天気だ。






あれ?と、俺は帽子のサイズが変わってることに気付いた。ボタンをはめかえて俺のサイズに戻そうとしたが…
「…うん」
ちょっと頭が窮屈だ…まぁいっか。

【次回・プリン編】
最終更新:2007年03月19日 04:28